感動器官

笑い、涙、鳥肌、私たちの感動を現出させる器官。

2015年03月

【映画】インスタント沼



インスタント沼(2009年、日本)

【監督】
三木聡
【キャスト】
麻生久美子
風間杜夫
加瀬亮
相田翔子
ふせえり
松重豊
松坂慶子

感想(2015年2月28日、TV録画にて鑑賞)

麻生久美子主演のコメディ。
ジリ貧の雑誌編集者が仕事を辞め、怪しげな骨董屋の主人と知り合い、奇妙な毎日に巻き込まれていく。

見るからにテキトーな骨董屋の男を風間杜夫が演じていて、初登場シーンで顔を出した瞬間なぜか笑いがこみ上げた。
全体的にモノローグとセリフで小ネタを積み上げてくタイプのコメディかな。

話も、最初こそ雑誌編集者だけど、途中からは父親探し、最後は田舎で土砂をかいているという、コロコロ変わる先の読めない展開になっている。
(そもそもこの映画に先を読む意味があるのか分からないけど)

まあ麻生久美子もコロコロ変わる表情でとてもカワイイ。
でも、顔中に泥を塗りたくったりとけっこう体当たりだったりする。
それでもなお可愛かったりするのだが……。

テレビの延長的な手法の映画だけど、割り切って見ればそれなりに面白かった。

【映画】HIT&RUN



HIT&RUN(2012年、アメリカ)

【監督】
ダックス・シェパード
デヴィッド・パーマー
【キャスト】
ダックス・シェパード
クリステン・ベル
ブラッドリー・クーパー
トム・アーノルド
クリスティン・チェノウェス
マイケル・ローゼンバウム

感想(2015年2月26日、TV録画にて鑑賞)

ロードムービーとカーチェイスを合わせたような映画。

主演は共同監督でもあるダックス・シェパード。
証人保護プログラムによって田舎で身分を偽って暮らしている青年が、恋人を都会へ送り届けるために愛車に乗って田舎町を出てしまう話。
まあ、本当それだけの話なんだけど……。

保護中の証人が突然いなくなったので慌てふためいて追いかけてくる保護観察官が、めちゃくちゃドジっ子なオッサンで面白かったり……。
恋人にはストーカーまがいの男がいて、主人公を逆恨みして追いかけてきたり……。

そして、ついに昔の悪友で主人公に恨みを持つチンピラが、主人公の居場所を突き止めて追いかけてくる。
彼女を送り届ける旅のつもりが、さまざまな立場のヤツらに追われるハメに……。
クラシックな車やクールなスポーツカーが登場し、それなりに熱いチェイスやクラッシュを見せてくれる。

物語も、町を出ることを許されない男と、夢のために都会へ引っ越さなければならない女の、悩ましい現実が下敷きにある。
だから基本的に痴話げんかばかりでも、それなりにリアルな人生の一幕を描いているのかなとも思った。

いま話題の「アメリカン・スナイパー」主演のブラッドリー・クーパーが、この映画では主人公を追いかけ回す悪役で登場してます。
最初、彼だと気づかなかった……。

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【映画】正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官



正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
(2009年、アメリカ)

【監督】
ウェイン・クラマー
【キャスト】
ハリソン・フォード
レイ・リオッタ
アシュレイ・ジャッド
ジム・スタージェス
クリフ・カーティス
サマー・ビシル
アリシー・ブラガ
アリス・イヴ
メロディ・カザエ
ジャスティン・チョン
メリク・タドロス

感想(2015年2月26日、TV録画にて鑑賞)

ハリソン・フォード主演。
アメリカの移民問題を切り取った社会派群像劇。

同じようなジャンルで「クラッシュ」という映画を思い出したけど、あちらは人種の違いによる問題を扱っていて、この「正義のゆくえ~」はその中でも移民問題にフォーカスした感じ。
当然、人種の違いによる差別なんかが根底にあるケースもあって、雰囲気も含めてけっこう似てる両者かもしれない。

アメリカにやってきた人たちが永住権を勝ち取るまでには長い時間と労力が必要。
隣国メキシコから国境を越えてやってくる者、イスラム諸国から移住してきた者、オーストラリアから成功を求めてやってきた者。
それぞれの厳しい現実と、時に不寛容なアメリカ社会が描かれる。
白人であっても受け入れてもらえるとは限らない。有色人種ならなおさらだ。

ハリソン・フォードが演じたのは移民局のベテラン捜査官。
不法滞在者を取り締まる側の人間だが、ある時、摘発の現場でメキシコから来た若い女をわざと逃してしまう。

そのことをきっかけに女の影を探し求め、不法入国者に同情や肩入れをしてしまう主人公の姿は、さすがハリソン・フォードという感じだし、ちょっと良い人すぎる感じもする。
そんな優しい心の持ち主で移民局のベテラン捜査官が務まるのだろうか?という疑問が。
これまでバリバリやってきた主人公の心情に変化をもたらすその理由がほしかった。

主人公の相棒役のクリフ・カーティスがとても良かった。
第二の主人公と言ってもいいかも。
登場人物たちが少しづつ関係性を持っているという群像劇の描かれ方も大袈裟すぎず、好感が持てた。

【映画】オオカミは嘘をつく


オオカミは嘘をつく(2013年、イスラエル)

【監督】
アハロン・ケシャレス
ナヴォット・パプシャド
【出演】
リオール・アシュケナズィ
ツァヒ・グラッド
ロテム・ケイナン
ドヴ・グリックマン
メナシェ・ノイ
ドゥヴィール・ベネデック
カイス・ナシェフ
ナティ・クルーゲル

感想 (2015年2月25日、フォーラム仙台にて鑑賞)

クエンティン・タランティーノが絶賛したことで話題となったイスラエルのバイオレンス・スリラー。
少女が何者かに誘拐され惨たらしい姿で発見された殺人事件を追う暴力刑事と、犯人への復讐に燃える被害者の父が、容疑をかけられた善良そうな中年教師を拷問するという物語。(←物語っていうのもなんか違う気がするけどw)

R18指定ということでビクビクしながら観たけどけっこう大丈夫だった。
痛そうな描写も一瞬だけという感じ。
でもさすがにバーナーは衝撃的だったかも…。

むしろ、ユーモラスでさえあった…。「今日からはじめる たのしい拷問」って感じ。
3人の男による極限の心理戦…みたいなのを期待していったら、意外と拷問する方もされる方も素人で、ちょっとおマヌな男たちのおバカな一夜にも思えた。

タランティーノはそんな「バイオレンス映画だけど笑える」部分を評価したのかもしれない。
真面目な場面でも滑稽になってしまう、それもまた人間性だと思うし。
今の時代、携帯電話は鳴る時間を選んではくれない。

でも、少なくとも日本での宣伝の仕方は少し的外れだったかな。
「衝撃の結末」という言葉の力に頼りすぎだと思う。
逆に衝撃でもなんでもない結末に見えてしまった。
(「トラップ・ムービー」なんて言われたら誰だってトラップに気をつけるw)

冒頭のスローモーションの素晴らしさと、終盤でちょっと面白い展開があったこと意外は割と真っ当な一本道で、たぶん誰でも最初に考える2パターンの結末のどちらかは当たるはず(笑)
正直、オチを見ても「これだけ…?」という感じ。
むしろこれなら謎は謎のまま全部投げてしまった方が観客が推理する余地があったように思う。

実は物語そのものよりも、この映画をイスラエル出身の監督たちが撮ったということの方が興味深いことかもしれない。
世界情勢に疎い私でもイスラエル周辺が長らく不安定なことは分かる。
テロや誘拐が頻発し、差別・偏見が身近にある国で育った監督たちが、そういった人間の歪んだ心をこの映画に登場する地下室に集約したということだろうか。

そう考えると、単純にストーリーの先を推測して楽しむ映画ではないのかもしれない。
(でもそういう宣伝してるんだよなあ…)

【映画】トラッシュ! この街が輝く日まで



トラッシュ! この街が輝く日まで
(2014年、イギリス)

【監督】
スティーヴン・ダルドリー
【出演】
マーティン・シーン
ルーニー・マーラ
リックソン・テベス
エデュアルド・ルイス
ガブリエル・ウェインスタイン
ワグネル・モウラ
セルトン・メロ

感想 (2015年2月25日、フォーラム仙台にて鑑賞)

少し期待し過ぎていた感じだったけど、まあ面白かった。
ブラジル・リオデジャネイロの貧困層の少年たちが、ゴミ山で拾った財布をきっかけに、政治家を巻き込む巨大な陰謀の秘密を手にしてしまう。
底辺の少年たちが腐敗した社会に喧嘩を売る物語。

腐敗警察があまりにも非道に描かれていたけど、これが真実とあまり変わらないなら本当に酷い話で。
権力の横暴を辛辣に批判した映画でもある。
でも、ちょっとやり過ぎて逆に信憑性が怪しい気もする。過ぎたるは及ばざるがごとし。

独特だったのが、シーンの合間にたまに挿入されるインタビュー描写。
少年たちが事件について後日語る様子が挟まれることで、3人とも最後は無事だということが途中で分かってしまう。
最初はこのカットをわざわざ入れる必然性がわからなかった。

ただ、最後の方では効果が現れた気がする。
後日インタビューを途中に挟むことで、説明を事前にすることができ、説明臭くなりがちなラストをスマートに構成することができたんじゃないだろうか?
結末の意外性よりも、鑑賞後の満足感を優先したのかもしれない。

ただクライマックスはけっこうあっさりしていたかな。
もう一難あっても良さそうなものだった。



あと、この映画に限ったことではないが、みんな動画サイトの影響力を過信し過ぎじゃないだろうか?
真実は動画にしてYouTubeで公開する。そうすれば世界中の人々が真実を知り、真実を隠す悪に対抗できる。
…こんな描写がここ数年けっこうあるような気がするのだ。

個人的には、「そんなにうまくいくのかな?」という疑念がある。
たしかに現実でも海外でFacebookによる政変などがあったが、そういう事例は「成功したから報道される」のであって、成功例ばかりをいくら積み重ねても「ネットが真実の最後の砦」とはならないと思うんだが…。

逆に、ネットで発信しても、誰にも見向きもされず埋れていく真実もあるんじゃないだろうか?
というか、そういう誰の目にも触れない真実の方が圧倒的に多いような気がする…。
真実を訴えるためにYouTubeに投稿した…、でも誰も見てくれず何も好転しなかった…、そういう展開があってもいいと思った…という脱線話。

【アニメ】艦隊これくしょん -艦これ- 第9話

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艦隊これくしょん -艦これ-
第9話「改二っぽい?!」

感想

夕立が改二へ…。

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・ある日光り出す夕立(笑)
・ちょっと熱っぽい…っぽい…。

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・おおーっ!(カワイイ…///)

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・工廠には可哀想な人たちが…。
・大井・北上コンビ、今回のノルマ達成。

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・いつのまにか改造されていた夕立に気づかない僚艦。
・つーか別人だと思うなら、着替え覗いちゃダメだよね…。
・背も伸びて少し大人びた夕立改二ちゃん。前ほどぽいぽい言わなくなった…。

改二になる条件は単にレベル(=経験値)ということ、さらに「旗艦なのに」まだ改二になれないと吹雪が悩むのも、旗艦に経験値ボーナスのあるゲームのシステムをそのまま踏襲しているから。
夕立と違って経験値ボーナス貰ってるのに、夕立に先を越された…。

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・でも赤城さんに頭撫でてもらったからもう何も怖くない(笑)
・いつにも増して浮かれすぎな吹雪。

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主力艦隊・第一機動部隊への栄転を告げられた夕立と、部隊を解散され鎮守府に帰還を命じられた吹雪。
明暗がハッキリ分かれた。
いつか赤城さんと同じ艦隊になりたいと思っていた吹雪は、夕立に先を越されたことになる。
さらに、提督からは用無し扱いされているとも取れる命令が。

相当落ち込む吹雪。
こんなにシリアスな展開になるとは…。

・吹雪が困ってると登場する金剛(笑)
「提督には何か考えがあるのデース」
頼りになる先輩艦娘としての包容力と、提督への愛と信頼が感じられる台詞に、金剛なんかいいな…///と思ってしまう私なのだった…。

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しかし、翌朝吹雪が見たのは、夕立が一人朝練をする姿だった。
川内によれば、吹雪の旗艦就任に触発された夕立は、毎朝特訓をするようになったという。
後ろ向きな考えに囚われていた吹雪に笑顔が戻ってくる。

誰かが自分より先に出世したとか、そんなことで悩んでいてもしょうがないのだ。
みんなそれぞれの理由のために頑張っている。
吹雪や夕立以外の艦娘たちだってきっとそうなのだ。

でも「おーい!」に「ぽーい!」で応えてるのは笑った。
「ぽい」の汎用性高い(笑)

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鎮守府への帰り道で敵戦闘機に遭遇したくだりで、吹雪の兵装では上空の戦闘機に届かないという描写があったけど、これは吹雪改造への布石らしい。
改二になれば対空装備が充実するということかな。

深海棲艦の左目の損壊をみると、以前第五遊撃部隊が攻撃した空母ヲ級と同一かな。
(だから何かあるとも思えないけど…)

・作戦海域に戦力を集中させた隙を突かれて鎮守府が攻撃され壊滅。
・提督は行方不明…(笑)
・提督ノート発見される!
・「改になれ!」ドーン!



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今回はいろいろ語りたいことがあるんだけど、まずは夕立の改二改造の件。
改造シーンの描写なかったですね…。
長門らに連れて行かれてなんだか知らないけど背が伸びて胸が大きくなってた…ってなんだかなあ(´・ω・`)

「改造シーン」と呼べるものがなかったのが残念。
例えば魔法少女の変身シーンみたいなのでもいいから何かアクションほしかった。
それとも吹雪の改造シーンまで引っ張ったということかな。(今後あるなら…)

次に、提督の存在について。
もともと「存在してもしなくてもストーリー成り立つ人」だったので、行方不明になっても全然困らない。
タイミングよく作戦要項も見つかったし(笑)

逆に、何故「死亡」ではなく「行方不明」にしたのか気になる。
行方不明ということは再び職務に復帰する可能性高そうだけど、どんな風に登場させるつもりなのか(笑)
やっぱり長門あたりから提督が生きていた「報告」だけされて終了だと思うんだけど…。

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それから、「改になれ!」が「貝になれ!」だと思って悩んだ件(笑)
苦し紛れに「貝になる」=「無心になって戦う」的な意味だと解釈したりして(笑)
「努力に憾み勿かりしか」みたいな海軍の標語的なものだと思ってたら、原作ゲームのネタだったという…。

で、「改になれ!」という長門の台詞は、今回の流れからいったら不自然で(笑)
他人を妬んだり羨んだりせず、与えられた場所で精一杯努力すればいいんだ、というのが今回のお話ではなかったか…。
それを最後に、改じゃなきゃダメだ、みたいな台詞で締めるって長門ェ…(笑)

【アニメ】エウレカセブンAO



エウレカセブンAO

【監督】
京田知己
【アニメーション制作】
ボンズ
【声の出演】
本城雄太郎
宮本佳那子
大橋彩香
小見川千明
後藤哲夫
納谷六朗
中村千絵
桐本琢也
酒井敬幸
藤田圭宣
堀勝之祐
井上和彦

感想

TVアニメ「交響詩篇エウレカセブン」(2005年)の続編となるTVシリーズ。
2012年に全24話が放送。
前作のヒロイン・エウレカの息子フカイ・アオが主人公の物語。

そもそも、好きなアーティスト・中村弘二(元Supercar)が音楽を担当しているということで視聴を決めた作品。
先にサントラを買い(あぁ、サントラのレビューもしなきゃだな…)、聴きこんだ上で初代である「交響詩篇~」(以下、前作)から見始め、ようやくAOにたどりついた(笑)



■続編の舞台は別世界!?

最初に感想を言ってしまうと、つまらなくはなかったが少し残念な結末だった。
SFアニメとしてもっと面白くなる要素はあったものの、というか面白かったけど、活かしきれてないというか…。
(最終話については時間足りない感じがひしひしと伝わってきた…)

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まず設定からして悩まされる。
あらすじから予想はしていたが、前作とはかなり異なる世界観。西暦2025年、日本、沖縄、磐戸島…。
はるか遠い未来の異星の世界観で描かれた前作と違って、AOは近未来の地球を描いた物語になる。

それでいて、トラパー、スカブ、IFO(ロボット)といった前作の要素は継承している。
でもこれは、前作の結末を見た上では世界観に矛盾があることになる…。
日本や沖縄という地名があることや、西暦という暦を使っていること(しかも2025年!)、それらとスカブが同時にあることがおかしい。

加えてエウレカが磐戸島で男児(主人公アオ)を出産したという事実が余計に混乱させる。
私は「続編」の意味を「前作のその後」だと考えていたのだけど、実際見てみればほぼ新世界。
別の番組じゃないかってくらい新しい情報が多くて脳内整理が追いつかなかった(笑)



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そんなわけで、イマイチ乗り切れないまま見ていたんだけど、中盤のどんでん返しで一気にテンションが上がった。
ネタバレになるので書かないけれど、12話・13話の展開で理解が追いついていないと思ってた諸問題のうちの大きな一つが片付く(笑)
つまり、こういう形の続編なんだよ…!!

このあたりを境に、キャラクターたちの相関図も変化してきて人間関係に面白味が出てくる。
細部では謎が残っているけど、それもSFの醍醐味として楽しめる。
この時点でも一向に結末は読めないんだけど、妙な高揚感があった。
逆に言えば、前半部分はあまり面白くなかったということだけど…。



■ボーイ・ミーツ・マザー

前作の特徴といえば、やはり主人公レントンとヒロイン・エウレカのボーイ・ミーツ・ガール的な内容は無視できない。
くっついてはケンカして、ケンカしてはくっついて、そんなことを4クールに渡ってクドいくらいにやっていたのが前作だ。(ホントごちそうさまでした…)

では、AOでも思春期の少年少女の揺れ動く心情が描かれているのかといえば、正直前作に比べて鳴りを潜めた感じがする。
少年と少女の恋愛模様を描いた作品とはちょっと言い難い。

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でも、登場するヒロインは豊富で、アオの幼なじみナル、アオのチームメイトとなるフレア、エレナなどが主要なヒロインとして登場する。
主人公の少年1人に対して、少女が3人。
これはドロドロするぞ、と期待していたら意外とそうでもなく、健全なお付き合いが最後まで続いてしまう。

一応、3人の少女は全員アオのことが気になるようではある。
ただ、その描写が乏しかったりあっさりしていたりで、結局どうなの?って所は描かれない。

そして主人公アオに至っては、どの子に対しても恋愛感情を一度も抱いた様子がない(笑)
周りからは多分好かれているのに、主人公はまったく無頓着なのである。
これは、いわゆるハーレムアニメよりもけしからん状態だと思うのだが…!

中学校に上がったばかりの年齢設定というのもあるのかもしれない。
むしろアオは、少年未満の中性的な描かれ方をされていたのかも。
DVD最終巻に収録されたOVA作品「ユングフラウの花々たち」でも、アオは男子として扱われていない…。
そんな主人公が追い求め続けた存在は、母親エウレカだった。

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結局タイトルの通り、このシリーズのヒロインはエウレカということだろうか?
マタニティーでも、母親になっても、その魅力は健在だった。
前作の「エウレカー!」「レントーン!」のオマージュを自分の息子とセルフパロディーしたりする。
AOのメインヒロインはエウレカだったのかもしれない…。



■メタ的な作品世界

中盤のどんでん返し以降も残る謎を解き明かすのがヨハンソン・ブックという本。
ヨハンソンという、カルト的な扱われ方をしている学者が記した本で、世界のあるべき本来の姿がそこに書いてある。
また、ヨハンソンに関連する登場人物トゥルースは、主人公たちの前に立ち塞がり「この世界は間違っている」と訴える。

これがこの作品のキモになる部分であり、視聴者が感じた違和感を解消することになる。
世界観が矛盾しているのも無理もない。
なぜなら最初から矛盾を孕んだ世界観を描いていたのだから。

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この衝撃的な展開は、この作品の次元を一つ押し上げることになる。
この作品の元となっている世界は、大地からスカブが隆起し、トラパーが大気に満ち、70年前のスカブバーストで東京が消滅した空想上の世界ではない。
そんな世界は間違いから生まれたもので、つまりは私たちの暮らす現実世界が実は元になっているのだ。

作品世界を単なる架空の地球とするのではなく、現実世界の変容したものとすることで、現実とのつながりが生まれる。
さらに、明らかに空想物語だった前作とのつながりもあるので、AOはいわば現実と空想を橋渡しする存在になる。
明らかにアニメだった前作よりも上の次元、メタであると言える。



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この展開に合わせ、中盤以降存在感を増したのがエレナである。
アニメなどのサブカルに傾倒し、任務中もアニメの引用を呟いてしまうような不思議系の女の子。

しかし、物語がメタ的な様相を呈してくると、エレナは不思議「系」ではなくなる。
不思議系を装った女の子ではなくなってくるのだ。

中盤から終盤にかけては、エレナの一挙手一投足が何かと興味深かった。
(アニメの引用も何故かだんだん心地よくなってくる)
その存在は、エウレカと同じように、作品世界にとってのメタ的存在に思えた。

ただし、エレナのエピソードの決着を見ると非常に残念な結果が待っていた。
言及は避けるが「脱力系ヒロイン」とだけ呼ばせてほしい。
引っ張った割には…という感じ。

そして、物語全体も引っ張りすぎな気が今となってはする。



■それは、エゴだよ…!

AOは謎をいくつも孕みながら最後まで魅せたシリーズだ。
でも、謎を引っ張りすぎた感もある。
物語がどこに向かっているのか分からない。最終話ですら、アオが何をすべきか視聴者には分からないのだ(笑)

ただ、まあ最後がうまくまとまればそれでも少し報われるのだが、AOはそれも中途半端だった。
とてもSFな結末で、ある意味センス・オブ・ワンダーを感じるのだが、ハッピーエンドかと問われると首を傾げざるをえない。

おそらくは主要キャラはみんな不幸にはなってないはずである。
でも大団円が描かれてないのでどうなったのかが分からない。
それこそワンダーを感じるべきなのかもしれないが、どうにも時間が足りなくて描写しきれなかった臭いがプンプンする。

これは、世界を変えられるという要素が、それまで積み上げた人物相関図を無意味にしてしまうほど扱いの難しいものということでもある。
アオの存在しない世界では、アオを知る者はいない。チーム・パイドパイパーもないかもしれないし、祖父も他人かもしれない。
では、彼らと重ねて来たこれまでのエピソードは何だったのか…?

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ここまで大胆なことができたのは、この作品がやはりエウレカの物語だからなのか…。
エウレカのエゴとレントンのエゴで始まった物語は、それを受け止めた息子アオのエゴで結末を迎える。
それは、今まで描写したものを全部うっちゃって、新たな世界を描くことだった。(さっぱり描いてないけど)

物語を終わらせるために、これまでの物語を犠牲にする。
これは、制作者のエゴと言えるかもしれない。






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そんなわけで、あまり乗り切れなかった作品だけど、一部の展開はとても印象的だった。
サントラを聴き込んでいたこともあり、劇伴を楽しみながらアニメを見ることもできた。

ちなみに、序盤から情報小出しということもあり、情報整理を兼ねて全話2回ずつ見ながら進めた。(DVDを2本借りて2周して次の2本へ)
そのおかげか、キャラクターへの愛着はしっかり生まれた。
でもそれ故に、レベッカやクロエの扱いに納得がいかないんだけど(笑)

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まあそういうところも含めて、いろいろ惜しかった作品だと思う。
ロボットものの魅力もあまりなかったかな(´・ω・`)
でも惜しかったからといって、さらに続編作って挽回してほしいとは思えないのも事実だったりする…。

まだまだいろいろ語り足りないが、SF好きなら一度は見てみると面白いかもしれない…。

「リトル ウィッチ アカデミア」よく動きよく笑え。活発な女の子アッコが主人公の魔法学校物語!

original (2)

リトル ウィッチ アカデミア

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フォックスキャッチャー

フォックスキャッチャー(2014年、アメリカ)

【監督】
ベネット・ミラー
【出演】
スティーヴ・カレル
チャニング・テイタム
マーク・ラファロ
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
シエナ・ミラー
アンソニー・マイケル・ホール

感想(2015年2月18日、フォーラム仙台にて鑑賞)

コメディ俳優だと思っていたスティーヴ・カレルが、背筋の凍る演技を見せる。
レスリングの元オリンピック金メダリストが、大財閥の御曹司に射殺されるという実際の事件の真実に迫った伝記映画。

この手の作品ってあまり食指が動かないジャンルなんですが、まあ話題だし、スルーした後から観たくなって後悔するよりも、ということで鑑賞。
観てみると、事件の結末が分かっているせいか、緊張感が全然途切れなかった。
終始、スクリーンから銃を向けられてるような感じ。

でも話自体はとても単純だと思う。
ギクシャクしだした感情が徐々に蓄積されていってある時突然暴発する。

事件をリアルタイムで知ってるならば、関係者の人となりに興味が湧くのだろうけど、この映画によって初めて事件を知った私にとっては、あくまでも「映画」としての受け止め方になってしまう。
「事実は小説よりも奇なり」と言うが、この映画は「小説」として捉えるとありきたりだと思う。

ただ、そのシンプルな構成によって魅力が損なわれているということはなく、ある意味この映画は雰囲気映画なのかな、と思う。
しかも、単に「暗い」とか「寒々しい」とか、それだけではない。
抑えた演出が暖かくも冷たくもない絶妙な居心地の悪さを作り出して、主人公と一緒になって「もうここには居たくない」と思わせる。

結局何を言いたい映画なのか私には分からなかったんだけど(というか、事件の謎を解き明かすことに意味があって何かのメッセージを声高に訴える作品じゃない)、ただただカレル怖い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルの映画だったんだけど、映画の始まりの方に「愛国者」がどうのと言ってて、そしてラストのあの歓声はとても皮肉だよなと……。

【音楽】APPLESEED ALPHA ORIGINAL SOUNDTRACK COMPLETE EDITION

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APPLESEED ALPHA ORIGINAL SOUNDTRACK
COMPLETE EDITION

WARNER MUSIC JAPAN, 2015

曲目

[Disc 1]
1. Try It Out (Try Harder Mix) / Skrillex & Alvin Risk
2. Castle / AKLO
3. Tokyo City Underground (English ver.) / パスピエ
4. MONSTER / DJ Fumiya
5. crosswind / tofubeats
6. NOWHERE / Q;indivi+
7. Emergency / 80KIDZ
8. RINGO / RAM RIDER
9. Acceleration / nishi-ken
10. SPACE / capsule
11. You Make Me / androp
12. Depth / 中田ヤスタカ
[Disc 2]
1. Appleseed α / 諸橋邦行
2. pointless / 諸橋邦行
3. He’s a goner / 高橋哲也
4. She’d never go without you / 高橋哲也
5. Drone Hunt / 高橋哲也
6. My name is Olson / 大西省吾
7. Talos / 諸橋邦行
8. You have to make a choice / 高橋哲也
9. Trouble / 高橋哲也
10. Tank!! / 堀向直之
11. You did good, Iris / 高橋哲也
12. It’s time for us to change / 諸橋邦行
13. Secret base / 高橋哲也
14. Fanatic / 高橋哲也
15. Open your eyes, and see your future / 諸橋邦行
16. Engine ignition began / 高橋哲也
17. Thanks for droppin’ in / 高橋哲也
18. You gave us purpose. / 高橋哲也
19. We finish this! / 高橋哲也
20. I was made for this mission / 高橋哲也
21. You gave me hope / 高橋哲也
22. Horizon / 諸橋邦行

感想

フルCGアニメ映画「アップルシード アルファ」のサントラです。
Disc2までしか曲目載せていませんが、コンプリート・エディションは3枚目にDVDが付いてきて、映画のトレーラーや特別なミュージック・クリップなどの映像が収録されています。



まあ、これはもう映画観てる最中に「買お!」と決意したサントラですね。
映画の帰り道でレコード店に寄って購入しました。
映画観たその日のうちにサントラ買っちゃうというのは、これで3度目ですかね?(過去には「フィッシュストーリー」や「告白」で同じことしました)

それだけインパクトのあるサントラだったと言いたいんですよ。
アップルシードのこれまでの劇場作品と同じく、スコアとは別に第一線のアーティストから提供された楽曲が本編中に挿入されてきます。
戦闘シーンで流れるエレクトリックなクラブミュージックに一目惚れしたんですね。

参加アーティストは今作はほとんど日本人アーティスト。
あまり詳しくないんですが、1曲目のスクリレックス以外はすべて日本のアーティストじゃないでしょうか?

でも、全部洋楽ですと言われても信じてしまいそうな楽曲群。
それだけ日本の音楽シーンが海外に追いついてきた、国の垣根がなくなりつつある、ということでしょうか?

私が特に気に入ったのは3曲目、「トーキョーシティー・アンダーグラウンド」。
パスピエというグループを初めて知ったのですが、萌えを内包しながら一筋縄ではいきそうにない独創的な世界観が面白いですね。

その他、RAM RIDERの「RINGO」、nishi-kenの「Acceleration」など、キラキラあるいはギラギラした曲も好きですね。
そんな中で異彩を放つ癒し系?、tofubeatsの「crosswind」、Q:indivi+の「NOWHERE」も素晴らしい。

ちなみにテーマ曲である中田ヤスタカの「Depth」はボーカルレスで、こしじまとしこのボーカル入りのバージョンはcapsuleのアルバムの方に収録された模様。
(3枚目のDVDにはボーカル入りが映像と共に収録されています)

2枚目は劇伴を収録したもの。
荒廃した世界が舞台ということで、荒野に響くエレキギターの音色が印象的ですね。

こちらはシリーズ通して劇伴担当している高橋哲也が中心となって手がけています。
「アップルシード」の劇伴の時よりもエモーショナルな感じがしますね。

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