【監督】
カール・リンシュ
【出演】
キアヌ・リーブス (カイ)
真田広之 (大石内蔵助)
浅野忠信 (吉良上野介)
柴咲コウ (ミカ)
菊地凛子 (ミヅキ)
赤西仁 (大石主税)
田中泯 (浅野内匠頭)
あらすじ
魑魅魍魎が跋扈していた頃の日本。子供の頃、赤穂に流れてきた異端の子・カイは、領主・浅野内匠頭とその娘ミカに助けられ、それ以来いつか浅野父娘の恩に報いたいと考えていた。しかし、将軍・綱吉が吉良上野介を伴って赤穂を訪れていたある夜、浅野は突然我を忘れ、吉良に斬りかかって傷を負わせてしまう。綱吉は浅野に切腹を命じ、吉良に赤穂領を任せるが、浅野の乱心は妖術を操る吉良の側室・ミヅキのしわざだった。吉良によって地下牢に閉じ込められた赤穂侍の筆頭・大石内蔵助は、一年の後、主君を切腹に追い込んだ吉良を討つべく、赤穂を追放された侍たちを呼び集める。カイにとっては、吉良に奪われたミカを救うための戦いでもあった……。
感想 (2013年12月23日、MOVIX利府にて鑑賞)
日本人にはおなじみの時代劇「忠臣蔵」。
侍の忠義心というものをよく表した作品で、むしろ侍とはこうあるべきだ、みたいなお手本とも言える内容。
個人的には、恥を忍んで生きながらえる苦悩や、徐々に仇討から脱落していく浪士たちの人間ドラマが面白く、その上での吉良邸討ち入りは雌伏の時を耐えぬいた爽快感といえるようなものがあると思います。
この忠臣蔵をモチーフに、カイという日本人と異国人のハーフの主人公や、妖術やドラゴンなどのファンタジーな要素、豪華絢爛なオリエンタルな美術などをミックスしたサムライ・ファンタジー、それが「47RONIN」です。
まあ、ハリウッドによる「間違った日本の姿を活写した映画」がまた一つ生まれたわけですが、個人的には、目くじら立てて怒るほど酷くもなかったな、と(´・ω・`)
少なくとも映像や美術に関しては、ある意味振り切れていて良かったんじゃないかな、と思います。
日本人キャストたちがオリエンタルな衣装に身を包むというのも貴重ですしね。
ほとんど日本人で構成されたキャスト陣の中に、ポツーンと一人欧米人のキアヌがいるわけですが、違和感なく溶け込んでいたと思いますね。
「ラストサムライ」ではトム・クルーズがどうしても違和感ありましたが(むしろその違和感を日本と西洋の違いとして表現する向きもあったんでしょうけど)、「47RONIN」のキアヌ・リーブスはそういった違和感を感じなかったんですよ。
これは彼のオーラの無さが成せる技なのか……(笑)
とにかく意外と着物が似合いますキアヌは。
ポスター見てると日本人に見えてきますし。
ただ、「違和感を感じなかった」以前の話で、物語自体が特に面白いこともなく、けっこう「無感動」に見てしまった、というのもあります。
忠臣蔵を下敷きにしていても、全体的にはよくあるファンタジー映画と変わらない印象。
身分違いの恋、人種差別、親子の絆……いろいろな要素を描いていましたけど、どれも中途ハンパです。
そして、肝心の忠臣蔵の要素も活かしきれてなかった、と思います。
やはり欧米の人にとっては「ハラキリ」が一番インパクトあるのかな。
ハラキリという悲劇によって始まった復讐の物語は、その責任をハラキリで償うことによって終わります。
しかし、切腹自体は時代劇では割と一般的なシーンで、「切腹をよく見てる日本人」と「ハラキリが珍しい欧米人」の温度差があったというか……。
僕にとっての忠臣蔵と言えば、昔見た大河ドラマ「元禄繚乱」がイメージの大半に影響を与えています。
昼行灯と呼ばれた国家老・大石内蔵助が、郭通いをして周囲を欺いたり、妻と離縁をしたり、他の浪士たちも、仇討ちを近い江戸に潜伏しますが、途中で脱落する者も出てきたり……。
そういった、潜伏期間中のドラマこそ、忠臣蔵の醍醐味なんじゃないかと思ってます。
(他には、記憶に新しいNHK時代劇「薄桜記」とかも思い出したけど、あれは吉良側から描いてるので、そこまで47RONINに求めるのはムリですよね)
なので、潜伏期間中のドラマの無い「47RONIN」は、なんか違うよな、と。
「47RONIN」では、大石内蔵助は地下牢に放り込まれ、1年後に釈放されるんですが、その1年をショートカットしてしまってるんですね。
牢屋に入れられたと思ったら、暗転してすぐに牢屋が開け放たれる(笑)
これでは大石の1年間の苦悩がまったく感じられないですよね。
武士にとっては、主君の汚名をすすぐこともできず後を追うこともできずに生き長らえることの方が、ハラキリよりもよっぽど辛いんだよ、ってことを分かってないんだな、と(´・ω・`)
まあそこまで深く踏み込むような映画だとは最初から思ってないですけどね(笑)
恥を忍んで耐える……というよりは、武器を集めに天狗の下へ向かおう!っていうアドベンチャーですからね。
キャストについては特に文句はありません。
田中泯さんが良かったですし、浅野忠信と真田広之が切り結ぶ(ハリウッドのスクリーンで!)のは新しかったし、女性キャストもそこまで華があるようには思えなかったけど、とりあえず菊地凛子には和製ヘレナ・ボナム=カーターの称号を与えてあげてもいいんじゃないかと。
その他の役者が、英語のできる役者を選んだせいか知らない顔ばっかりだったけど、俳優陣がパッとしないというよりは、脚本がパッとしないんですよねこれ。
大石一家の絆についてももっと深く掘り下げられたはずだし、カイと因縁のある浜野の心境の変化というのも物語に活きてないし。
……結局また文句になってしまってますが(笑)
ある意味、予想の範囲内の映画でした。
特に冒険してるわけでもないので、無難に手堅いヒロイック・ファンタジーになってます。
ただそれだけではもう観客を呼び込めない時代になってるらしく、興収は盛大にコケたようです。
ドラゴン出てきてわぁっ!って驚く時代はとうに過ぎたということですね。