トゥモロー・ワールド
(2006年、アメリカ/イギリス)
【監督】アルフォンソ・キュアロン
【出演】
クライヴ・オーウェン
ジュリアン・ムーア
キウェテル・イジョフォー
チャーリー・ハナム
クレア=ホープ・アシティ
マイケル・ケイン
あらすじ
2027年11月、世界最年少の少年が死に、世界は悲しみに包まれていた。人類に起こった原因不明の生殖能力の喪失。18年間に渡って子供が生まれない世界は恐慌状態に陥り、多くの国が内戦やテロによって消滅していった。難民が大量に押し寄せるイギリスでは、軍事力による徹底的な抑圧でかろうじて秩序を維持していたが、反政府組織の爆破テロが多発し、日に日に治安は悪くなるばかりだった。そんな中、官僚のセオは、反政府組織のリーダーとなった元妻からある不法滞在者を託される。若い黒人女性・キーは子供を身ごもっており、セオは間もなく出産を迎える彼女と共に命がけの逃避行を開始するが……。感想 (2014年1月13日、DVDにて鑑賞)
「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン監督が描いた近未来SF。少子化問題のその先を暗示するような内容ですね。
舞台は、人類が子供を産めなくなってから18年が経った2027年のイギリス。
なぜかある頃から生殖能力が失われ、妊娠し出産することができなくなった人類。
18年も経てば街から子供の姿は消え、TVでは世界最年少だったアルゼンチンの18歳の少年が彼のファンによって刺殺されたなんてニュースが流れている。
その18年の間に多くの国が内乱によって消滅し、英国でも日夜爆破テロが起こるなど、混沌とした世界。
しかし主人公セオはあるキッカケである妊婦と出会います。
それはまだ少女のあどけなさを顔に残している黒人女性キー。
子供の生まれない世界でなぜ彼女は身ごもったのか?
とにかく人類の唯一の希望であるキーとお腹の赤ん坊を守るため、セオとキーの逃避行が始まる……というお話。
「ゼロ・グラビティ」のキュアロン監督お得意(?)の長回しがこの作品で既に多用されています。
冒頭の、人々がニュースを見守る店内で飲み物を受け取った主人公が、店の外に出てゴミ箱だかの上に飲み物を置いた瞬間、店で爆発が起こるシーンとか。
車に乗ってキーを送ろうとするも、襲撃にあって逃げるシーンとか。
そして終盤の、戦闘の続く市街地を歩くシーンなど。
面白いのは、実は複数のテイクをコンピューターでシームレスにつなぎ合わせ、一つのカットに加工しているということ。
これ繋ぎ目がまったく分からないんですが、技術の進歩はすごいですね!
なんにせよ、長回しっていうのは、画面構成、視点移動など綿密な計画が必要なんですね。
これがあって初めて臨場感を得られるリアルな映像になるんではないでしょうか。
細部にキリスト教の影響を見ることもできます。
キーがセオに妊娠を打ち明ける場所が牛舎。聖母マリアがイエス・キリストを馬屋で出産した逸話と符号しますね。
さらにセオが隠れ家でサンダルにわざわざ履き替えるのも、イエス・キリストを意識したものだとか。
原題の「CHILDREN OF MEN」というのも宗教っぽいですし。(邦題は少子化問題への警鐘の意味を誇張した感じ)
そういう細かいことを知らなくても、廃墟の戦闘を止めてしまった者を兵士や市民たちがなんとも言えない表情で見送る様子は神々しさを感じましたね。
ストーリー的には、「それでその後は?」と気になってしまう人もいるでしょうが、個人的には映像に圧倒されてそれどころではなかったです(笑)