アリス・イン・ワンダーランド
(2010年、アメリカ)
感想 (2013年3月20日、TV録画にて鑑賞)
ルイス・キャロルの児童文学「不思議の国のアリス」の後日談的な内容で描いたファンタジー映画です。監督はティム・バートン。
主演は……この作品、どっちが主演なんでしょう?
「主役」は、19歳のアリスを演じたミア・ワシコウスカだけど、「主演」となるとマッドハッターを演じたジョニー・デップの方かもしれないですね。
まあどっちでもいいんですが。
共演には、赤の女王にヘレナ・ボナム=カーター、白の女王にアン・ハサウェイなどなど。
ウサギとか芋虫とかチェシャ猫とか、基本、俳優よりも声優としての登場が多く、しかも地上波吹き替えで見たので……。
物語の舞台は、アリスが不思議の国を旅してから13年後。
19歳の美しい女性へと成長したアリスは、幼い頃の不思議な体験を夢の中の出来事と思い込んでいました。
ある日、出席したパーティーで突然求愛されたアリスは、その場を逃げ出し、再び不思議の国へと迷い込んでしまいます……。
原作はワンダーランドを旅するファンタジーだったはずだけど、この実写化作品は兵を率いて竜と戦うヒロイック・ファンタジーになってました。
21世紀のハリウッド事情を反映したかのようなストーリー。
戦い無しには盛り上がれないのかな……。でも、ミア・ワシコウスカが甲冑着る必要はないような気がします(笑)
こういうストーリーの原作だったらまず世界中で翻訳される大ベストセラーにならなかったことは確かです。
いや、逆に「アリス」でなかったらそれなりに面白いファンタジー映画なのかもしれません。
いや、これでも充分面白いと思うんですけど、評価が低い理由は第一に「不思議の国のアリス」を原作としてしまったことにあるんじゃないかというパラドックスですよ、これは。
個人的には、大人になって不思議の国での出来事を忘れてしまったアリスという描写は、「自分」を見失った状態なんじゃないかと思います。
19歳のアリスは、良家の子女という立場から様々なものに縛られて生きています。女子の嗜み、慎ましい態度、そしてコルセット……。そういった自分を縛り付けるものを嫌悪しつつも、自分の力ではどうすることもできないアリス。
さらにそこへ貴族のお坊っちゃんから求愛されるという追い討ち。私の人生ってなんなの?自分らしさって?
不思議の国の住人たちは「おまえはアリスじゃない!」と言いますが、これは「自分らしさ」を失ったアリスのことを見事に言い当てているんじゃないかと思います。
そして、だんだんと自分らしさを取り戻していくアリス。
彼女はもともと常識の枠に収まるような女性ではないようです。終盤では自ら剣を取りドラゴンと戦います。(←このへんはもう単純に昨今の女性の強さを表してると思いますが)
「自分」を完全に取り戻したアリスは、ラストでは実業家として世界へ羽ばたきます。
よくある主人公の成長物語として見るのではなく、抑圧された自分らしさを解放する物語として見ると、まあそれなりに面白いんじゃないかと思いました。
ティム・バートン映画の「毒」といっていいんでしょうか、そういう描写が随所にあって。
例えば、赤の女王と白の女王の対比。
一見、醜く傲慢であからさまに悪役な赤の女王と、可憐で慈悲に溢れ誰からも慕われる白の女王、という関係ですが、このアン・ハサウェイ演じる白の女王に何か腹黒さを感じた人も少なくないはず。
ハサウェイの身振り手振り、言葉使い、そう感じるような演出になってるんですかね。
決定的だったのは、決着の場面で姉である赤の女王をあっさり処断したこと。
白の女王の本性を見たような気がします……。
あと、チェシャ猫がよかったです。
渋くてよかった。でもお茶目、でも気まぐれ、でも大事なとこでは味方。
フワフワ浮いてるんだけどグダラーグダラーしてるのがいいですよね。きびきびしてないところが(笑)
チェシャ猫いいですよー!