映画を見ていると、女ってすげえ…と思うことがたまにある。
男が持つ「つよさ」とは別の、女性ならではの「したたかさ」みたいなものを見せつけられると、途端に面白い映画になるような気がする。
あんまり書くとネタバレになるのでやめとく。

原題は A Most Violent Year で、これは最も犯罪の多かった年、物語の舞台となる1981年を指している。
ニューヨークでオイル・カンパニーを立ち上げた移民のアベルと妻アナは、この年、オイル業界で確固たる地位を築くため、全財産を土地買収につぎ込む。
しかし、時を同じくして、自社オイルの強奪事件が頻発するようになる。
さらには脱税疑惑に、家族への脅迫…。銀行の融資も受けられなくなり、破産の危機が迫ってくるのだった。



「フォースの覚醒」ではレジスタンスのエースとしてXウィングを乗り回していた頼れる兄さんオスカー・アイザックが、1981年のNYにおいては理不尽な暴力に苦しめられ金策に奔走しているとは…。
これが現実なのか(´・ω・`)

冒頭から強奪シーンで驚いた。
土地の売買契約を交わし達成感に浸っている主人公の後ろからもう大きな問題が迫って来ている。
清く正しい「クリーンな」商売をしようとする主人公だが、その道は険しく、新参者には風当たりも強い。

それでも己れの信念を貫こうとする彼はとても真面目な男なのだろうと思った。
運転手に厳しく見える正当防衛の手段にも彼なりの論理があるし、それを無視した対処によって事態が悪化したことが、彼の正しさ・思慮深さを証明している。
あの運転手も可哀想だが、主人公はちゃんと従業員の生活を考えているように思えた。

痛い目にあっても怖い思いをしても働かないことには生活できない。
働かせることが社長としてできる最大の応援、責任の取り方なのかもしれない。
とにかく私の目には、腐敗した業界の荒波の中で懸命に正しくあろうとする男の物語に思えた。

だが現実はそれを許すほど甘くはなく、主人公は徐々に追い詰められていく。
でもサスペンスフルだったり、熱く燃えたりではなく、ただただ静かに首を絞められていくようなそんな感じ。
終盤は事実息苦しかった。



アメリカン・ドリーマー 理想の代償
(2014年/アメリカ)
【監督】
J・C・チャンダー
【キャスト】
オスカー・アイザック
ジェシカ・チャスティン
デヴィッド・オイェロウォ
アレッサンドロ・ニヴォラ
アルバート・ブルックス