有川浩
角川書店 角川文庫
*感想
久しぶりに読み返したらやっぱり面白かったので再度感想文を書こうと思う。
以前書いた記事はキャラクターの魅力について興奮気味に書いてた。こちら→http://impressedorgan.bloggeek.jp/archives/1025394073.html
今回も実写版公開が近づいてきたので読んでみた(笑)
1冊目の第1章から早速グッときた(笑)
「こちらは関東図書隊だ!それらの書籍は図書館法第三十条に基づく…」の所、かっこよくないですか!?いやかっこいい。
ヒロイン笠原郁の高校時代の回想で、郁が図書隊員を目指すきっかけとなった「王子様」が颯爽と登場するシーンなんだが、改めて読むとすごくすごくかっこいい…。
多分そのシーンの真実(?)を知ってるからこその感動なんだろうなあ。
改めて読むとけっこう展開が速いことに気づいた。
1冊目は全5章からなる。作者があとがきで「月9連ドラ風!」と言ってる通り、「第何章」というよりは「第何話」がしっくりくる。
第1話では、入隊したばかりで訓練に勤しむ郁と、鬼教官・堂上の殺伐とした関係、郁が図書隊を志望するきっかけとなった過去と、それによって引き起こされた大失態も描かれる。
郁と堂上のケンカがかなりエキセントリックなのは、第1話ということで物語の雰囲気を印象づけようとインパクトを求めた結果だろうか。その後の展開でドロップキックや固め技が披露されることはなかった。
第2話では、郁が早速「図書特殊部隊」(ライブラリー・タスクフォース)に配属されている。
任命されるの第2話か、とちょっと驚いた。
さらに手塚も第2話で既に登場。主要キャラクターが第2話ですべて揃うことになる。
第2話では、図書館業務に不慣れな郁の姿も描かれている。
その姿は、働き始めて間もないド新人の典型であり、最初は誰でもこうだよな〜と自分の経験と重ねることができた。
未熟な若者が一生懸命仕事を頑張っていく職業ものでもある。
(良化特務機関の襲撃も第2話で小規模ながら描かれる。郁の携わる様々な仕事を網羅した感じか)
手塚の突拍子もない申し出によって動揺する郁と、手塚のバカな一面が露呈するのが第3話。
ここでは、図書隊と良化特務機関の対立構図や、原則派と行政派に分かれるけして一枚岩ではない図書隊の裏事情が説明される。
第4話では、図書館や子供への図書規制を巡る市民の思いや主張までも含めて描かれ、「図書館戦争」の世界観を広範囲に渡ってカバーしている印象だ。
緻密な設定があればこそ図書隊VS検閲という突飛な展開が許されるのだと思う。
そして第5話、1冊目の最後のエピソードでは、いよいよ図書隊と良化特務機関の全面衝突が描かれ、この本のヤマ場となっている。
このエピソードは、実写版映画でも物語のクライマックスとして描かれた。
ここでの見所は、郁を危険に晒してしまった堂上の独白だろう。
堂上が過去を振り返りながらある秘密、読者は薄々感づいている秘密を(読者に)明かすのだが、ここの描写が圧倒的に良い。
堂上の思い、葛藤、動揺、自分への怒りが現れていた。
この作品の魅力のひとつは登場人物の清廉潔白さがあると思う。
堂上は、心配でたまらない郁を危険な任務から遠ざける、しかしそれは自分の勝手だということ、フェアじゃないこと、そして郁の誇りを傷付けてしまったということに罪悪感を持ってしまうのだ。
そこまで思い悩む必要は普通はない。でも彼らは、最早自分が子供ではなく大人の事情を受け入れざるをえない立場と自覚しつつも、大人の都合を行使する自分に怒るのだ。
ピュアである。ピュアでありながら大人の男として充分に大人で、一方で大人の世界に慣れてしまうことがない。
堂上篤…、もとよりこの作風においては完璧な人物が求められるのは分かるが、同じ男として完敗である。
堂上のように強く正しく清廉でありたい。思わずそう思ってしまった再読だった。
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