
ラブライブ! The School Idol Movie
(2015年/日本)
【監督】
京極尚彦
【キャスト】
新田恵海
南條愛乃
内田 彩
三森すずこ
飯田里穂
Pile
楠田亜衣奈
久保ユリカ
徳井青空
*感想
大ヒットで映画館を席巻中の劇場版「ラブライブ!」
週替わりで配られる入場者特典についての是非や、一部のファンの迷惑行動が問題化しているけど、私もテレビシリーズ1期2期の予習を済ませ、多くのラブライバーが詰めかけた劇場で観てきた。
3年生の卒業というタイムリミットを迎え、自分たちで答えを出したμ's。
しかし、2期の最終話、卒業式のそのあとで、μ'sに新たなミッションが振って湧く。
それは、スクールアイドルの全国大会「ラブライブ!」の更なる成功を確実なものとするため、μ'sへのアメリカ・ニューヨークでのライブパフォーマンスのオファーだった。
μ'sの9人は早速ニューヨークへと飛ぶが、初めての海外では様々な困難が立ちはだかるのだった。
*以下、ネタバレですので未見の方は閲覧注意。
前半はNYでの9人の珍騒動、後半は日本に戻ってきていよいよ真のラストライブに向けて…という感じの構成。
テレビスポットなどの印象では、新天地NYでの活躍なのかな?μ's解散の件は解決するということかな?などと思っていたが、あくまで卒業は卒業、解散は解散で、その時期がほんの少し延びたということになる。
ある意味では2期で終わっていた話を劇場版のために引き延ばしたように見えるかもしれない。(3月末までは学生だから、という超理論には唸ったw)
しかし、今回も結局「青春の終わりの切なさ」を描いてはいるものの、ラストライブの趣向について考えると、とても意味のある内容になっていたと思う。
穂乃果たちが選んだラストライブは、いろんな学校のスクールアイドルたちが一堂に会し、ひとつの歌を全員で歌い踊るというもの。
スクールアイドルのスクールアイドルによるスクールアイドルのためのライブであり、アキバの街をジャックして行われたそれはもはや観客も踊り子も渾然一体となった「祭」と呼べるものであった。
穂乃果が何故このような形のライブを企画したのか、それがテレビシリーズでは言及されなかったこと、「ラブライブは終わらない」という表明だ。
μ'sは惜しまれつつも解散する。それは彼女たちが苦しみながらも出した答えであり、尊重すべきものだ。
しかし、μ'sがなくなった後も「スクールアイドル」は残る。そのスクールアイドルたちの進む道を、最後に穂乃果は切り拓こうとしたのだ。
そしてそれはある意味では穂乃果自身のためでもある。
スクールアイドルという文化、ラブライブという祭の存在を未来に継承することは、穂乃果たちが体験した青春、やり遂げた経験を未来につなぐことである。
μ'sが解散し、穂乃果が大人になっても、残り続ける、繰り返される「青春」がある。
それによって穂乃果の過ぎ去った青春は、思い出の中で生き続けるのだ。その時代を生きるスクールアイドルたちの現在進行形の思い出とともに。
ひとつ興味深かったエピソードがあった。
穂乃果がNYの街頭で歌う日本人のアマチュアシンガーのお姉さんに出会うエピソードだ。
声優・高山みなみが演じる新キャラなのだが、名前は劇中で明かされない。
…にも関わらず、穂乃果の心象風景に入り込んでくるほどの存在なのだ。
その他にも、μ'sの他のメンバーはお姉さんがいたことに気づいてなかったり、悩む穂乃果を「意外と簡単だったよ」と過去形で励ますのも気になった。
あのお姉さんはいったい何だったのか?なんて感想が出てきそうな描かれ方だったのだが、鑑賞後、ひとつの仮説を立てたらとても簡単に納得できてしまった。
あのお姉さんはおそらく穂乃果の未来の姿だろう。
そう考えると髪の毛の色も少し似ているし、他のメンバーが気づかなかったこと(穂乃果にしか見えない幻の存在)、穂乃果の悩みに対して自分の経験のように励ましたことも、NYにいたはずの彼女が突然日本に現れるのも、そしてラストでは完全にいなくなっているのも、すべて合点がいく。
逆になぜ実在しない人からマイクスタンドを借りられたのかという疑問も出てくるが、そこはこのアニメなので、SFではなくてファンタジー的な解釈で許されると思う。
あのお姉さんは、穂乃果の未来の可能性のひとつで、つまりはそういうことだ。
やはりμ'sは終わり、青春は終わるのだ。
最も輝いていた時期は終わりを迎え、厳しい現実に放り出される日が穂乃果にも来るのだ。
しかし、その時穂乃果には前に進むための勇気を生み出す「かけがえのない思い出」があった。
μ'sをやり遂げた思い出を胸に、どんな現実にも飛び込んでいける勇気があった。
そのことを未来の穂乃果は「意外と簡単だったよ」と言ったのだろう。
歌が大好きな穂乃果、そしてμ'sでの経験を通して歌の持つ力を知った彼女は、今も(いや近い未来)路上で夢のつづきを歌っている。
それはけしてμ's時代のような輝かしい毎日ではないが、未来の彼女に迷いはなかった。
多くの夢が生まれては消えていくニューヨークという街だからこそ、穂乃果は未来の自分が夢を追い続ける姿を見たのかもしれない。
そして女性シンガーが自分自身だと自覚するしないに関わらず、それが穂乃果の青春の終わらせ方に影響を与えたのだろう。
穂乃果はお姉さんを見て思ったのかもしれない。「いつまでもこのままじゃないんだ」と。
思えば2期の結末は卒業というタイムリミットに迫られての決断だったが、劇場版の場合は、穂乃果自身が自発的にこのことに気づいたのだ。
そこへやってきたラストライブという機会。穂乃果はただ最高のライブではなく、大きな意味のあるものを目指した。
それがスクールアイドルを未来へつなぐライブだったのだろう。
…なんてことを大真面目に考えてしまうくらい、語り甲斐のある作品だった。
約100分という尺にしてはボリュームがあるように感じたのは、2分弱の挿入歌パートが何回か入るせいかもしれない。
私にとってはやはり穂乃果がどうしても主人公なので、穂乃果穂乃果と書いてしまったが、他のメンバーの魅力も如何なく発揮されていた。
個人的には、凛ちゃんが穂乃果的な立ち位置になってるシーンがあって、1年生グループの今後を期待させられた。3年生が抜けても、2年生がいなくなっても、凛たちなら大丈夫にゃ〜!(でも、μ'sは解散なんだけどね…ハァ…残念)
やはり終わってしまうのは残念な気もするが、それを上回る終わり方を見せてくれた作品だと思う。
有終の美を飾るに相応しい劇場版だろう。
そして、ラブライブは終わらないというテーマは、現在進行中の「ラブライブ! サンシャイン」によって現実のものとして受け止められるのだ。
しかし、まさか卒業式の後にもうひとつ物語をやるとは思わなかった(笑)
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pixivのネタとスクフェスで得た知識のみで行って参りました。
パンフレットにさえ姿を現さなかった謎のおねいさん。やはりその解釈になりますよね。ファンタジーチックとはいえ悩むホノカチャンの後押しは見事だったと思います。
PS.μ'sの物語は終わりませんよ。りんぱなの結婚式をやってくれるって僕信じてます(殴