エウレカセブンAO

【監督】
京田知己
【アニメーション制作】
ボンズ
【声の出演】
本城雄太郎
宮本佳那子
大橋彩香
小見川千明
後藤哲夫
納谷六朗
中村千絵
桐本琢也
酒井敬幸
藤田圭宣
堀勝之祐
井上和彦

感想

TVアニメ「交響詩篇エウレカセブン」(2005年)の続編となるTVシリーズ。
2012年に全24話が放送。
前作のヒロイン・エウレカの息子フカイ・アオが主人公の物語。

そもそも、好きなアーティスト・中村弘二(元Supercar)が音楽を担当しているということで視聴を決めた作品。
先にサントラを買い(あぁ、サントラのレビューもしなきゃだな…)、聴きこんだ上で初代である「交響詩篇~」(以下、前作)から見始め、ようやくAOにたどりついた(笑)



■続編の舞台は別世界!?

最初に感想を言ってしまうと、つまらなくはなかったが少し残念な結末だった。
SFアニメとしてもっと面白くなる要素はあったものの、というか面白かったけど、活かしきれてないというか…。
(最終話については時間足りない感じがひしひしと伝わってきた…)

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まず設定からして悩まされる。
あらすじから予想はしていたが、前作とはかなり異なる世界観。西暦2025年、日本、沖縄、磐戸島…。
はるか遠い未来の異星の世界観で描かれた前作と違って、AOは近未来の地球を描いた物語になる。

それでいて、トラパー、スカブ、IFO(ロボット)といった前作の要素は継承している。
でもこれは、前作の結末を見た上では世界観に矛盾があることになる…。
日本や沖縄という地名があることや、西暦という暦を使っていること(しかも2025年!)、それらとスカブが同時にあることがおかしい。

加えてエウレカが磐戸島で男児(主人公アオ)を出産したという事実が余計に混乱させる。
私は「続編」の意味を「前作のその後」だと考えていたのだけど、実際見てみればほぼ新世界。
別の番組じゃないかってくらい新しい情報が多くて脳内整理が追いつかなかった(笑)



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そんなわけで、イマイチ乗り切れないまま見ていたんだけど、中盤のどんでん返しで一気にテンションが上がった。
ネタバレになるので書かないけれど、12話・13話の展開で理解が追いついていないと思ってた諸問題のうちの大きな一つが片付く(笑)
つまり、こういう形の続編なんだよ…!!

このあたりを境に、キャラクターたちの相関図も変化してきて人間関係に面白味が出てくる。
細部では謎が残っているけど、それもSFの醍醐味として楽しめる。
この時点でも一向に結末は読めないんだけど、妙な高揚感があった。
逆に言えば、前半部分はあまり面白くなかったということだけど…。



■ボーイ・ミーツ・マザー

前作の特徴といえば、やはり主人公レントンとヒロイン・エウレカのボーイ・ミーツ・ガール的な内容は無視できない。
くっついてはケンカして、ケンカしてはくっついて、そんなことを4クールに渡ってクドいくらいにやっていたのが前作だ。(ホントごちそうさまでした…)

では、AOでも思春期の少年少女の揺れ動く心情が描かれているのかといえば、正直前作に比べて鳴りを潜めた感じがする。
少年と少女の恋愛模様を描いた作品とはちょっと言い難い。

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でも、登場するヒロインは豊富で、アオの幼なじみナル、アオのチームメイトとなるフレア、エレナなどが主要なヒロインとして登場する。
主人公の少年1人に対して、少女が3人。
これはドロドロするぞ、と期待していたら意外とそうでもなく、健全なお付き合いが最後まで続いてしまう。

一応、3人の少女は全員アオのことが気になるようではある。
ただ、その描写が乏しかったりあっさりしていたりで、結局どうなの?って所は描かれない。

そして主人公アオに至っては、どの子に対しても恋愛感情を一度も抱いた様子がない(笑)
周りからは多分好かれているのに、主人公はまったく無頓着なのである。
これは、いわゆるハーレムアニメよりもけしからん状態だと思うのだが…!

中学校に上がったばかりの年齢設定というのもあるのかもしれない。
むしろアオは、少年未満の中性的な描かれ方をされていたのかも。
DVD最終巻に収録されたOVA作品「ユングフラウの花々たち」でも、アオは男子として扱われていない…。
そんな主人公が追い求め続けた存在は、母親エウレカだった。

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結局タイトルの通り、このシリーズのヒロインはエウレカということだろうか?
マタニティーでも、母親になっても、その魅力は健在だった。
前作の「エウレカー!」「レントーン!」のオマージュを自分の息子とセルフパロディーしたりする。
AOのメインヒロインはエウレカだったのかもしれない…。



■メタ的な作品世界

中盤のどんでん返し以降も残る謎を解き明かすのがヨハンソン・ブックという本。
ヨハンソンという、カルト的な扱われ方をしている学者が記した本で、世界のあるべき本来の姿がそこに書いてある。
また、ヨハンソンに関連する登場人物トゥルースは、主人公たちの前に立ち塞がり「この世界は間違っている」と訴える。

これがこの作品のキモになる部分であり、視聴者が感じた違和感を解消することになる。
世界観が矛盾しているのも無理もない。
なぜなら最初から矛盾を孕んだ世界観を描いていたのだから。

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この衝撃的な展開は、この作品の次元を一つ押し上げることになる。
この作品の元となっている世界は、大地からスカブが隆起し、トラパーが大気に満ち、70年前のスカブバーストで東京が消滅した空想上の世界ではない。
そんな世界は間違いから生まれたもので、つまりは私たちの暮らす現実世界が実は元になっているのだ。

作品世界を単なる架空の地球とするのではなく、現実世界の変容したものとすることで、現実とのつながりが生まれる。
さらに、明らかに空想物語だった前作とのつながりもあるので、AOはいわば現実と空想を橋渡しする存在になる。
明らかにアニメだった前作よりも上の次元、メタであると言える。



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この展開に合わせ、中盤以降存在感を増したのがエレナである。
アニメなどのサブカルに傾倒し、任務中もアニメの引用を呟いてしまうような不思議系の女の子。

しかし、物語がメタ的な様相を呈してくると、エレナは不思議「系」ではなくなる。
不思議系を装った女の子ではなくなってくるのだ。

中盤から終盤にかけては、エレナの一挙手一投足が何かと興味深かった。
(アニメの引用も何故かだんだん心地よくなってくる)
その存在は、エウレカと同じように、作品世界にとってのメタ的存在に思えた。

ただし、エレナのエピソードの決着を見ると非常に残念な結果が待っていた。
言及は避けるが「脱力系ヒロイン」とだけ呼ばせてほしい。
引っ張った割には…という感じ。

そして、物語全体も引っ張りすぎな気が今となってはする。



■それは、エゴだよ…!

AOは謎をいくつも孕みながら最後まで魅せたシリーズだ。
でも、謎を引っ張りすぎた感もある。
物語がどこに向かっているのか分からない。最終話ですら、アオが何をすべきか視聴者には分からないのだ(笑)

ただ、まあ最後がうまくまとまればそれでも少し報われるのだが、AOはそれも中途半端だった。
とてもSFな結末で、ある意味センス・オブ・ワンダーを感じるのだが、ハッピーエンドかと問われると首を傾げざるをえない。

おそらくは主要キャラはみんな不幸にはなってないはずである。
でも大団円が描かれてないのでどうなったのかが分からない。
それこそワンダーを感じるべきなのかもしれないが、どうにも時間が足りなくて描写しきれなかった臭いがプンプンする。

これは、世界を変えられるという要素が、それまで積み上げた人物相関図を無意味にしてしまうほど扱いの難しいものということでもある。
アオの存在しない世界では、アオを知る者はいない。チーム・パイドパイパーもないかもしれないし、祖父も他人かもしれない。
では、彼らと重ねて来たこれまでのエピソードは何だったのか…?

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ここまで大胆なことができたのは、この作品がやはりエウレカの物語だからなのか…。
エウレカのエゴとレントンのエゴで始まった物語は、それを受け止めた息子アオのエゴで結末を迎える。
それは、今まで描写したものを全部うっちゃって、新たな世界を描くことだった。(さっぱり描いてないけど)

物語を終わらせるために、これまでの物語を犠牲にする。
これは、制作者のエゴと言えるかもしれない。






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そんなわけで、あまり乗り切れなかった作品だけど、一部の展開はとても印象的だった。
サントラを聴き込んでいたこともあり、劇伴を楽しみながらアニメを見ることもできた。

ちなみに、序盤から情報小出しということもあり、情報整理を兼ねて全話2回ずつ見ながら進めた。(DVDを2本借りて2周して次の2本へ)
そのおかげか、キャラクターへの愛着はしっかり生まれた。
でもそれ故に、レベッカやクロエの扱いに納得がいかないんだけど(笑)

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まあそういうところも含めて、いろいろ惜しかった作品だと思う。
ロボットものの魅力もあまりなかったかな(´・ω・`)
でも惜しかったからといって、さらに続編作って挽回してほしいとは思えないのも事実だったりする…。

まだまだいろいろ語り足りないが、SF好きなら一度は見てみると面白いかもしれない…。