アメリカン・スナイパー(2014年、アメリカ)

【監督】
クリント・イーストウッド
【キャスト】
ブラッドリー・クーパー
シエナ・ミラー
ルーク・グライムス
ジェイク・マクドーマン
ケビン・ラーチ
コリー・ハードリクト
ナビド・ネガーバン
サミー・シーク

感想(2015年3月5日、MOVIX仙台にて鑑賞)

私は戦争映画はどちらかというと苦手だ。
クリント・イーストウッド監督の作品もあまり好きじゃない。
じゃあ観に行くなよ、という話なんだけれど、見逃してモヤモヤするよりはと思って観に行ってしまった…。
そして、案の定「ウーン…」と唸りながら帰ってきた。

けして駄作ということはなくて、やはり話題になるだけのことはある映画。
でも、記憶に残るかといえば、正直そこまでのインパクトはなかったと思う。

米軍最多の160人を狙撃した兵士が主人公で、彼は何度も戦地と本国を行き来するうちに精神が不安定になっていく。
戦地では現地の武装組織と毎日殺し合いをして仲間も大勢殺されている。
しかし、国に帰ればそこには「平和な生活」がある。戦争のことなどどこ吹く風で、人々が気にしているのは例えば夕飯の献立とか日々の生活のことだ。
その平和が主人公を癒すどころか逆に精神を蝕んでいく。

そこがこの映画の一番のテーマだと思うんだけど、その一方で戦闘パートもしっかりと描かれる。
敵の狙撃手ムスタファなるライバルも登場し、お互いに相手の影を追いながら戦っていく様子は西部劇などにも通ずるものがあると思う。
主人公とムスタファの狙撃手同士の戦いは純粋に燃えたし楽しかった。

ただし、この映画「楽しかった」では終わらせてくれない。
よくある反戦映画的な印象を極力避けているように見えて、でもやはり反戦の名の下に作られているので、どんなに戦闘シーンがかっこよくてもそこで盛り上がることをためらってしまう。

無感動に観てしまった。というより無感動に観るしかなかったと思う。
こういう兵士がいた/いることを知らなければならないから観た、こんな状態に近い。
やっぱりイーストウッドとは相性が悪いのかな…。



私がイーストウッド苦手な理由は、「グラン・トリノ」や「ミリオンダラー・ベイビー」の結末が「カッコつけ」に思えてしまうからだ。
この「アメリカン・スナイパー」は実話を元にしているので、そういったイーストウッドの思い描く理想の死に方的なものはなかったが、でも最後の最後にあのエンドロールがあった。

エンドロールのあの演出は、鎮魂の意味と、衝撃的な内容について「皆さんはどう思いますか?」という問いかけの意味があるように思う。
しかし、この映画では答えは既に出ているような気がするし、というか答えを出すも何も、この映画に疑問を挟む余地はなかったのだ。

戦争映画として「反戦」という大きな意義はあるけれど、この映画にしかできない問題提起はなんだったのか?
なんだかまとまらないが、とにかくどこかもどかしい思いのする映画だった。