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シャーロックホームズ

【脚本】
三谷幸喜
【キャスト】
山寺宏一
高木渉
堀内敬子
平岩紙
関智一
高泉淳子
岸尾だいすけ
梶原善
浅利陽介
三瓶由布子
江原正士
中村梅雀
段田安則

感想

昨年10月から今年2月にかけて全18話が放送されたNHKの人形劇「シャーロックホームズ」。
脚本は三谷幸喜、パペットデザインは井上文太、人形美術・操演はスタジオ・ノーヴァ、音楽はスパニッシュ・コネクションの平松加奈。
NHK人形劇の前シリーズにあたる「新・三銃士」と同じスタッフが集結ということで見てみた。



■学園モノへのリビルド

全寮制の名門校ビートン校に転入してきた15歳の少年ジョン・H・ワトソンは、ベイカー寮221B号室でシャーロック・ホームズという少年と同室になる。
問題児とされるホームズだったが、彼には並外れた観察眼と洞察力で物事の真実を見抜く力があった。
やがて2人は、生徒たちからの依頼を受け、学校で起こる様々な事件を解決していくことになる。

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アーサー・コナン・ドイルの生み出した名探偵シャーロック・ホームズの物語を、大胆にも学園ドラマへと再構成した作品。
自身もシャーロキアンである三谷幸喜の脚本で、彼らしい笑いも散りばめられていた。
個性的で魅力的なキャラクターも大勢登場する。

一部の前後編の構成のものを除き、ほとんどが一話完結になっている。
事件の発生から捜査、謎解きまでが一話で描かれるのだが、それを毎週20分の放送時間でやってしまうのがすごい。

学園ミステリーということで殺人事件や凶悪犯罪は描かれない。(一つの例外を除いて)
しかし、それでも人間の感情はしっかりと描いていて、なおかつ20分でまとめてしまう構成力。
しかも、ただまとめるだけじゃなく、ちゃんと面白いのだからすごいと思う。

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さらに、主人公ホームズを演じた山寺宏一の演技も相変わらずのすごさだった。
今作のホームズは成人男性ではなく、15歳の少年である。
いくら天才といっても、物語の中では少年らしい行動や言動も出てくる。

そんなまだ未成熟なホームズを、もういい大人の山寺宏一が演じるんだから面白い。
そして例の如く、脇役の動物まで一手に引き受けている。
ちなみに録音はプレスコ方式で、先に収録された音声に合わせて人形を操演したらしい。



■個性的な脇役たち

原作に登場したキャラクターたちが、この人形劇では身分や年齢を変えて登場する。
宿敵モリアーティ教授はモリアーティ「教頭」として、アイリーン・アドラーは保健室の先生として登場する。
私は原作は読んだことがなくてまったく無知だが、だからこそ改変されたキャラクターたちをありのまま受け入れることができたと思う。

そして、彼ら脇役は事件の関係者として登場するだけではない。
学園生活を共に送る仲間として、事件が解決した後もふとした場面で登場したりするのだ。
例えば、ワトソンその他の男子から好意を寄せられるメアリー・モースタンや、なにかと素行が悪いウィルスン・ケンプなど…。
もちろんレストレードやハドソン夫人は準レギュラーという感じで頻繁に登場する。

そんなところも三谷作品らしいと思うし、人形劇というジャンルなので、製作したパペットを最大限利用するという意味もあったのかもしれない。
おかげで、全18話という少し短い期間だったが、登場するキャラクターたちに愛着が芽生えるには充分だった。

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さらに、そんな魅力的なキャラクターをゲスト声優として様々な俳優が演じている。
妻夫木聡、藤原竜也、前述のメアリー・モースタンは最近私の中で急上昇中の石橋杏奈だし、ホームズが憧れるアドラーは宮沢りえが妖艶な年上女性を見事に演じていた。

中には、キャストのイメージを元に人形をデザインしたとしか思えないようなキャラクターもおり、そういう遊び心も相変わらずで楽しめた。
こういう遊び心は、「中の人」のことを知っている大人の視聴者へ向けられたサービスだろう。




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シャーロキアンの人たちはこの人形劇をどう評価したんだろうか。
まあ、目くじら立てて怒るような内容ではないし、概ね好意的に受け止められたんじゃないだろうか。
そもそも真面目なシャーロック作品ではなくて、最初から学園モノというパロディの土俵で闘ってるわけだし。

シャーロック・ホームズをモチーフにした三谷幸喜の作品を見た、という感じだ。
そして、この作品はまさしくそういうコンセプトの作品だ(笑)
期待した通りの出来だったということで満足させてもらったと思う。

実は、公式サイトによると夏には未発表のエピソードが放送されるとのことで、そちらも今から楽しみだ。