プライベート・ライアン(1998年、アメリカ)
【監督】プライベート・ライアン
【出演】
トム・ハンクス
トム・サイズモア
エドワード・バーンズ
バリー・ペッパー
アダム・ゴールドバーグ
ヴィン・ディーゼル
ジョヴァンニ・リビシ
ジェレミー・デイヴィス
マット・デイモン
テッド・ダンソン
ポール・ジアマッティ
デニス・ファリーナ
ジョーグ・スタドラー
マックス・マーティーニ
ダイラン・ブルーノ
感想(2014年3月4日、DVDにて鑑賞)
スピルバーグ監督のSF映画は好きですが、彼のもう一つのフィルムワークである社会派作品の方はあまり見たことがありませんでした。この「プライベート・ライアン」も、過去にチラッと見た記憶があるだけで、今回が初鑑賞に近いです。
第2次大戦中、戦地から連れ戻されることになったライアン二等兵(=private)を探して、トム・ハンクス演じるミラー中隊長以下8名の精鋭が危険な戦地を行軍するという戦争映画。
1944年、ノルマンディーのオマハ・ビーチでドイツ軍の執拗な抵抗を受け、多大な犠牲を払いながらなんとかフランスに上陸したミラー大尉。
進軍の準備をするミラー大尉に軍の首脳部からある特命が下されます。
その特命とは、「4人の息子のうち3人を失った母親のために、唯一生き残っている末っ子のジェームズ・ライアン二等兵を戦地から探し出し、帰国させよ」というもの。
ミラーは、落下傘の降下ミスでどこにいるかも分からないライアン二等兵を見つけ出すため、7名の部下を引き連れ、いつ敵と遭遇するかも分からない危険な戦地を進んでいきますが……。
序盤の上陸作戦からいきなり壮絶ですね。
伊藤計劃の「虐殺器官」という本の中で、特殊部隊の主人公がオフの日にこの映画を見るという描写があるんですが、何度も繰り返し再生したという冒頭15分の苛烈な戦闘シーンがこのオマハ・ビーチのシーンなんです。
けっこうグロい描写もありますが、この映画の見所のひとつであり、序盤から見る者の心をガシっと掴む力強さがあります。
あとミラー中隊長がデキる人で、戦記ものとしても面白いですね。
威張り散らすだけの上官ではなく、むしろ落ち着いて最善の方法で部下を導いていく感じ。
単にヒューマニストでもなく、仕事は仕事として殺しも躊躇なくやるタイプ。
むしろその徹底した仕事人っぷりが、彼のヒューマニズムなんじゃないでしょうか。
3人の息子の戦死を同時に聞かされることになった母親。
そんな残酷な仕打ちをしなければならなかった軍上層部。
せめて4人目の息子だけは無事に帰してあげようという上層部の粋な計らいが、この物語のそもそもの始まりです。
例えそのために犠牲を払う事になったとしても、それが誇らしいことなら断固やるアメリカ。
アメリカ人らしい気質といってもいいんですかね。少しアメリカ万歳の感じもしますが(笑)
上層部の思惑としては、純粋に母親の心労を和らげたいらしく、ライアン帰還の話を美談として戦意高揚に繋げようという意思も感じられないんですよね。そこらへんはちょっとリアリティに欠けて、都合が良かったかな。
困ったのはそれを押し付けられた現場です(笑)
上層部の自己満足のために、現場ではたった1人の兵卒(=private)を救出するための危険でアテもない行軍が始まります。
その行軍の途中でミラーの部下が1人死に、2人死に……、作戦に矛盾が生じます。
この矛盾こそがこの映画の面白味ですよね。
ひとつの命を救うために、ふたつ以上の命を失って意味があるのか。
当然、この矛盾をある兵士はミラーにぶつけてきます。
それに対するミラーの答えがまた面白くて……。
いつか戦争が終わって本国へ帰った時に、ライアン二等兵を母親の下へ無事に帰してやったことが、クソッタレな戦争体験の中で唯一誇れることになるだろう、と言うんですね。
もうね、これ価値観の転換ですよね。
兵士は誰しも戦場で酷い経験をして、運良く生きて帰れたとしても、一生人殺しの罪に苛まれます。
しかし、ライアンを救ったという大義名分があれば、それによって胸を張って帰ることもできる……。
逆に言えば、ライアン救出の命を受けたミラー以下8名の方が、他の兵士たちよりも恵まれているのかもしれないんですよ……。
そんなわけで、大きな矛盾を覆す価値観の転換という面白いドラマが見られるこの映画ですが、いよいよライアンと巡りあった時、またもや別の価値観が出てくるんですね。
ライアン曰く、戦友を残して自分だけ帰国できない……。
ちょwwwマット・デイモンおまえ、トム・ハンクスの言うこと聞けよwww
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