ローン・サバイバー(2013年、アメリカ)

【監督】
ピーター・バーグ
【出演】
マーク・ウォールバーグ
テイラー・キッチュ
エミール・ハーシュ
ベン・フォスター
エリック・バナ
アレクサンダー・ルドウィグ
アリ・スリマン

感想(2014年4月24日、チネ・ラヴィータにて鑑賞)

アメリカが誇る精鋭部隊ネイビー・シールズによる、2005年のアフガニスタンでのタリバン幹部暗殺作戦を描いた戦争アクション映画。
ネイビー・シールズ史上最大の悲劇と言われた<レッド・ウィング作戦>に参加し、ただ一人の生還者となったマーカス・ラトレルの手記を基にした、実話ベースの物語です。



2005年6月、タリバン幹部アフマド・シャーの殺害を狙ったレッド・ウィング作戦のため、アフガニスタンに赴いたネイビー・シールズ。
マーフィー大尉率いる、マーカス、アクス、ダニ―の4名のチームは、偵察活動のためシャーが滞在しているとされる村へと徒歩で接近し山の中に身を潜めます。

しかし、その直後に付近を通りかかった3人の山羊飼いと接触。
とりあえず3名の民間人を拘束したものの、その扱いに苦慮してしまいます。
逃せばタリバンへ通報される恐れがあり、民間人を殺せば国際社会から強い非難を浴びる……。もたもたしていると異変に気づかれてしまうし、指示を仰ごうにも山岳地帯で通信が不可能な状態……。

しかたなく、現場の判断としてある決断をしますが……。



タイトルに反して「キミは一人じゃないよっ!」って内容でした(笑)
そもそも日本でのキャッチコピーも「ひとりでは、生き残れなかった。」って……じゃあ「ローン・サバイバー」じゃないじゃん(-_-;)

それはさておき、見所は被弾よりも痛いかもしれない転落シーン。(よい子はマネしないでね)
それから突然始まり延々と続く絶望的な戦闘。
偵察目的のミッションのはずが、チーム4人のうち3人を失い、救出にやってきた部隊員十数名も失ってしまうという大きな犠牲を出してしまいます。

全体的にはテロリストと戦う精鋭部隊の兵士たちを美化してるきらいはありますね。
冒頭から美しい音楽で盛り上げてくるし、テイラー・キッチュはオイシイ所もってくし、死神ベン・フォスターはかっこよすぎです。アイ・アム・リッパー……!

でもかっこいいだけで終われないのが戦争映画。
事実を基にしているためにかっこいい死に様をかっこいいと言えない。
エンタメだけどエンタメとしてだけ楽しんではいけない、そんな難しいジャンルですよね。



この事件は、戦時とはいえアフガン側の民間人にも死者を出してる事件なわけで。
なので、ラストは感動的に締めくくられても「泣けた」の一言では済ませられないんですよ。
ラストまで観たら、最初に戻って問題はどこにあったのか、あの状況ではどうするべきだったのか考えるべきですよね。

もちろん起こってしまったことは変えられないし、潜入した敵地での難しい決断を間違いだったとは私には言えません。
でも、私たちは戦地にいるわけではないし、映画としてそれを見ているのだから冷静に考えることができます。
この映画で描かれていることの問題点はなんだったのか、それは極限状態に晒されていない我々が考えなければならないことのような。
「ブラックホーク・ダウン」の感想でも述べましたが、「そもそもなんで戦地に行かなければならないのか」については、兵士ではなく我々に責任があるのかもしれません。

日本ではいま自衛隊の海外への派兵や活動について、今までよりも柔軟に対応できるように法整備が進められています。
私は安部総理の説明に納得が行きません。何故わざわざ自国民を危険に晒すようなことを自らするのかと……。

「武力行使をしに行くわけではない」などと言ってる政治家にはぜひとも「ローン・サバイバー」を観てほしいですね(´・ω・`)
偵察目的で行ったのに、たった一度民間人と遭遇しただけで過酷な銃撃戦にまで発展し全滅という結果を招いたこの事件。
似たような状況が、将来、自衛隊員に対して起こらないという100%の担保なんてないんですよ。
その時、責任を取るのは誰なんですか?