たまこラブストーリー(2014年、日本)

【監督】
山田尚子
【声の出演】
洲崎綾
田丸篤志
金子有希
長妻樹里
山下百合恵
日高里菜
藤原啓治
日笠陽子
西村知道
立木文彦
雪野五月
【アニメーション制作】
京都アニメーション

感想(2014年6月1日、MOVIX仙台にて鑑賞)

人気TVアニメ「たまこまーけっと」の続編となる、劇場用アニメ「たまこラブストーリー」。
TVシリーズ最終話から数ヶ月後、高校3年生になり進路と恋に直面した主人公たちの悩みや戸惑いに迫った、けっこうシリアスでキュートな作品です。



商店街の餅屋の一人息子・大路もち蔵は、向かいの餅屋の娘・北白川たまこに幼い頃からずっと恋をしています。
しかし、2人の関係はこれまでずっとただの幼馴染みでした。

高校3年の春、東京の大学へ進学することを決めたもち蔵は、ついにたまこに想いを伝えることを決意します。
下校途中、突然の告白に驚いたたまこは、その場から走り去ってしまいます。
それ以来、たまこはもち蔵を直視できなくなり、2人の関係は以前とは違うものになってしまいますが……。



※以下、ネタバレですので自己責任でお願いします。



けっこう期待値高めで観に行きました。
直前に「たまこまーけっと」を一気に視聴していたこともあるのですが、何よりTV版ではまったくの鈍感少女でもち蔵の気持ちに1ミリも気付いていなかった主人公・たまこが、「ラブストーリー」と題された劇場版でどのような変貌・成長を遂げるのか……。
そこには間違いなく胸が苦しくなるほどの「青春」があるはずで……。
つまりTV版の延長線上にありながらテーマが異なるという所に非常に期待していました。

結果としては、その期待は半分は満たされたのでしょうか。
鈍感変態お餅少女の恋バナは、別離と恋心の二重の告白をされるというレベルの高い告白を受け、その受け止め方が分からない辛さを描き出します。
幼馴染から恋愛関係に発展する事の微妙だけど絶対的な違い……。
恋を知らなかった子が新たな次元へと踏み出す物語になってます。

ただ個人的にはあくまで「そこまで」という感じもしました。
TV版で印象的だったラブソングも小道具として上手く機能していましたが、正直ラストの感動は期待ほどではなかったんですね。
当然そこに着地することは劇場版のチケット買う前から分かってる、という所に着地するんですね。
もちろん、そこ以外に着地点なんてないんですが。

でもその着地点ってあくまで通過点であり、いや見ようによってはスタート地点なんです。
一つの問題は解決したけど、もう一つ、「別離」という難題が残っていて、それを2人がどう乗り越えるのかを示唆する言葉が無かったので、話し自体は中途半端な所で終わったように思えてしまうんですね。

ただ演出が素晴らしいのでドラマチックなエンディングにはなってるんですけども。
素敵なエンディングを見ても2人のその後が気になってしまうのは、私が歳を食って「若さ」を失ったということかな(´・ω・`)

「ハルフウェイ」という実写映画があります。岡田将生と北乃きいが「進学」によって引き裂かれる高校生カップルを演じた映画なんですが。
その映画では、「告白」よりも「別離」の苦しさが主題になっています。
で、きちんとその苦しさと向い合って、グダグダしながらも最後には結論を出すんですよね。

「たまこラブストーリー」では、その点、あくまで「告白」が引き起こす苦しさの描写で終わってるんです。
さあ、たまこ、もち蔵が遠くに行ってしまうことはどうするつもりなんだい?とエンディングで問いかけたくなってしまう……。



一方で、TV版からの続編である強みを活かした描写もありました。
悩むたまこを友人たちが皆で相談にのってくれるシーンや、TV版から微妙な立ち位置にいたみどりちゃんの葛藤や成長も描かれたりと……。
これはオリジナル映画にはできない描写だったんじゃないかと思います。

結局は「キャラ萌え」なんですかね~。
キャラやエピソードがとにかく逐一可愛いんですよね。
デラやチョイちゃんが一瞬しか登場しないことを除けば、TV版からのファンにとっては至福の時間だったでしょうね。

当然、今までその点が高く評価されてきた京都アニメーション。
京アニとしては大満足の内容になってると思います。

でも、やっぱり「進路」というテーマをうまく活かせてなかったのは残念ですね。
たまこは変態お餅少女なので、進路を聞いたら百発百中「実家の餅屋を継ぐ」だと思うんですが、少しくらいその思いが揺れ動いてもいいんですよ、それがドラマを生むんですよ。

もち蔵についても映像作家への道を踏みだそうとしているわけで、もしその夢が叶えば、実家の餅屋は親父さんの代で終わりか、という話になってくる。(ここまで思い至ってしまうのは、私が年取った証拠みたいでイヤなんですがw)
解決してない問題はまだまだあるということですね。

なので、素敵なエンディングではあったんですが、すぐに「その後」が気になってしまうのは、ちょっと残念だったというか。
続編あるのかな~、あるといいな~、でも無くてもいいような、でもあったら見たいような。
鑑賞後、そんなモヤモヤな気分にさせてくれた作品です。