太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男
(2011年、日本)

【監督】
平山秀幸
【出演】
竹野内豊
唐沢寿明
井上真央
山田孝之
中嶋朋子
岡田義徳
阿部サダヲ
板尾創路
光石研
柄本時生
近藤芳正
酒井敏也
ベンガル
山口愛
ショーン・マクゴーウァン
ダニエル・ボールドウィン
トリート・ウィリアムズ

感想(2014年7月13日、TV録画にて鑑賞)

太平洋戦争末期のサイパン島を舞台に、実在した日本人将校の姿を描いた戦争映画です。



1944年(昭和19年)太平洋戦争末期、サイパン島の支配権を巡って日本軍と米軍は激しくぶつかりあい、総攻撃によって日本側に多くの戦死者が出た。
戦いを生き延びた大場栄大尉は、わずかな生き残りの兵士を率いてジャングルに潜みゲリラ戦を展開する。

始めは玉砕することを考えていた大場大尉だったが、民間人や兵士たちのために、生き残って最後まで戦い抜くことを決意する。
やがて、彼の誇り高い魂は、日本人だけではなく米軍将校の心をも動かしていく…。



良い戦争映画か悪い戦争映画かでいったら悪い戦争映画になるんでしょうか。
まず、原作小説はアメリカの作家が書いたものらしいですが、事実と創作で構成されてるらしいです。
さらに映画化するにあたって原作から変更された点も多く、そうなると「Based on a true story」というコピーの信憑性っていかほど?…ってなっちゃいますね(笑)

まあ戦争映画ってどれもそういう所あるかと思いますが、この作品の場合、「大場栄大尉のことを米軍では<フォックス>とあだ名していた」という物語の割と主軸の部分すら映画オリジナルで、原作には<フォックス>というのはないそうです(´・ω・`)
もう何をベースにしたのか分からなくなってきませんか(笑)

なんつーか、映画として少しカッコつけたかったんですかね?
そういえば唐沢寿明が演じた柄の悪い日本兵、ジャングル生活の割りには綺麗なスキンヘッドを維持してるし、最期はあんなラスト。
正直「オイシイ最期だなw」と思ってしまいましたが、これ実在した人物ですからとても不謹慎というか失礼な感想ですよね。でもそう見えてしまう。オイシイラストが設定された「キャラ」なんですね…。

一方で、<フォックス>と呼ばれるほどの大場栄大尉の手腕が、存分に描かれてたとも思えないんですね。
フォックスといえばキツネ。狡猾で、人を煙に巻くイメージです。
でも、竹野内豊演じる大場栄大尉は、とても清廉な印象で、ただただ思慮深く思いやりのある上官というイメージ。

どこらへんが<フォックス>なのか分からなかったですね。
これは劇中でアメリカの兵士が付けたあだ名ということになってますが、やはり、ただゲリラ戦してるだけではこんな称号みたいなあだ名は付かないと思うんですよ。
そこのリアリズムが足りなかったですかね。

ただ、映画の言いたいことってのはちゃんと伝わりましたし、雰囲気も悪くなかったですね。
井上真央のギラギラした演技とか意外でしたし、岩場に隠れて米兵がすぐ下と行軍するのをジッと待つシーンはそれなりの緊張感がありました。

「玉砕」とか「死んで護国の鬼になる」とか日本人の死生観とも言えるものに対して、大場栄大尉は「それはちょっと違うんじゃないの」と行動で表したわけですね。
場の空気に飲まれないで、自分なりの考えを持って行動したことで、本来なら玉砕していたはずの47名を帰国させることができたんですから、その事実は揺ぎようもないです。
ある意味で、<フォックス>というあだ名は、当時の軍事国家日本の側から見た場合にこそ、当てはまるのかもしれません。