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クラウド アトラス (2012年、アメリカ)

【ジャンル】
ノンジャンル/ドラマ/SF/ファンタジー
【監督】
ラナ・ウォシャウスキー
トム・ティクヴァ
アンディ・ウォシャウスキー
【出演】
トム・ハンクス (ヘンリー・グース医師、アイザック・サックス、ザックリー、他)
ハル・ベリー (ルイサ・レイ、メロニム、他)
ジム・ブロードベント (ビビアン・エアズ、ティモシー・キャヴェンディッシュ、他)
ヒューゴ・ウィーヴィング (殺し屋ビル・スモーク、女看護師ノークス、オールド・ジョージー、他)
ジム・スタージェス (アダム・ユーイング、ヘジュ・チャン、他)
ペ・ドゥナ (ティルダ、ソンミ451、他)
ベン・ウィショー (ロバート・フロビシャー、デニーの妻、他)
ジェームズ・ダーシー (ルーファス・シックススミス、他)
ジョウ・シュン (ユナ939、ザックリーの妹、他)
キース・デビッド (ジョー・ネピア、アピス将軍、他)
デビッド・ギヤスィ (オトゥア、他)
スーザン・サランドン (アーシュラ、アベス、他)
ヒュー・グラント (ロイド・フックス、デニー・キャヴェンディッシュ、リー師、他)

あらすじ

満天の星の下である老人は、時空を超えたいくつもの物語を語りだす。1849年、奴隷売買の契約を終えた弁護士ユーイングは、船旅での帰路の途中、脱走して密航していた黒人奴隷オトゥアに助けを求められる。1936年、無名の若き音楽家フロビシャーは、恋人のもとを離れて作曲家ビビアンの家へ押し掛け、ある曲を書き上げる。1973年、物理学者シックススミスは、原発に関わる陰謀を暴くため、女性記者レイに報告書を託そうとするが……。2012年、作家のスキャンダルで突然大金持ちになった編集者キャヴェンディッシュは、兄に騙され、老人介護施設に監禁されてしまう。2144年、労働力として造られた複製種ソンミ451は、ある日革命家ヘジュ・チャンによって救出され、生まれて初めて外の世界へ出ることに……。そして、地球崩壊後106度目の冬、悪魔の囁きに悩まされ続けるザックリーは、人喰い種族に襲われた義弟を見殺しにしてしまい……。

感想 (2013年3月21日、109シネマズ富谷にて鑑賞)

6つの異なるストーリーが同時進行する複雑な物語。
さらには主要キャストのすべてが複数の役をこなす(一人二役以上)という、大胆な映画的実験もなされた本作。
一見の価値はあると思います。


監督はウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァの3人による合同監督。
主演にはトム・ハンクス、ハル・ベリー。その脇をジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ベン・ウィショーなどが固めます。

ただし、この映画の構成からいって、「主演」とか「脇役」という言葉は不適当かも。
6つの物語すべてで主役は別の人が演じています。
そして1849年の物語で主役だった俳優が、1936年の物語ではエキストラ同然の端役だったりというように、物語によってその俳優の扱われ方も様々。

で、さらに、男性俳優が女性の役で登場したり、特殊メイクでまったく別人になってたりするので、見る方はもう大混乱。
エンド・クレジットで主要キャストの変装っぷりが披露されるんですが、それを見ても「えっ……」っていう(笑)


物語は6つのオムニバス映画を並べて細切れにした後、上手くつなげて1本のフィルムにしたような感じ。
一つのシーンが終わると違う時代のシーンが始まるんです。

一つ鑑賞のための予備知識として、「流れ星のアザ」というのがあります。
各ストーリーの主人公の体のどこかにこのアザが付いていて、それが一つの目安になってます。
流れ星のアザが付いてる人は同じ魂を受け継いでいるって感じでしょうか?
ただ、それがベン・ウィショーだったりペ・ドゥナだったりトム・ハンクスだったりして混乱するわけです(笑)

物語の内容もそれぞれ様々で、白人と黒人奴隷の交流を扱った話、ある若き音楽家の悲恋、原発の陰謀に関わるサスペンス、老人ホームから脱走を企てるちょっと愉快な話、見せかけのユートピアに革命をもたらそうとするSFストーリー、そして誇りを失った村の男が悪魔の山を目指す物語……。
いろんなジャンルの話がミックスされているんですよね。ジャンルを飛び越えた映画です。
(生まれ変わりという点でファンタジーっぽいかなあ、と思ってファンタジー映画の書庫に入れときました)

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生まれ変わり(=輪廻思想)や前世や来世といったセリフがあるので、手塚治虫の「火の鳥」シリーズを思い起こす人も多いみたいです。
でも、個人的には「火の鳥」よりも難解だと思うんですよね。

6つの話が同時進行しているといっても、物語自体はけして難解なわけじゃないんです。
物語が切り替わっても焦燥感や緊張感が途切れないように、6つのストーリーを巧く編集していますし。
終盤の見せ場では、物語が切り替わりながらだんだん盛り上がっていくという場面がありました。

なので、けして脳ミソフル回転じゃないと楽しめないわけではないんです。
感覚に訴えるエンタメとしては充分機能していますので。

でも、それがセリフや行動の「意味」となってくると、かなり難解になってきます。
この物語が「火の鳥」のような輪廻転生と因果律を扱っているとすると、セリフや行動が後の時代の主人公たちのセリフや行動に関わってくるはずなんですが、そこまで読み解くのは一回の鑑賞ではちょっと無理ではないかと……。

まして、役者が同じならその因果も分かりやすいんですが、流れ星のアザを持った主人公たちのように役者が変わってるわけですからね……。
例えば、崩壊後の世界でザックリー(トム・ハンクス)が悪魔に悩まされるというのが、1849年に医師グース(ハンクス)が酷い悪事を働いた事とリンクして、観てる間は「前世の過ちを来世で償ってる」ように見えます。
けれど、流れ星のアザを持っているザックリーの前世はグースではなく別の人物です。
つまり、1849年と崩壊後の世界で登場する2人のトム・ハンクスは、関係の無い(薄い)存在ということになります。

これがこの映画をややこしくしている要因で……。
どうやら一つの魂を継承しているらしい主人公は、それぞれの時代でまったく違う役者が演じている。
それに加えて、ある時代で主人公を演じた役者が別の時代では主人公の周りにいる脇役として登場してしまう。

よって、雰囲気としては何か感じるものがあっても、実際それぞれの時代の言葉や行動がどのように他の時代に作用していったのかを考えると、全然わけがわからないんですよ。
どこかで詳しくネタバレしてる所ないかしら?(笑)(相関図的なものを)

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そんなわけで、来世信仰や輪廻思想といった東洋的な題材だと紹介されがちですが、これって作中で言われているとおり「永劫回帰」について描かれた、むしろ西洋で生まれた思想に基づいた作品なのかも。
永劫回帰とはドイツの哲学者ニーチェの思想の一つで、「無限の時間の中で有限の物質を組み合わせて世界が作られるならば、無限の時間が過ぎる中でまったく同じ事象が起こってもおかしくないよね?」っていう考え方らしいです。

それに基づいて考えると、確かにこの映画は6つの時代・6人の主人公のてんでバラバラの物語を描いていますが、どこかそれぞれの時代には共通する想いであったり、何かとの闘いというものが描かれているような気がします。(それを言葉で説明しようとするとまったくできないわけですがw)
それはニーチェの永劫回帰のように「まったく同じ出来事」ではないですけれど、いつの時代でも人間が繰り返してきた想い・闘いなのかもしれません。

それを裏付けるシーンとして、未来世界の登場人物が語った言葉がまるで過去の別の人物に影響を与えたかのような描写があります。
前世の経験が来世に影響するとするならこの描写はおかしいですね。
輪廻転生は前世の行いが来世に影響するという考え方。
永劫回帰はたとえ生まれ変わっても同じ行いをするという考え方。
この二つは似て非なるものなんですね。


まあとにかく難解なので、一回の鑑賞ではどの役者がどの役を演じているかだけで頭がいっぱいになります。
二回三回と見ることで各登場人物に与えられた「意味」についても分かってくるんでしょうね。
数度の鑑賞に耐えうる哲学的な大作映画だと思います。





鑑賞の参考になりそうな画像を見つけたので貼っときます。
横軸が時代、縦軸が善人か悪人かを表してるみたいですね。
どの役者がいつの時代で誰を演じているかが一目瞭然!
でも、何故かベン・ウィショーだけいないけど……。

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