ご近所バトルの話。(ではない)
前回の「チェンジリング」に続いてイーストウッド監督作品を鑑賞。
「チェンジリング」と比べるとかなり明るく、思わずクスリと笑ってしまうシーンもあり、時折ホームドラマ的な感じもする。
でも、掘り下げれば掘り下げるほど掘り下げ甲斐がありそうな、「深み」を持った映画。
面白いのは、「インビクタス」が人種問題をスポーツでクリアにしていく話だったのに対し、
「グラン・トリノ」は人種間の偏見やいがみ合いを解消せずに友情関係が築かれていくところだ。
主人公ウォルトの口の悪さは一級品だが(時には笑いさえこみ上げる)、少年タオとの交流をとおして穏やかになるわけでもない(笑顔は増えたようだが)。
あの年代のアメリカ人男性に、骨まで染み込んだ気質なのだろう。
人生の幕引きについても興味深かったが、ややカッコつけすぎな気もする。
監督には人生の大先輩として、虐げられても報復はせずに堅実に生きていく姿を示して欲しかったけれど。
結局、報復する気は無かったにしても、あの命の投げ出しっぷりは、ちょっと疑問。
モン族の一家との交流で手に入れた「安息」、医者から宣告されて悟った「死期」、スーが報復にあって感じた「怒り」あるいは「失望」。
これらがどのように絡みあって、いや、ウォルトはどれに一番比重をおいたのだろうか。
銃を向けなかったことから、「怒り」にとらわれて我を忘れていたわけではないようだ。
一方的に攻撃されたのは「死期」に絶望していたこともあるのではないだろうか。
だとしたら、「安息」は最期まで生き抜くことの理由までには至らなかった?
「死期」を意識し始めた老人の考えは、ウォルトに限らず、僕にはよく分からない……。
何はともあれイーストウッドの顔は好きである。(しかめっつらが特に)
というか、老人の顔は見ているだけで良いものだ、と思う。
若い神父の顔は、エンジェルのようであった。そういうところも笑いを狙ってるのだろうか。
欲を言えば、話のキーになっているグラン・トリノをもっとじっくり見せて欲しかったことだろうか。
DVDの特典映像でようやく外観や内装を確認したのでは、遅すぎる。
話の展開も、グラン・トリノで充分なのにクライマックスでシルバー勲章が割り込んできてしまっている。
あと容認できないのが、冒頭の、教会の建物を捉えたショットの短さ。ほんの一瞬で短すぎる。
「チェンジリング」の冒頭の風景が素晴らしかっただけに落胆は大きい。
一言:やっぱり、Yahoo!映画の★4.5は過大評価だと思う。
★★★☆☆
グラン・トリノ/Gran Torino
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、グラン・トリノ
配給:ワーナー・ブラザーズ
2008年、アメリカ
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