カムイ外伝

監督・脚本:崔洋一、脚本:宮藤官九郎、音楽:岩代太郎、主題歌:倖田來未
出演:松山ケンイチ、小雪、伊藤英明、佐藤浩市、小林薫
これだけの才能が集まっていながら、なぜか空振りに終わってしまった霞切り・・・。
世間の皆様はどう感じたか分かりませんが、私の個人の感想を言わせてもらえばツマラナイ映画でした。残念ながら。



当初は「TAJOMARU」を観に行くつもりだったのですが、昼ごろ行ったら長蛇の列だったので、なんか萎えまして(普段は空いてる映画ばかり見てるしねw)隣接するゲーセンで時間つぶし。
結局、TAJOMARUに間に合わなくなってしまって(アホw)上映時間が少し遅れて始まる「カムイ外伝」のチケットを購入。15時ころで列は無かったですが、実際に開場されると両隣「人」前方「子供」という混み具合。
「公開されて間もないからな~」と思っていたら、下の方から制服姿の女子高生が二人、階段を上がってきた。
「レディースデイだったか~!」それもコミの混み具合。



中身のほうなんですが、「ハードボイルド忍者アクション」とでも言える内容です。
人を信じずに生き抜いてきた抜け忍カムイが、人とのふれあいの中で人を信じる心を取り戻していきますが、やはり抜け忍であることが仇となって、すべてを失ってしまうという哀しいお話。簡単に言うと。

この手の話って、私はけっこう好きなんですよね。本当は。
大好きな姫のために頑張る武将の話とかよりも全然面白そうなんですよ。
基本、「恋愛が中心に世界が回ってる」作品は嫌いなので、カムイ外伝のような「愛情」を描きつつも甘ったれたもんじゃない、というスタンスは好感が持てます。

のハズなんですが・・・、ハードボイルド路線が好きでけっこう見てるがゆえに、もう飽きちゃった感も否めないのです。
「カムイ外伝」の本伝「カムイ伝」が始まったのが1964年。40年以上前ですよ。
それから、お休みの期間も含めて何十年にも渡って描かれてきた作品です。
当然、多くの人が目にし、手に取り、ある者はそれにインスパイアされて漫画家になり・・・。
「カムイ外伝」の影響を受けた作家たちが、そういう路線の作品を作り、それに感動した若者たちがまたそういう路線の作品を作る。
そうやって、何度もリヴァイバルされてきた「そういう路線」の現代の作品を私は手にとって読みます。
だから、いまさら何十年も前の漫画を映画化されても、たいして驚きもしないのです。

「何十年も前のマンガを映画化」した作品では最近、手塚治虫の「MW」がありました。
こちらは、当時SFとして描かれたこともあり、現代に置き換えてもまったく新しい目で見ることができました。
監督の演出・脚色によるものなのかどうかは、「MW」も「カムイ外伝」も原作を読んでないので分かりませんが。

「最近のマンガを映画化」したものに「20世紀少年」があります。今まさに大ヒット公開中って感じですね。
こちらもやはりSF。SFはそれなりに売れるということでしょうか?

確かに、時代劇よりもSFの方が派手だし、新しい観念や物事があって、興味をそそられます。
時代劇は結局は斬り合い、侍や忍びという戦闘職が物語を終結させる、というパターンから抜け出せないですし。
何年か前に「shinobi」(オダギリジョーと仲間由紀恵の主演)というやはりマンガを原作にした忍者映画がありましたが、どんなに奇抜な衣装やメイク、斬新な殺陣やCGを駆使しても、過去の日本人(日本文化)が持っていた「土臭さ」は絶対に消せないのです。「時代劇」である時点で。
そういう「土臭さ」こそ邦画の醍醐味だ、と言われればそれまでですけど、若者はもっと「スタイリッシュな時代劇」を見たいと思っていると思います。

じゃあ、果たして「TAJOMARU」はスタイリッシュなのだろうか?
それとも「恋愛を中心に世界が回る」映画なのだろうか?
あ~気になる。
「TAJOMARU」も芥川(だっけ?)の原作の「映画化」ですよね。
オリジナルの企画を持ってくる映画人は日本にはいないのか?
何十年前の作品を今更作ってどうする気だ!と叫ばずにはいられない欲求不満な私。



「20世紀少年」の原作者(という呼び方自体おかしいと思うが)の浦沢という人が、こないだNHKでこう言っていた。
「マンガや小説が映画化される時に、まるで映画がエンターテイメントの最高峰みたく言われるけれど、それが気に食わない」みたいなことを。
結局、「映画化」で作った映画なんて、本来の製作者(つまりは原作者です)が何年もかけてコツコツ作ってきた作品を、TV局から金もらって100人スタッフ雇って半年で作った2時間程のダイジェスト版に過ぎないんだよね。
原作読んでる時には誰も「映画化されたらなぁ」なんて思ってないのに、「待望の映画化」とか言って、みんなの知ってる作品や知ってる作家の名前を持ち出すんだ。
だからみんな観る。逆に言えばそれ以外の映画は売れない。

こういう批判的な気持ちを持ちながらもこれからも映画観続けます。
話が大きくずれてる気もしないではないですが。



アクションについては「激しい!・・・激しい?」という感じ。意味不明かもね。
あからさまなワイヤーアクション、崖を上るマツケンのCG、手裏剣飛んでくるとすぐスローモーション。
でも、生身の殺陣は文句無し。NHKの土曜時代劇がお遊戯に見えます。
ただし、アクションシーンが多すぎる。戦ってばっかり。

CG・・・CGはもはや時代劇でも欠かせないものとなったのだろうか?
鹿、サメ、海、いろんなものがCGで表現されておった。
是非は問わないが、CGだと気づくレベルだった。
必殺技(分身)の絵は面白かった。あそこはスバラシイ。

佐藤浩市と土屋アンナ・・・出る必要があったのだろうか?
物語に関わってくることはくるが、残忍な殿様の性格の描写までは必要ではなかった。
原作を脚色することをよしとしなかったのだろうか?
でも、観てる側は「このバカ殿も殺せ」と思った。しかし、映画はそれをしなかった。
非常に不快である。
カムイはまたすべてを失ったのに、それどころかカムイのあずかり知らぬところで暴君が好き放題やっているのである。
映画が終わった後も。非常にもどかしい。

伊藤英明・・・母校が同じw関係ないが。
彼は両腕切り落とされるけど、他にもけっこうグロいシーンが沢山あった。
前の席が親子連れだったんだけど、小学生に見せる映画ではないな、この作品。
ストーリーも勧善懲悪ではないし。
世の中クソだと教えたいなら見せてもいいかw



結局「カムイ外伝」の私の評価は以下のような感じです。
「カムイ外伝」>「shinobi」
「カムイ外伝」<「MW」
「カムイ外伝」<「南極料理人」
「カムイ外伝」>「宇宙へ。」
「カムイ外伝」=「ラストブラッド」
「カムイ外伝」<「あずみ」
最後はハッピーエンドがいいな。やっぱり。そう思います。

つーか「宇宙へ。」以外、全部「映画化」じゃねえか。
とにかく、もう人の作品でお金稼いじゃダメです。