感動器官

笑い、涙、鳥肌、私たちの感動を現出させる器官。

2015年04月

未来世紀ブラジル

未来世紀ブラジル(1985年/イギリス)
【監督】
テリー・ギリアム
【キャスト】
ジョナサン・プライス
キム・グライスト
ロバート・デ・ニーロ
キャサリン・ヘルモンド
イアン・ホルム
ボブ・ホスキンス
マイケル・ペイリン
ジム・ブロードベント
感想(2015年3月26日、DVDにて鑑賞)
傑作SF映画としてしばしば名前が上がってるのを記憶していた作品。
欠陥だらけの未来社会を舞台にした奇想天外なファンタジーという印象を受けた。
まるで虚構みたいな毎日の中に現れたファンタジーを追いかけてしまった主人公の物語。

謎の配管工役で登場するロバート・デ・ニーロが面白い。
というか、勝手に修理することで体制に反抗するアンチヒーローになってしまう、そういう世界観が面白い。
ラストも皮肉が効いていて良かった。

あと、タイトルの由来になっている挿入曲「ブラジルの水彩画」が全編を通して流れ、牧歌的なディストピアを演出していたと思う。
邦題はそれに「未来世紀」を付け足したわけだが、さすがに「ブラジル」だけではイメージ合わなさすぎる。
デモ曲にとりあえず付けた仮のタイトルをそのまま採用したような原題だと思った。

パンチライン 第3話

パンチライン
第3話「火星人、襲来!」
感想
第2話で失速したと思ったら3話で再加速。
前回がいととラブラの日常を描きつつーならば、今回は明香の秘密が明かされる回だった。

その他にもいろいろ要素が出てきたのでまとめとく。
  • 地球に接近している小惑星VR1。
  • VR1が地球に衝突する可能性はないとする政府発表はウソだと主張するQ-may会。衝突予定時刻は12月31日23時55分
  • 遊太の肉体を乗っとったのは死んだQ-may会の教祖・壺内Q冥?(根拠は?)
  • 謎の男に狙われた子熊のムヒは怪我をするも超回復力を発揮。
  • お助けマン「宮沢賢治」初登場。(おいw)謎のパワーアップを遂げて去る。
  • 明香は実は◯◯ッ◯だった!
  • 天華博士が予見した未来。秘密部隊「ジャスティスパンチ」とは。

Q-may会は人類滅亡を目標に掲げる狂信集団というのが世間の認識らしい。
ならば、Q-may会にとってVR1の衝突は願ってもないことであり、黙ってれば大勢の人々と共に滅亡できるはず。
しかし、わざわざ権力者の欺瞞を暴こうとしているのは別の目的があるのか?

本当はやはりVR1は衝突せず、Q-may会は大衆を煽って混乱と勢力拡大を狙っているだけなのだろうか?
しかしそれでは遊太がトリガーとなって引き起こされる地球滅亡の説明が付かない。
そもそもVR1の衝突と遊太のコーフンにどんな関係が(笑)

Q-may会教祖・壷内Q冥とは古風な名前だが、第1話の白髪の青年がそれかな。
しかし、破滅信仰教団の教祖が平凡な高校生・遊太の身体を乗っ取る必要が分からない。
そして乗っ取った身体で何をするつもりなのか。これも謎。

ムヒはただの動物マスコットではなかった件。
こちらもただのクマではない模様。
ミリタリーな装備に身を包んだ謎の男に狙われる。間違いなく重要な存在。

そして、謎の男を撃退した謎の男(笑)
これは声から主人公・遊太自身なのでは、と思った。
幽体という限定条件でタイムスリップが可能な世界観だし、未来からやってきた自分じゃないだろうか。
ムヒが襲われる過去を変えるために来たとか…。
ただ、既に幽体でなかったことから、どんな経緯があるのか。それはこれから描かれていくんだろう。(こういうのを「謎が謎を呼ぶ」というんだろうか?)

そして一番衝撃的だがサラッと明かされた明香の(お腹の)秘密。(ウランちゃんだ!)
みかたんが「メカえも〜ん!」って言ってたのは「いろんなメカに強くてドラえもんみたいだから」ではなく、まんま「ロボットだから」だったという…。

人間と遜色ないアンドロイドとか、おじいこと天華博士の技術力がハンパないのだが、それよりも気になるのは博士の未来予知。
世界を救う正義の部隊「ジャスティスパンチ」の結成を予見し、そのためにみかたんをサポートすることを明香に使命として与えたわけだが、博士がまるで見てきたかのように断言していたのが気になった。
もしかすると天華博士は未来人?

「ジャスティスパンチ」…。
キービジュアルの第2弾、遊太を初めとして古来館の住人が描かれているもの、あれがジャスティスパンチとしての描写なのかなーなどとちょっと思った。
うーんしかし謎が多すぎる(笑)
第5、6話あたりから物語が大きく動くらしいけど、どう回収していくんだろう。
キレイにまとまったら凄いことになりそうな気はする。

GWに観たい映画は...

個人的に気になっているのは、いよいよ公開される「パトレイバー 首都決戦」。
皆さんはどの映画が気になっていますか?
よかったら投票してみてください!

ミルカ

ミルカ(2013年/インド)
【監督】
ラケーシュ・オムプラカーシュ・メーラ
【出演】
ファルハーン・アクタル
ソナム・カプール
ディヴィヤ・ダッタ
アート・マリク
ジャプテージ・シン
パワン・マルホトラ
プラカーシュ・ラージ
ヨグラージ・シン
感想(2015年3月25日、フォーラム仙台にて鑑賞)
実在の陸上選手ミルカ・シンの半生を描いた伝記映画。
感動巨編に相応しくユーモアは控えめだった。インド映画でよく出てくるギャグ担当の脇役などはいない。

ただ、お上品にもならずに貧困から立ち上がる若者の姿をアグレッシブに描いている。
まるで「かっこいいだろ?」って言ってるようなベタな演出がいかにもインド映画らしい。
実際、劇伴でメタルが流れたりするのだが、ストーリーにメタルやロックは1ミリも関わってこない(笑)

冒頭の1960年ローマオリンピック400m決勝で、走っている最中に何故か背後を振り向き4位に落ちてしまったミルカ。
そしてその後、インド・パキスタンの親善試合への参加も彼は拒否してしまう。
コーチやスポーツ担当相が説得を試みる中で、ミルカの軍隊時代のコーチが彼のトラウマとなっている悲しい過去を語るという構成。
それは1947年のインド・パキスタン分離独立に端を発していた。

民族虐殺がトラウマとなり、その後も貧しい環境で差別やいじめにあってきたミルカ。
しかし、走ることに価値を見出し、不屈の精神で成功への階段を駆け上がっていく姿が描かれる。
純粋にサクセスストーリーとして爽快だし、民族間の憎しみを乗り越えていくという深いテーマでもある。

演出は多少ベタだが、それはインド映画の場合、魅力となる。
見応えのある伝記ものだった。

余談だが、主演のファルハーン・アクタルが池内博之に似てる。

パンチライン 第2話

パンチライン
第2話「生類憐みのレース」

感想

いろいろ気になる内容だった初回に比べて、2話はいきなり失速した感じ(笑)
エセ霊媒師ラブラの悩みと引きこもりゲーマー・愛(いと)の隠し事を通して、アパートの住人たちの日常を描くことに終始したような感じだ。


いとちゃんのバカっぷりがけっこう衝撃的で、おとなしめの頭脳派ぽい可愛いイメージが崩れた(笑)
動物を愛する良い子という別の一面も可愛いかったが…。

一緒になって騒いでいたみかたんは、訛りが入るとバカかわいい。
青森の出身ということだが、訛ってても何言ってるか聞き取れたということは津軽弁ではないようだ。

今回は、主人公・遊太とラブラの過去の会話や、遊太といとちゃんのやはり過去のやりとりなども明かされた。
遊太の部屋はかつて彼の姉が住んでいたことや、ラブラと姉が友人であること、いとと遊太はオンライン・ゲームを通して知り合ったことなど。
いとちゃん学生なら「ヒキオタニート」のニートの部分はちがうのでは、とかちょっと思った。

今後の展開につながるような伏線はちょっと見られなかった。本当に日常回で楽しんでね、って感じだ。
もし、いとちゃんの期限付きペットが今後重要になるのならすごいと思うが…。

機動警察パトレイバー the Movie

 

機動警察パトレイバー the Movie(1989年/日本)

【監督】
押井守
【キャスト】
古川登志夫
冨永みーな
大林隆介
榊原良子

感想(2015年3月23日、DVDにて鑑賞)

初期OVAシリーズの直後に公開された劇場版アニメ。
調べたらこの劇場版第1作の後にTVシリーズがあるようだ。

初期OVAでは一部のオタクくらいしか見てないだろうから、知名度的にはあまり知られてない状況でのオリジナル劇場版ということになるのだろうか。
TVシリーズからの劇場版が定着した最近のアニメ界では考えられないことだけど、実際のところはどうだったんだろう。
初期OVAと同時期にゆうきまさみによる漫画も展開を始めているので、やはり劇場版の公開前から人気だったのだろうか。

作品は押井守監督のカラーが出ていて、当然のように丁寧な説明は無い。
OVAや漫画に触れていた者は人間関係など分かるんだろうけど、私はよく分からず…汗
でも、その難解さも押井作品の魅力の一つだと思う。説明セリフが無い分、リアル感が増すのだと思う。

物語は、レイバーの暴走事故を追っていた特車二課が、レイバーのOSにウイルスをしかけた黒幕の陰謀を知り立ち向かうというもの。ざっくり言うと。

ヒロイン・泉野明が、自分が愛用するレイバーも暴走するんじゃないかと心配するシーンが可愛かったが、正直あまり出番が多いとも言えない。
それよりは、レイバーのシステムを調査する篠原遊馬と、遊馬を裏から操る後藤隊長が目立っていたかな。
後藤隊長は正直キレ者すぎて黒幕より怖いと思ってしまった(笑)

アニメーションの制作はスタジオディーン。
制作スタッフには、監督・押井守を始めとして、音楽・川井憲次、メカニックデザイン・出渕裕、作画監督・黄瀬和哉と、思わず「ふええ〜…」と声を上げてしまうメンツが揃っていて、冒頭のクレジット見てるだけでもかなりテンションが上がった。

宇宙人王さんとの遭遇

宇宙人王さんとの遭遇(2011年/イタリア)

【監督】
アントニオ・マネッティ
マルコ・マネッティ
【キャスト】
エンニオ・ファンタスティキーニ
フランチェスカ・クティカ
ジュリエット・エセイ・ジョセフ
アントネット・モローニ

感想(2015年3月19日、DVDにて鑑賞)

翻訳の仕事をしている女性が目隠しをされて連れて来られたのはどこかの地下施設。
彼女は中国語を話す宇宙人、通称「王さん」の取り調べに立ち会う。
当局の責任者による非人道的な尋問に苦しむ王さんに同情した彼女は、彼を連れて脱出しようとするが…。

どこにあるかも分からない閉鎖された空間で進むワンシチュエーションもの言える内容であり、けっこう尋問シーンが長々と続く。
というか、話が前に進まない。
「地球を侵略に来た」と王さんに言わせたい当局責任者キュルティと、なじられても電流流されても「友好のために来た」という主張を覆さない王さん。
その押し問答が長々と続く。

通訳として雇われた民間人・ガイアは、最初は宇宙人との遭遇に驚愕するも、王さんの真摯な態度に共感し彼の手助けをしたいと考えるようになる。
通訳せずとも伝わるような剣幕で発せられる罵倒の言葉と、愚直なまでに平和を訴え逆にキュルティを意図せず煽ってしまう王さんの言葉に挟まれ、フランチェスカ・クティカ演じるキュートな通訳も徐々に疲弊していく。
通訳って頭使う仕事というのが表情からも伝わってくる。

中国語を話す宇宙人が拷問される内容が公開当時は論争を巻き起こしたそうだ。
発展めざましい中国への危機感が表されているのか、中国人への差別意識が反映されたものなのか…。

ある意味では、異文化とも呼べるほど考えの違う他者との交流の難しさを表現している。
この場合、異文化とは人間側、宇宙人を敵対者としてしか見られないキュルティのことだ。
質問という体裁をとっているが答えはすでにキュルティの頭の中に用意されたものしかない。
それの裏付けとして言葉を引き出そうとしているにすぎず、王さんは自らが侵略者であることを認めない限り拷問から解放されない。
そして侵略者であることを一度でも認めれば、その先に待っているのは死だ。

他者を信じることの困難さもこの映画は描いている。
信じて裏切れられるよりも、疑って攻撃していっそのこと排除してしまった方が安全だと人は考える。
裏切られない保証を求めたりもするが、そんなものはなく、一度浮かんだ疑念は拭い去ることは困難だ。

宇宙人との異文化コミュニケーションが下敷きにある作品だが、ラストまで見ると意外にも王さんは人間的であることがわかる。

パンチライン 第1話


パンチライン
第1話「パンツパニック」

【監督】
上村泰
【キャスト】
井上麻里奈
雨宮天
釘宮理恵
寿美菜子
戸松遥
吉田有里

感想

今期はこのアニメについて感想書いていきたいと思います。
今までアニメレビューしてきた中では一番過激な内容になりそうなのでご容赦ください(笑)
冬アニメの「冴えヒロ」もノイタミナらしからぬ内容だったけど、春が来てさらに輪をかけた作品が…(笑)
ノイタミナ的にはこれでいいのか?(面白いけど)



監督は上村泰。未見ですが「ダンタリアンの書架」に続いて2作目の監督作品。
制作はMAPPAで、ノイタミナアニメ「残響のテロル」で作画クオリティの高さを見たので期待できそう。

そして音楽はなんと小室哲哉。
かなりクールな劇伴だったけどよりにもよってこんなおバカなアニメじゃなくても…(笑)
主題歌は中川翔子とでんぱ組.incのコラボユニットが担当。

原作はゲーム制作・音楽事業などのMAGES.とフジテレビとなっており、もともとはゲームの企画だったものを先にアニメ展開することになったらしい。
それで、主人公が「ゲームみたいだ」と言っているようにまるでRPGみたいな展開になっている。
事態を打開するレアアイテムを手に入れるためには、霊体レベルを上げて実体化能力を鍛えなければならない。
実際のゲームはアドベンチャー系になるのかな?


キャラクターの名前も漫画チックで…、
正義のヒーロー「ストレンジジュース」に変身するヒロイン・成木野みかたん(なるぎの みかたん)は音読みで「正義の味方」。
引きこもりゲーマー腐女子・曳尾谷愛(ひきおたに いと)は「ヒキオタニート」(引きこもり・オタク・ニート三拍子そろった人のことらしい)。
天才発明家としてストレンジジュースをサポートする台初明香(だいはつ めいか)は「大発明家」とその役割を表し、ギャル系インチキ霊媒師・秩父ラブラ(ちちぶ らぶら)は「乳ぶらぶら」ということで巨乳担当らしい。


主人公・伊里達遊太(いりだつ ゆうた)はしばらく分からなかったが、名前と苗字をひっくり返すと「ゆうた・いりだつ」となり、第1話で幽体離脱してしまう彼の運命を表わしている。
あと、幽霊猫のチラ之助がマスコット的存在になるのかな。同じ幽体として遊太にアドバイスする。当然アニメなので喋る。語尾に「ら」が付くら~。


第1話は主人公に起こった大事件と彼が引き起こす災厄を描いて、同時にヒロインたちの登場も済ませる構成になってた。
第1話からヒロイン全員のパンツを披露するというタイトルに恥じない内容。


女子のパンツを見てしまうと鼻血を吹き出し、それが人類滅亡のトリガーとなってしまう主人公・遊太。
あるバスジャック事件をきっかけにその力を解放してしまった遊太は、何者かに身体を乗っ取られ幽体となってしまう。


しかし、チラ之助は言う、幽体には物理法則が適用されないので時間を遡ることもできるら~、と。
遊太は過去へと戻り、自分の身体を取り戻すために聖典「ナンダーラガンダーラ」を手に入れようとするが、それには前述のゲーム的な手順を踏んでいかなければならないようだ。


そして、その過程で出くわす幸運なシチュエーション。
ラッキースケベ体質の遊太は何度も女子たちのパンチラ(あるいはパンモロ)と遭遇し、その度に滅亡する世界を何度も過去に戻ってやり直すことになる。
遊太は最高にハッピーでピースフルな未来を掴むことができるのか…。


まあ、エッチでおバカなアニメだけど気になる伏線がけっこう散りばめられていたので今後の展開が気になる。

まず、バスジャック事件を起こした謎のテロ組織「Q-may会」。
これも言葉遊びで多分「救命会」、つまり人類を救おうとしているのか…。ネット上の考察にそんなことが書いてあった。
明らかに重要人物っぽい白髪の美少年(青年?)は、遊太と川に落ちる際に何かを呟いている。

そして川に落ちて沈みゆく遊太を救い上げた2人の子供たちは…。
時間跳躍がありうる世界観なので、髪の毛の色からみかたんと遊太と思うのだが、服装はまるで研究施設の実験体のような…。(←アニメの見過ぎ)

時間をゲームオーバーから何度もやり直せる能力と、物理法則を無視できる幽体設定。
これらの要素が今後このアニメをただのパンチラアニメではない傑作にしてくれそうな気がする。
もちろんただのパンチラアニメで終わったとしても、みかたんがカワイイので全然OKなのだが(笑)


四月は君の嘘



四月は君の嘘

【監督】
イシグロキョウヘイ
【キャスト】
花江夏樹
種田梨沙
佐倉綾音
逢坂良太
早見沙織
梶裕貴
茅野愛衣

感想

昨年10月から今年3月まで2クールに渡って放送された青春音楽アニメ。
制作はA-1 Pictures。イシグロキョウヘイはこの作品が初監督作となった。

原作は新川直司の同名漫画で、そちらも今年3月に連載が終了。
連載中の人気漫画とアニメがほぼ同時期に完結する、というのはそれだけで話題になりそうだけど、最近の漫画・ラノベ関係の瞬発力のあるメディアミックス展開を見てるとこういうのはこれからも増えていくのかも。

ただ、中には原作ライトノベルが人気だからとりあえず1クールだけアニメ化して、続きは原作で…、続編アニメ化は未定…みたいな見切り発車としか形容できないメディアミックスもあるので、原作が人気だからといって拙速にアニメ化するのはどうかと思う。
あっという間に消費されてすぐに忘れ去られるようなのはごめんだ。話がそれた。



■青春、音楽、難病もの

かつて天才少年ピアニストとして知られていながら、母の死をきっかけにピアノが弾けなくなってしまった有馬公生。
モノトーンの日常を送っていた14歳の春、公生は同い年のヴァイオリニストの少女・宮園かをりと出会う。
かをりの奔放な演奏に触れた公生は、自分の世界がカラフルに色づき始めたことに気づく…。

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青春と、音楽と、難病…。エンタメの鉄板とも言える要素を3つも盛り込んだ王道を行く作品である。
逆にこれだけの要素が揃っていて、漫画・アニメと話題になっているにも関わらず、まだ実写化の話が出ないことが不思議なくらいだ。(難病ものの邦画とか、一時期は毎年のように作られていた気がするけど)

主人公・公生はナイーブな文化系ながらも、まあまあカワイイ幼なじみ椿と、サッカー部のチャラい友人・渡に囲まれて日々を送っている。(この時点でリア充の臭いがプンプンしてるとか言わないw)
そんな彼が出会ったのは金髪ロングの美少女ヴァイオリニスト・宮園かをり。肩書の上品さとは真逆の、奔放で暴力的で表情が目まぐるしく変わる少女に公生は一目で恋に落ちる。

しかし、それは叶わぬ恋だった。
渡のことが気になるというかをりを椿が渡に引き合わせ、公生はその現場にたまたま居合わせただけにすぎない。
14歳の春の劇的な出会い。しかし、「友人A」として認識される所から公生とかをりの関係は始まる。

だが、物語はすぐに動き出す。
演奏者という同じ境遇が公生とかをりを無関係では居させない。
ピアノを封印したピアニストと、彼にもう一度ピアノを弾かせてみたいヴァイオリニスト。
かをりは持ち前のバイタリティと強引さで、公生を再びコンクールの舞台へと引きずり出す。

そこで公生が感じたもの…。それを得るために公生は再びピアノに向かいあう。その傍らにはかをりの姿。
同じ時間を共有し始めた2人を見て、公生に淡い想いを抱いていた椿は困惑する。
そして公生は、渡に遠慮してかをりへの想いを心にしまいこんでいた。

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…と、こんな恋愛模様を見せられて青春の切なさ儚さ感じないはずがないだろうと(笑)
放送開始当初は良い意味でドロドロの四角関係が見られるもんだと思っていた。
これで面白くならないはずはないだろうという確信があった。

実際その通りだったけど、思っていたよりもおとなしくまとまっていた(ドロドロはなかった!)のは、主人公たちが14歳の中学生だったからだろうか。
見てる最中はまったく中学生には見えないマセた演出だったけど、よくよく考えればキス以上のカンケイには発展していないわけだし。
しかしそれでも、人生でただ一度の大恋愛に立ち会った気になるのは、「今」しかない14歳の少年少女の感情が画面に溢れていたからだろうか。

そして、個人的に思うのは、肉体関係のない恋愛であっても、公生やかをりが自分たちの演奏に求めていたのは、音楽を通して得られる絶頂だということ。
これは、セックスで得られる快感よりも遥か高みの感情だろうと思う。
かをりはそれをストイックに追い求め続ける。公生はかをりの伴奏者としてそれを体感したからこそ、その地平に再び行こうとしてピアノに向かう。

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公生の演奏に影響される人物たちも多く登場し、物語を彩る。
ずっと公生をライバル視してきた井川と相座、公生にピアノを習うことになる相座の妹。
彼らとの競演・共演も見所だった。

特に公生・井川・相座の3人が終盤で見せた関係性は面白い。
ライバルとして認め合いながらも、舞台裏では支え合う存在だった彼ら。
競技者は敵同士であっても支え合い、高め合っていく。

世の中に青春を描いたアニメは数多くあり、アニメファンなら誰もが自分にとっての青春アニメを持っていると思うが、この作品は新たな青春アニメの金字塔となるポテンシャルを持った作品だった。



■停滞する物語

前述の鉄板要素を上手く料理したし、やはり最後は涙なしには見られないような結末だった。
毎回の演出も素晴らしかったし、作画も安定…。
ポテンシャルは本当に高いTVアニメだったと思う。

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↑ポテンシャル高いヒロイン(病弱)

しかし、この作品が傑作や名作かと問われれば、私は否定してしまう。
何故なら単純に乗り切れなかったから。
面白い、素晴らしいアニメだと頭で理解していても、それが感動に結びつかない状態が長く続いた作品だった。

つまりは「飽きた」ということだろう。
クラシックを演奏しながら語られる主人公たちのモノローグ(つまり弾き語り)がとても多い。
Aパートでモノローグ、Bパートでモノローグ。モノローグ、モノローグ、モノローグ…。

これでは食傷になってしまうし、実際私はなったんだと思う。
モノローグに頼った演出。それは原作漫画で言えば白い四角の箱の中に台詞が書かれてるような感じだろう。
そういう情緒に訴えるような演出はこの作品に合っていて、魅力の一つでもあるだろう。
だが、それに頼り過ぎだ。

さらに、主人公がモノローグで語る言葉も毎回あまり変化がないのである。
「今週も切ないモノローグをやってたな」そんな感じである。
物語はたしかに進行しているのだが、演出が同じせいで同じ回を繰り返しているように見えてしまう。終盤なんて話がどこまで進んでるのか分からなかった。

おそらくこのアニメは原作を丁寧に忠実に再現したんだと思う。
だが、月刊誌の構成は月イチで見るから良いのであり、その構成をTVアニメで毎週やられたらどうか?(単行本一気読みでも感動するけど?というツッコミはご遠慮ください)
原作未読なので憶測に過ぎないのだけど、とにかくTVアニメなりの別の構成の仕方があったように思う。

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そんなわけで後半戦に入ってかをりが入院してから(髪色が薄くなってから)は特に物語の停滞を感じるようになった。
前半の山場で公生が母親との問題にケリを付けたせいもあるかもしれない。
問題がひとつ片付き、主要キャラも登場し終わった後に待っているのは、ヒロインとの決着のみだろう。

ただ、そこからもけっこう長い。(まあ半分残ってるから当然)
相座妹の登場、椿の揺れる心、かをりに会うのが怖い公生、本筋に関係あるかないか分からないのも含めて、相変わらず「弾き語り」の演出は毎回のように続く。

そこが面白いというのも分かる。
「青春」を演出する上でベターだと思うし、実際優れた表現だと思う。
ただ、このアニメの場合は、その演出がデフォルトになってしまった。

私はこういった演出はシリーズ通して各キャラクター1、2回、主人公は最初と中盤と最後だけでも良かったんじゃないかと思う。
モノローグはたまにやった方がグッとくるはず。
少なくともAパートでやった後にBパートでもやるようなものではないと思う。



これだけ書いておいて、実際はそんなにモノローグなかった…とかだったら笑ってしまうが。
それはそれで、少ないモノローグで強い印象を与えたということが言えるかな。

いや、たしかにモノローグは多かった。
私の中では「モノローグのアニメ」として記憶に残りそうである。

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最後になったが、私イチオシのキャラクターは椿の友人・柏木さんだったことを書き加えておく。
あの中学生とは思えぬ落ち着き!

博士と彼女のセオリー



博士と彼女のセオリー(2014年/イギリス)

【監督】
ジェームズ・マーシュ
【キャスト】
エディ・レッドメイン
フェリシティ・ジョーンズ
チャーリー・コックス
エミリー・ワトソン
サイモン・マクバーニー
デヴィッド・シューリス

感想(2015年3月18日、フォーラム仙台にて鑑賞)

高名な物理学者スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた伝記映画。
他の学問の博士だったらスルーしてたけど、宇宙物理学ということで鑑賞。
まあ、純粋に予告編が上手く出来ていたということかも。

タイトルにある通り、ホーキング博士とその最初の妻ジェーンの関係を描いた物語。
原題の「The Theory of Everything」よりも「博士と彼女の~」の方が的確だと思う。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、歩くことや話すことすらままならなくなっていくホーキングを、妻ジェーンが献身的に支えていく姿が描かれる。

しかし、時間が進むと物語は不穏な空気を帯び始める。
ジェーンが教会で知り合ったジョナサンは、ホーキング一家の友として親密な時間を送るが、その奇妙な家族の姿はやがて歪みを生じさせる。
父親代わりとしてなら善意だが、夫の代わりとなると話は違ってくる…。

そんなスキャンダラスな時期も乗り越えた夫妻だが、別れは意外にあっさりとやってくる。
それは敗北すると分かっている闘いに長年身を投じ続けたジェーンへの救済でもあった。
なにも一人でホーキングのすべてを愛し抜く必要はない。先発投手として仕事はキッチリと果たした、後はリリーフに任せてマウンドを降りても構わないのだ。

そして、ラストシーンの2人の様子を見ると、そこには紛れもない愛がある。
ホーキングとジェーンをイコールで結ぶ方程式は途中で崩れ去ったが、成り立たなかった式からも「解」は生まれ落ちた。
命という名のその「解」が、逆に2人の方程式の正しさを証明するのかもしれない。

ただ、映画全体はなんとなくジェーンの気持ちで進んでいく気がした。
この伝記映画の脚本は、ジェーンの回顧録を元にして書かれているらしい。
ジョナサンとのこと、ホーキングの下を去ったこと、それらをジェーンの立場から弁解しているようにも見える。

一方で、ホーキング博士の提唱した革新的な理論には、ほとんど触れられていない。
まあ、説明された所で私なんかにはよく分からないのだけど(笑)
なので、やはりこの映画はホーキングよりもジェーンのものなのだと思う。
そういう意味でも「博士と彼女のセオリー」という邦題はピッタリだと思った。

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