感動器官

笑い、涙、鳥肌、私たちの感動を現出させる器官。

2014年01月

【映画】トゥモロー・ワールド



トゥモロー・ワールド
(2006年、アメリカ/イギリス)

【監督】
アルフォンソ・キュアロン
【出演】
クライヴ・オーウェン
ジュリアン・ムーア
キウェテル・イジョフォー
チャーリー・ハナム
クレア=ホープ・アシティ
マイケル・ケイン

あらすじ

2027年11月、世界最年少の少年が死に、世界は悲しみに包まれていた。人類に起こった原因不明の生殖能力の喪失。18年間に渡って子供が生まれない世界は恐慌状態に陥り、多くの国が内戦やテロによって消滅していった。難民が大量に押し寄せるイギリスでは、軍事力による徹底的な抑圧でかろうじて秩序を維持していたが、反政府組織の爆破テロが多発し、日に日に治安は悪くなるばかりだった。そんな中、官僚のセオは、反政府組織のリーダーとなった元妻からある不法滞在者を託される。若い黒人女性・キーは子供を身ごもっており、セオは間もなく出産を迎える彼女と共に命がけの逃避行を開始するが……。

感想 (2014年1月13日、DVDにて鑑賞)

「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン監督が描いた近未来SF。
少子化問題のその先を暗示するような内容ですね。

舞台は、人類が子供を産めなくなってから18年が経った2027年のイギリス。
なぜかある頃から生殖能力が失われ、妊娠し出産することができなくなった人類。
18年も経てば街から子供の姿は消え、TVでは世界最年少だったアルゼンチンの18歳の少年が彼のファンによって刺殺されたなんてニュースが流れている。
その18年の間に多くの国が内乱によって消滅し、英国でも日夜爆破テロが起こるなど、混沌とした世界。

しかし主人公セオはあるキッカケである妊婦と出会います。
それはまだ少女のあどけなさを顔に残している黒人女性キー。
子供の生まれない世界でなぜ彼女は身ごもったのか?
とにかく人類の唯一の希望であるキーとお腹の赤ん坊を守るため、セオとキーの逃避行が始まる……というお話。

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「ゼロ・グラビティ」のキュアロン監督お得意(?)の長回しがこの作品で既に多用されています。
冒頭の、人々がニュースを見守る店内で飲み物を受け取った主人公が、店の外に出てゴミ箱だかの上に飲み物を置いた瞬間、店で爆発が起こるシーンとか。
車に乗ってキーを送ろうとするも、襲撃にあって逃げるシーンとか。
そして終盤の、戦闘の続く市街地を歩くシーンなど。

面白いのは、実は複数のテイクをコンピューターでシームレスにつなぎ合わせ、一つのカットに加工しているということ。
これ繋ぎ目がまったく分からないんですが、技術の進歩はすごいですね!

なんにせよ、長回しっていうのは、画面構成、視点移動など綿密な計画が必要なんですね。
これがあって初めて臨場感を得られるリアルな映像になるんではないでしょうか。



細部にキリスト教の影響を見ることもできます。
キーがセオに妊娠を打ち明ける場所が牛舎。聖母マリアがイエス・キリストを馬屋で出産した逸話と符号しますね。
さらにセオが隠れ家でサンダルにわざわざ履き替えるのも、イエス・キリストを意識したものだとか。
原題の「CHILDREN OF MEN」というのも宗教っぽいですし。(邦題は少子化問題への警鐘の意味を誇張した感じ)

そういう細かいことを知らなくても、廃墟の戦闘を止めてしまった者を兵士や市民たちがなんとも言えない表情で見送る様子は神々しさを感じましたね。

ストーリー的には、「それでその後は?」と気になってしまう人もいるでしょうが、個人的には映像に圧倒されてそれどころではなかったです(笑)




【映画】荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE



荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE
(2012年、日本)

【監督】
飯塚健
【出演】
林遣都
桐谷美玲
小栗旬
山田孝之
城田優
片瀬那奈
安倍なつみ
高嶋政宏
上川隆也

あらすじ

絶対に他人に借りを作らないことを信条とする大財閥の御曹司リクは、川で溺れかけたところを自称・金星人のホームレス少女ニノに助けられる。リクは命を救われた借りを返すため、ニノと共に河童や星など奇妙な住人たちが集まる荒川河川敷で暮らし始めるが…。

感想 (2014年1月14日、TV録画にて鑑賞)

中村光のギャグ漫画を原作とした、2011年に深夜枠で放送されたドラマの劇場版。
原作はさわりだけ読んだ程度、アニメ化は未見、TVドラマも未見でしたが、劇場版はTVの続編ではなくリクとニノの出会いから描かれるので初見の人でも大丈夫だと思います。
ただ、映画として、あるいは2時間ドラマとしてでもいいですが、あんまり面白くはないな…と。

大企業の御曹司リクが荒川河川敷で出会った、不思議少女ニノさん、カッパ、星などツッコミ所満載な住人たち。
彼らとの交流を通してリクは本当の幸せを見つける…という陳腐なドラマが後半メインになってくるんですねこれ。

原作読み切ってないので分かりませんが、どうも映画としてとりあえず観客を感動させなきゃならない…みたいなプレッシャーが作用したんじゃないかと。
大企業の御曹司の出生に隠されたある悲劇、そして彼が河川敷を不法占拠する住人たちと見つけた幸せ…。
そんなベタな感動路線をこのギャグ映画でやる必要はなかったですね。

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見所は、カッパと星のクオリティの高さ?
いっても所詮出オチですが(笑)
見てるうちに「えっ、これって何気にすごく手間かかってねえ?」って笑うどころか感心してしまいますからね。

あと桐谷美玲が安定の可愛さなんですが、そもそもニノさんって可愛くていいのかな?ってちょっと思いましたね。
たまにその可愛さにキュンとくるくらいで、普段は変人の方が勝ってるのがニノさんだと思ってたんですが…。
桐谷美玲のニノさんは常時可愛すぎてなんか違う気がしました。

リクの父親を演じた上川隆也と、その友人で交通大臣役を演じた高嶋政宏。
この2人がフワフワした作品を脇から引き締めていますが正直ムダ遣いです(笑)
小栗旬や山田孝之ら若い世代がアホな役をアホ丸出しで演じるのはいいんだけど、そんなアホ映画で上川隆也や高嶋政宏なんて実力派俳優に真面目に演技させる必要もないでしょうよ(´・ω・`)

それから劇場版だけだと、いなくてもいいキャラばっかりな気もしましたね。
原作齧っただけだしTVドラマも未見なので、河童、星、シスター以外のメンツがもう分からないしあまり出番もなかったし…。(その他大勢扱い?)

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まあやっぱり妙にクオリティ高い河童や星以外に見るべき所もなく、その河童や星にしたって登場シーン見ればそれ以上にインパクトあるエピソードもなく、ある意味キャスティングしてメイクした時点で楽しいとこ終わってる映画なのかもしれないですね(´・ω・`)




「Wake Up, Girls! 第02話 ステージを踏む少女たち」体を張った営業…。アイドルの覚悟を利用するゲスい大人と、暖かい応援をくれるファン。

※この記事には暴力シーンが含まれています。

Wake Up, Girls!
第02話「ステージを踏む少女たち」

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「Wake Up, Girls! 第01話 静かなる始動」劇場版のその後…。未夕なりの仕事の流儀が良い。

Wake Up, Girls!
第01話「静かなる始動」

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【アニメ】ログ・ホライズン 第16話、第17話

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ログ・ホライズン
第16話、第17話

感想

各話ごとにヒロインが明確に分かれていた16話と17話。
アカツキではない、2人の少女が見所でした。(アカツキ最近空気よね…)

毎回、引きが面白くて次回が自然と気になるんですが、結局複数のシーンを行ったり来たりしてるだけで場面転換だけやたら多くてせわしないんですよね。
戦闘回は戦闘回でキッチリ見せてほしいなーという欲も出始めてきました。



第16話「ゴブリン王の帰還」

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前回、突如ザントリーフの海岸に押し寄せたサファギンの大群。
熟練の冒険者たちが迎撃にあたるも、圧倒的な数の前に殲滅することはかなわず、初心者たちが安全な場所へたどり着くまでの時間稼ぎしかできない状況。

さらに、にゃん太班長の偵察で、ゴブリンの大軍が山岳地帯を移動していることが分かります。
ミノリたちラグランダ組も直継たちと合流。

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この危機はマイハマのコーウェン公の耳にも届き、貴族たちは急遽対策を検討します。

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↑みんな頭に手を当ててますが、念話中です。
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↑みんな念話中です。
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↑念話中です。


情を知ったシロエは、念話を使って、マイハマ、アキバ、ザントリーフを繋ぐネットワークを構築。
問題の対処に乗り出します。

まあ、どうやら、「ゴブリン王の帰還」というイベントが始まったということで、大災害以来、ろくにクエストでゴブリン討伐をしなかったツケが、ここにきて噴出したということですね。
問題は、ゴブリンがアキバを攻めてくるならまだしも、そうじゃない場合、大地人とどのように協力して対処するかということ。

シロエは、リ=ガンが語った死と記憶の関係についてカミングアウト。
クラスティからも「そういえば俺2回ほど死んだけど飼い猫の記憶なくなったわ…」みたいな裏付けが取れ、どうやらやはりこの世界で死ぬ度に記憶を失い、それは現実世界の記憶である可能性が高そうだという結論に…。
モンスターの大軍相手にうかつに戦えない事情が冒険者側にも出来てしまった格好。

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そんな折、レイネシア姫は、父親が前線へ赴くことを知らされます。
(姫の奮起は次回!)

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マリ姉たち海岸組とラグランダ組が合流し、対応を苦慮。
マリ姉に甘えるセララいくつなんだよ…///
中身はミノリよりもお姉さんのはずなのに…(笑)

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ミノリたちは偵察役を買って出て、ゴブリンの略奪に遭うおそれのあるチョーシの町へ向かいます。
ノリノリのルディを心配するミス五十鈴…Oh...

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道すがら、既に略奪にあった集落を発見…。
そこにはこんなものも…、

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うわあああああああああああああああああああ!


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円卓会議の決定を待っているわけにはいかない…。
しかし、ゴブリンの略奪部隊から町を守りきるのはおそらく無理だろう…。

ミノリの決断は、こちらから打って出ること…!
ミノリかっけえええええええ!
第16話は、ミノリがラストでぜんぶ持って行きました。



第17話「怠惰で臆病な姫君」

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16話の燃える引きを受けての17話冒頭のミノリのこの目!
いや、もう赤く光っても良かったくらいにミノリちゃんかっこいいんですが…///
(魔法の目薬で視力アップ!)

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↑セララも初めて回復以外のスキルを見せてた!(足止め!)
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↑「ナイスだ!ミス五十鈴!」「…いいから」(笑)


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マイハマでは大地人貴族たちが冒険者そっちのけで対策会議。
大地人の守り神・イズモ騎士団は行方不明で、大地人が頼れるのは冒険者たちしかいないが、体面を気にして円卓会議に頭を下げることはしたくない…。

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↑いい加減、ミチタカにもいじられ始めたシロエの眼鏡クイッ。

円卓会議としても、便利屋と勘違いされないようにあくまで対等な立場で依頼を受けねばならず…。


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諸侯の思惑を知ったレイネシア姫は、自分にも国を憂う気持ちはあるのだとクラスティに言い残します。


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一方、ゴブリン部隊に攻撃を仕掛けてる遊撃部隊では、ルディの魔法の小手についてのエピソードが…。
いいエピソードだし、なんか死亡フラグっぽいし…、でもとりあえずさ、それをラグランダでゲットしたならそこ描こうよ!と言いたいですね。

ラグランダでの修行で、チームワークが生まれた回は面白かったんですけど、描かれたのは初回の戦闘のみで、その後実は、やや強めのモンスターを退治した…とか、ダンジョンの奥でレアアイテムをゲットした…とか、それこそ見たかったよ!みたいなエピソードが多すぎます(笑)
群像劇だし、いろんな場面を多角的に同時進行で描いていくのもいいんですが、見せ場となるエピソードはしっかり腰を据えて描いていってもいいんでは?

まあ、とにかくレア装備に喜ぶルディは犬っぽいな…(´・ω・`)


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さあ場面は変わって、ようやく会議に招かれたシロエたち。
おそらく既に談合してたであろう貴族たちに対抗するため、シロエ、クラスティ、ミチタカの3人は役割分担をして会議に臨みますが…。

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↑ミチタカ、台バン!(笑)
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↑これテーブル割れてもおかしくないょ((((;゚Д゚)))))))
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↑あーワインもったいない…。
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このミチタカの激昂は最初から仕組んでいたこと。
死んでも大丈夫だから冒険者が戦えばいいだなんて、俺たちをなんだと思ってる!?って怒っておいて、シロエが冷静に相手の非をあげつらうことで、主導権を冒険者側が取ろうとする作戦だったようですが、ミチタカちょっと気合い入りすぎて落とし所が見えなくなった…(笑)

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膠着した会議の場に現れたのは「怠惰で臆病なレイネシア姫」!
イズモ騎士団の不在という大地人側の弱味をあっさり打ち明け、クラスティたち冒険者に助力を請うレイネシア。

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礼節を尽くしてお願いをするべきだと熱弁する姫は、アキバの町へこれから行って冒険者一人一人に願いを訴えると言います。
結局、このNPCのお姫様が一番「冒険者は自由」ということを理解していたんですかね…。

シロエやクラスティは円卓会議の取りまとめ役という立場のせいで、「みんなでまとまって一つの事を成し遂げなければいけない(特にゴブリンの大軍が迫ってるこの状況では)」という考え方に固執してしまっており、現場にいる直継やミノリたちに自由にやらせるという考えが抜けていた…。

一方、ミノリたちは、自由なのだから戦いたければ戦えばいいのだけど、円卓会議が決定を出さないために、独断専行で動いた形になってる。(本来は各人・各パーティーの独断でいいはず、冒険者は自由なのだから)

で、レイネシアは、自由人である冒険者に助けを求めるなら、礼節を尽くし、一人一人に訴えなければならない…ということを言ったわけで…。
姫様いちばん分かってる♪
でも身振り手振りが多すぎて逆になんか面白かったけど…。

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そんなわけでグリフォンの背に乗りアキバへ向かうレイネシア。
さすがに護衛付けずに冒険者の手に託すのはまずくないっすか、コーウェン公?(笑)
さあ、次回、城を出た姫君は冒険者の街でどんなことを感じるのでしょうか?

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そして、カンナギである自分がみんなを守らなきゃと考えるミノリ…。
ごめん、でもそう決意すればするほどルディのフラグ回収時にツラくなるだろうからやめて…。






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最近空気のアカツキさん…。

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それから、アキバからマイハマの守りに呼び出され、到着したのに挨拶もなしで置き去りにされた西風の旅団が不憫すぎる…(笑)
シロエ、なんかソウジロウに恨みでもあるの(´・ω・`)

「Wake Up, Girls! 七人のアイドル」WUG結成の物語。逆境の中での決意のデビューライブ。

※この記事は破廉恥画像を含みますので、不快に思う方は閲覧注意です(笑)

Wake Up, Girls! 七人のアイドル
(2014年/日本)

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【アニメ映画】サカサマのパテマ

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サカサマのパテマ (2013年、日本)

【監督】
吉浦康裕
【声の出演】
藤井ゆきよ
岡本信彦
大畑伸太郎
ふくまつ進紗
土師孝也
安元洋貴
加藤将之
内田真礼
【アニメーション制作】
スタジオ・リッカ
パープルカウスタジオジャパン

あらすじ

アイガ君主国では、「かつて多くの罪びとが空に落ちた」と伝えられ、空を見上げることは忌み嫌われていた。しかし、学校内で孤立気味の少年エイジは、時折、学生寮を抜けだしては一人、空を見上げていた。そんなエイジの前に、ある夜、地底世界からやってきた<サカサマの少女>パテマが現れる。そのままでは空に落ちてしまうパテマを保護したエイジ。しかしその頃、<サカサマ人>を忌み嫌うアイガの君主イザムラの魔の手が迫っていた……。

感想 (2014年1月15日、チネ・ラヴィータにて鑑賞)

「イヴの時間」の吉浦康裕監督・脚本・原作の新作アニメ「サカサマのパテマ」観ました!
今年もまだ始まったばかりですが、今年のベストに選びたい映画です(笑)
少なくともアニメ映画のジャンルでこれを超える作品を今年は見られないと思ってます。
別にそれでもいいと思えるくらい素晴らしい内容でした♪



大まかに言ってしまうとボーイ・ミーツ・ガールもの。
平凡な少年が異邦人の少女と出会い、心を通い合わせていく……というよくあるパターンです。
しかし、そんなベタな展開が骨組みにあっても、見せ方が良いですね。

地上人の少年と地底人の少女の出会い。
空から女の子が降ってくるアニメは名作と言われますが、このアニメの場合は地面から女の子が……!
しかもサカサマのまま……これがこのアニメのオリジナリティとなります。

二つの重力が存在する世界、という設定は知ってて観たんですが、このアニメ……よく考えるとどうやら「重力」じゃないぞ?となります。
つまり、重力ならばその影響の及ぶ場所にあるものはすべて同一の方向へ引っ張られるはずですが、エイジとパテマは、同じ場所にあっても真逆の方向へ引っ張られています。

このため、地面の裏側から地上に出てきたパテマはずっとサカサマのまま。
そしてエイジが掴んでいないとパテマは空へと「落ちて」いきます。
パテマにとっては空に重力があるわけですが、しかし地上人のエイジにとっては違う……。
このことは人間だけに言えるのではなく、パテマの住む地底世界の物も空に引っ張られる性質を持っているんですね。

なので、これはもう重力ではないな、と。
二つの重力によって引き裂かれる主人公たち……ではなく、そもそも上下の概念がまったく異なる性質を持った者たちの物語なんですね。
外部の重力によって立場が異なるのではなく、内面の性質によって価値観が異なるということでは、と。

そんな、価値観のまったく異なる両者が、どんな風に相互理解を深めていくか……の物語でもあります。
観客はまず、パテマにとって空の青さがどんなに恐ろしいことかを理解することから始まります。
すごく画期的ですよ、これは。

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映像的な面ではとにかくこの上下逆さまの女の子というのが効いていて、「サカサマ・トリップ・スペクタクル」というコピーのとおり。
画面の上下が頻繁に変わるアニメで、パテマ視点の地底世界にエイジ視点で入り込む所とかけっこう鳥肌だったりします。

さらに、前述のように、パテマにはこの状況どう見えてるんだろうとか、エイジにはどうだろうとか、そんなことを考え出すともう脳内がすごいです(笑)
まさにサカサマ・トリップ・スペクタクル!

お互いに異質なものでしかない二人が、ふと同じ視点でお互いを見るシーンがありますが、そういうのさり気なく入れてくるとかもうこの監督すごいですね!
そもそもアイディアがもうなんかすごいし!

結末にもものすごい真実が用意されていて、正直ああいう結末じゃなかったらここまで絶賛はしてないと思います。
未だに解釈に苦しむんですけどね、2つの解釈を思いついてしまって。
ネタバレになるので書けないのがツラいですが……。



苦言を呈する部分があるとすれば、悪役であるアイガ国の独裁者イザムラが、悪役としていまいちだったかなーと。
なんか、独裁者なのにけっこう現場に出張ってくる人でね……。
風貌も、君主ではなく君主補佐って感じでね……。
目を見開いてニヤリとする演出がどうでもいいシーンで出てきたりね……。
最終的に小物的に終わるのはまあ良しとして、でも悪役を描くの慣れてないのかなーと思いました。

でもパテマちゃんが可愛かったので全然オッケーですね!
私もパテマちゃんのおなかにギューッてしたいよぉ(*´Д`*)ハァハァ
声優の藤井ゆきよさんも、新人とのことですが、幼さの残る活発な少女の声が良かったですね♪

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この映画のことは、昨年7月に「イヴの時間」を借りて見た時にいろいろ調べて知り、その後冬になってから仙台でも上映されることを知ったんですが、これほどのクオリティのアニメ映画がややもすれば見逃してしまいそうな規模でやってるんですよね。
アンテナ張っとかないとな~と改めて思いました。

この吉浦康裕監督にも大注目ですが、「おおかみこどもの雨と雪」などの細田守や、「言の葉の庭」などの新海誠にも大注目ですよね。
この3者はハートフルで面白いものを作ってきますよ。

逆に最近ジブリアニメの評価が相対的に下がり始めて……(笑)
まあ、昨年観たジブリが「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」ですからムリもないような気もするけど。
とにかく、私の中ではもうジブリの時代は終わりつつあって、代わりに若い世代のアニメ監督たちが台頭してきた感じ。
これからのアニメ映画界に期待大です。



気になる人は、なんとニコニコ動画で映画の一部が公開されてますので見てみてください。

【アニメ映画】劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-

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劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning- (2012年、日本)

【監督】
米たにヨシトモ
【声の出演】
平田広明
森田成一
寿美菜子
楠大典
伊瀬茉莉也
津田健次郎
井上剛
岡本信彦
遊佐浩二
【アニメーション制作】
サンライズ

あらすじ

多様な人種・民族が集まる巨大都市シュテルンビルトには、様々な特殊能力を持つ<NEXT>と呼ばれる者たちがいた。企業の「ヒーロー事業部」に所属する彼らは、スポンサーロゴを背負って事件解決や人命救助などにあたり、その活躍の様子を生中継する<HERO TV>は市民の娯楽となっていた。ヒーローの一人、ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹は、ピークを過ぎたベテランで人気も下降気味。崖っぷちに立たされている彼が会社から命じられたのは、新人ヒーローのバーナビー・ブルックスJr.とコンビを組むことだった。ヒーローとしての能力は高いが生意気なバーナビーと、熱血漢で頑固者の虎徹。二人は衝突を繰り返しながら事件に立ち向かって行くが……。

感想 (2014年1月12日、TV録画にて鑑賞)

TVアニメ「TIGER & BUNNY」の劇場版1作目。
劇場版2作目が2月に公開されるのに合わせて正月にTV放映されたので、初タイバニですが見てみました。

TVシリーズの1話、2話に新作カットを加え、さらに新エピソードを追加したそうです。
「タイバニ入門編」という評価もあるとおり、初心者の私でも難なくタイバニ世界に入り込めました。
で、まあ……TVシリーズ本編も気になってしまった次第……(笑)
(そのうち見るかもしれません)



このアニメの特徴の一つに、実在の企業のロゴがヒーローたちの衣装に施されていることが挙げられます。
例えば、SoftBankとかBANDAIとかPEPSI NEXだとかのロゴマークがけっこうデカデカとヒーロースーツに印刷されてるんです。
実際に企業向けにキャラクタープレイスメントの協賛を募ったわけですね。

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主人公2人の広告枠は価格が高めに設定されていたり、胸や肩など、顔付近で露出しやすい場所はさらに価格が高かった模様。
さすがSoftBank……。少なくとも白い犬のTVCMよりはいい仕事してますね(笑)

そんなわけで、ヒーローたちが企業ロゴを背負い「HERO TV」なる番組で活躍する様は、まるでスポーツ選手のようです。
事実、ヒーローたちは犯人確保や人命救助によってポイントを稼ぎ、MVPも発表されるというんだからまさしくこれはプロスポーツの世界。
ヒーローを「職業」として割り切り、その作品世界に実在企業の広告を出すことで「現実味」をプラスしている……。

さらには、広告費でアニメの制作費も回収しているわけですよね(笑)
こういったマネはタイバニの世界観でなきゃできないわけですが、非常に面白い試みですよね。

デザイン的にも、企業ロゴがヒーローたちのデザインやキャラクター性とも見事に融合してる感じがします。
バーナビーの胸のBANDAIとか、ブルーローズのペプシNEXとか……。
ただ、ロックバイソンの両肩の「牛角」があまりにもハマりすぎてて、「牛角の人」と覚えてしまったりして……。
(でも実は視聴者の間でも「牛角さん」らしいですね♪)

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ストーリーの方は、落ち目のベテランヒーローと気鋭の新人ヒーローの凸凹コンビによるバディ・ムービーといった感じで、面白いです。
アニメゆえにコミカルな描写はお手の物。
ほぼ全ヒーローがなんとなく面白いって……面白い。

逆に劇場版としてはシリアスな雰囲気が薄く、物足りなさもあるかもしれませんが、タイバニってこういうアニメなんだと知るには最適の内容でしたね。
ゆっくりTV版でも見ていこうと思いました。




【映画】私がクマにキレた理由



私がクマにキレた理由 (2007年、アメリカ)

【監督】
シャリ・スプリンガー・バーマン
ロバート・プルチーニ
【出演】
スカーレット・ヨハンソン
ローラ・リニー
ポール・ジアマッティ
ニコラス・リース・アート
ドナ・マーフィ
アリシア・キーズ
クリス・エヴァンス

あらすじ

大学を卒業したアニーは大手投資銀行の就職面接を受けるが、「あなたのしたいものは何?」という質問に答えられず、逃げ出してしまう。落ち込んでいたアニーは、事故に遭いそうになった子供を助けたことから母親のミセスXと知り合い、子供の面倒をみるナニーとして雇われる。マンハッタンの上流階級の我侭な人間たちに振り回されるアニーだったが…。

感想 (2014年1月12日、TV録画にて鑑賞)

「私がクマにキレた理由(わけ)」という邦題とジャケットからどんな内容の映画かと疑問には思っていましたが、割と普通のコメディタッチのベビーシッター物語でした。
ヒロインのアニーと、ナニー(子守り)をかけてるわけですか…(笑)



成り行きでマンハッタン島の上流階級のナニーになった就活中のアニー。
我侭な子供とは割とすぐに打ち解けますが、問題は両親の方。
アップタウン(高級住宅地)に暮らす特殊な部族の理解できない生態に辟易しながら奮闘する女性を描きます。

大学で人類学を専攻したアニーの主観で進むので、登場人物の名前はミセスX、ミスターX、ハーバードのイケメン…など、伏せてあります。
名前伏せることで奇妙さが際立つ面もありますよね。

実際にアニーは「あの、ミセスX?」と呼びかけます。
現実なら「奥様?」とか「ミセス○○(苗字)?」とかなんでしょうけど、アニー主観の物語なので、ミセスXにはミセスXと呼びかける。むしろミセスX自身が「ミセスXよ」なんて自己紹介するわけです。
とても映画的というか、フィクションの利点を活かしていますね。

ちなみに子供とは心で通じ合うので、彼のことはグレイヤーとちゃんと名前で。



ほとんどは、子供のことを顧みない親とナニーであるがゆえに子供のことを心配するアニーの対決の構図。
上流階級の人間って…金持ちってなんでこんなに冷たくて愚かなんだろう!?っていう庶民視点の映画です。
その価値観のギャップが最終的にクマに対して爆発するという…ね。

似たようなナニーの映画で「アップタウン・ガールズ」というのを前にレビューしましたが、あちらはナニーと親の対立ではなく、ナニーと子供の友情を主に描いてましたね。
ベビーシッターというのが割と一般的なアメリカでは、こういう題材は人間ドラマとして扱いやすいのかもしれないですね。




【映画】Dr.パルナサスの鏡





Dr.パルナサスの鏡 (2009年、イギリス/カナダ)

【監督】
テリー・ギリアム
【出演】
ヒース・レジャー
クリストファー・プラマー
リリー・コール
アンドリュー・ガーフィールド
ヴァーン・トロイヤー
ジョニー・デップ
ジュード・ロウ
コリン・ファレル
トム・ウェイツ

あらすじ

2007年、ロンドンのとある路地裏で、今にも壊れそうな見世物小屋を開いたDr.パルナサスの旅芸人一座。パルナサス博士の不思議な鏡に入ると、そこには客の願望を反映した幻想的な世界が広がっている…。しかし怪しげな出し物に興味を抱く客はおらず、一座は冴えない旅を続けていた。そんなある日、一座は橋の下に吊るされた青年トニーを助ける。命を救われたトニーは商才を発揮して見世物を繁盛させるが…。

感想 (2014年1月11日、TV録画にて鑑賞)

テリー・ギリアム監督が描くユニークなファンタジー。
主演はヒース・レジャーで、6年前の1月22日、この映画の撮影中に急死してます。(偶然にも今日が命日なんですね…)



最初はわけが分からない感じで進んでいき、ファンタジー描写が違和感たっぷりですが、だんだん話が掴めてくるとなかなか面白いと思えました。
旅芸人をしながら、悪魔の誘惑に打ち勝つ心の清い者たちを探しているパルナサス博士。
不思議な鏡の中に広がる幻想世界に客を送り込み、博士の教えと悪魔の誘惑、どちらを選ぶか見極めようとします。

悪魔と勝負している理由については博士の過去に秘密があり、一座の他のメンバーや娘でさえも知りません。
そんな折、ヒース・レジャー演じる青年トニーを助けた一行。
トニーの活躍で客引きは上手く行き、悪魔との戦いにも勝機が見えてくるのですが…。

幻想世界の映像がけっこう独特。
美しいことは美しいけど、なんか気持ち悪さもあるんですよね。
ぶっとんでる、と言ったらいいですかね。
映像で笑えるファンタジー作品って珍しいような…。



wikiによると、撮影中にヒース・レジャーが急逝したため、一時は完成が危ぶまれたそうです。
しかし、幻想世界でのトニー役を、ヒース・レジャーと親交のあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルらが演じることが決まり撮影再開。
幻想世界に入り込む度にトニーの顔が変わるというユニークな描写が生まれました。

ヒース・レジャーの死は、この映画にとって悲しいアクシデントだったけど、それが逆にこの作品をよりファンタジックに魅せることになったという…。
私はそういう経緯があることを知らずに見たので、「おっ、ジョニデになるんだ~♪」「あれ?今度はジュード・ロウ…なの?」「おいおいコリン・ファレルだよwうははwww」と楽しんで見ることができました。

あと娘役の子が「メリダとおそろしの森」のヒロインそっくりな気がします!

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