「下の句公開されるまで待って前後編まとめて観よう」なんて思ってた自分に往復ビンタ!
そして私と同じこと考えてる人がいたら悪いことは言わない、とりあえず上の句観に行きましょう。
これ一個でとても満足できる映画になってる。満足度ちはやFULLです!

少女コミックの実写化作品ってそんなに見たことないんだけど、個人的には恋するヒロインたちの心境に感情移入できない場合が多い。(オッサンだし当たり前だけどw)
好きな男子と付き合うだけのことでものすごく思い込んで、まるでこの恋が実らなかったら世界が終わるみたいにマジになってる少女たちを一歩引いて見てしまう。
その周りが見えない状態もまた青春であるのだけど、人生のすべてが恋で回っているのはちょっと違うんじゃないだろうか、という思いがあった。(だから結婚できないのか私は?笑)

ところがこの「ちはやふる」は、そういう恋愛中毒っぷりはまったくない。
恋愛ものというよりはスポ根。いや完全にスポ根。
なにせ主人公・千早が極度のカルタ馬鹿で、幼なじみのイケメンをまったく異性として見てない。

本作は競技かるたに恋する超絶鈍感ヒロインに憧れる不運イケメンの成長の物語。
野村周平(光クラブよりカルタ部の方が楽しそうでよかった!)演じる太一こそが上の句の主人公かもしれない。
カルタで勝たなければ振り向いてもらえない…そのために青春すべて懸けよう、という悲壮な決意が泣ける。


そして、太一がそこまで思い詰めるに値する人間的魅力が千早にはある。
カルタを愛し、カルタに青春のすべてを懸けている少女の眩しい輝きがスクリーンから溢れ出てくる。

汗も寝息スピーも白目ドーンも、すべてが輝いている。
畳に舞い降りた吉祥天女に「ファィトーッ!」なんて言われたら3回くらい輪廻転生できる。
広瀬すず、広瀬すず。広瀬すずだけで5億万点な映画だし、広瀬すずの魅力を最大限引き出すことでヒロインに惹かれる周りの人間たちに説得力が出てくる。

唯一、これはまだ「上の句」であるという遠慮が見られて、そこだけは気になるところだった。
都大会の決勝というわりかし小規模な舞台で、机くんが拗ねちゃうエピソードをやってしまうこととか。
だがそれは「下の句」への期待という形で受け取れるようになっている。

むしろヘタに一作にまとめなかったことに感謝したい。
次こそはきっと千早自身の成長の物語だ!たぶん!
この映画が少女コミック映画の新たなスタンダードになるような気がしている!



ちはやふる 上の句
(2016年/日本)
【監督】
小泉徳宏
【キャスト】
広瀬すず
野村周平
真剣佑
上白石萌音
矢本悠馬
森永悠希
清水尋也
坂口涼太郎
松田美由紀
國村隼