NEXT ニコラス・ケイジ

フィリップ・K・ディックの原作は読んだことないんだけど、「核爆弾」っていう言語センスからしてPKD世界って感じで好き。

「2分先まで見通せる能力」を持ってるだけで、基本はフツーのおっさん。
世の中のために能力を発揮するつもりもなく、運命の女がいつか現れると信じていて、FBIから逃げるくらいしかしない中年独身主人公にニコラス・ケイジが扮するとか最高だと思った。
追いかける鬼の役にジュリアン・ムーアとかツボを押さえてるとしか言いようがないし、予知能力を持ったストーカーおじさんに付きまとわれるハメになったジェシカ・ビールは初対面にいろいろ許しすぎで危うい。

未来を視ることによってさえも未来は変わっていく。
Aルートを通った結果を視た自分はAを選択せずBルートを選択するからBルートの結果も視ることができる。
そんな理屈が作り出す分身の術には誰もが驚くことだろう。
(あんなツッコミどころをちゃんと考えて納得した私はエライと思う)

物語は終盤のこれから盛り上がりそうな所で唐突にラストに飛ぶ感じ。
それ自体がこの作品でなければできないとてもワンダーな結末だった。
まあ普通に盛り上がりに欠けると思うし、いろいろ無視して放り出された感は否めない。
でもこれもPKD世界というよりSF小説(特に短編や中編)の醍醐味というか、そんな実験的挑戦に溢れた結末になっている。

彼の行く先にどんな未来が待っているのか、それを鑑賞者自身で夢想することでこの映画は完成するのだと思う。
この映画はまだ始まったばかりなのだ…!(ジャジャーン!)



NEXT ネクスト
(2007年/アメリカ)
【監督】
リー・タマホリ
【キャスト】
ニコラス・ケイジ
ジュリアン・ムーア
ジェシカ・ビール
トーマス・クレッチマン
トリー・キトルズ
ピーター・フォーク
ホセ・ズニーガ
ジム・ビーヴァー
マイケル・トルッコ