面白かった…。これは2010年代のダイ・ハードかもしれない。

エメリッヒ監督の映画って「大味」というイメージがあったけどそうじゃないんだって思った。
この映画はクソ真面目に見ればいろいろツッコミ所はあるんだろうけど、それ自体が味わいになっている面も確実にあるわけで。
例えばホワイトハウスの庭先を爆走したりだとか命懸けなのに笑えてくる。

そして主人公の行動理由も至ってシンプルで、ただ「娘を救わなければ」それだけなんだけど、人間が命を賭ける理由としてそれ以上のものはないと思うし、その意味ではけして薄っぺらな話ではないなと。
犯人グループもそれぞれの個性が発揮されてて満足。(←特にヒゲのオッサン)
なんというか、劇中の役割として間違ってる人間は一人もいない。
「厚い」ドラマが下敷きにあったように思う。

スマホの件と交代劇の件に見られるように、正義とその責任についてや、法治国家の奇妙さもサラッとだけど触れられていたように思う。なんというか皮肉。(←後述)


子役のジョーイ・キングは完全に顔が出来上がっていて驚いた。
このまま50歳まで顔変わらずにいくんだと思う。
オイシイ役を持っていくのだが、そこが最高の胸熱ポイントだったりする。





※以下、ネタバレになりますので未見の方は注意。





主人公の娘は大統領大好きっ子(もうこの時点からして邦画にはない設定で面白い)で、YouTubeにアップするからと大統領の突撃インタビューに成功する。
彼女は事件が起こった後もテロリストたちから身を隠しながら動画を更新していたわけだが、実はそのせいで彼女の身に危険が及ぶことになる。

しかし、一方で彼女の動画によって犯人グループの面が割れ、対策に進展があったわけで、この辺りのメリットもデメリットも両方描いた所が上手いと思った。
YouTubeとかSNSをただただ持ち上げることもしなければ、決めつけで批判することもしない。
良い事と悪い事の両方の可能性を提示していて、そんな所に好感を持った。

大統領の交代劇もけっこうな見ものというか。なんと2回も交代する。それは実は黒幕の仕組んだことだったのだが。
面白いのは、大統領交代によって元大統領の命の価値がだだ下がりしたことである。
それまではアメリカで最も重要な命であるかのように扱われていた男が、「さすがにもう亡くなっただろう」ということで次の男に権力が移ると、元大統領がまだ生きてるという望みが出てきても「彼はもう大統領ではない(だから最優先する命じゃない)」と言われてしまう。

さっきまで必死に脱出させようとしていた大統領が、「元」大統領になると途端にどうでもよくなるという…。
それは、アメリカの大統領に核ミサイルの発射コードのような超重大な権限が集中しているせいでもあるんだろうけど。
そんな笑える(いや、笑えない?)状況の唯一の根拠である「法」というものは、実に奇妙で面白いなと思った。



ホワイトハウス・ダウン
(2013年/アメリカ)
【監督】
ローランド・エメリッヒ
【キャスト】
チャニング・テイタム
ジェイミー・フォックス
マギー・ギレンホール
ジョーイ・キング
ジェイソン・クラーク
ジェームズ・ウッズ
リチャード・ジェンキンス
ランス・レディック
ジミ・シンプソン
ジェイク・ウェバー
マッド・クレイヴン
レイチェル・レフィブレ