昨年からずっと気になっていて、2分版や5分版を何度も見た作品が、先日、ついに25分版の短編アニメーションとして放送された。
物語のヒロインは、東北有数の港町に暮らす13歳の中学生・佐藤陽菜。
漁師の父親と仮設住宅で二人暮らしの陽菜の夢は、羽生結弦選手のようなフィギュアスケーターになること。
大会に向けて練習を重ねるそんなある日、小学生の頃に埋めたタイムカプセルが見つかる…。
復興応援という大テーマの下に作られたアニメなので、被災地を舞台にした心温まるお話になっているけど、2分版を初めて見た時に魅了された「萌え」もやり過ぎない絶妙な感じで楽しめた。
毎朝のゴミ出しで「ふわわわっ…///」となってしまったりとか。
5分版では謎だったみちゃりんの入れ歯も、25分版を見ることで謎が解けたね!(よかった)
その朝のシーンが25分版だと、仮設の玄関から出発して横にスクロールし、背景の運動場が見えるという良い演出で驚いた。
2分版・5分版では仮設に住んでることはわかっても、どこに仮設が建ってるかまでは考えもしなかった。
運動場のグラウンドに仮設は建てられ、ヒロインは毎朝家を出て運動場を出る。
仮設暮らしの現実を見せつけられた思いだ。
だからといって、ヒロイン・陽菜は別に落ち込んだりもしていない普通の女の子で。
羽生くんになれたらなぁ…なんてテキトーなことを言いながらフィギュアに打ち込む日々。
朝早い父親のご飯を作ったり…いい子だ…!
だけどやっぱり心に傷は持っているのかな…という所もあって、そこがこの短編でのお話になる。
タイムカプセルに入っていたリボンのことを忘れてしまった陽菜。
父親は「たった7年前のことだぞ」と言っても、陽菜にとっては「7年も前のこと」。
これが子供時代の記憶のあやふやさからくるものか、それとも忘れようという気持ちがどこかにあったのかはわからない。
あるいはその両方でもあると思う。
だが、写真修復プロジェクトできれいになって戻ってきた写真を見た陽菜は、自分が母親との思い出を忘れていたことに泣いてしまう。
母親の死という重い現実を、死という言葉を使わずに描いてるような、そんな感じがある。
そこに、このアニメの目的が少し見えてくるような気がする。
人が大勢亡くなって悲しいね、という時期はもうとっくに過ぎ去っていて、震災から5年という時間が経ったいま、忘れられないこともあれば、忘れてしまうこともあるのだ。
それが間違いだと言ってるわけじゃなくて、それが未来へ向けて繋いでいくということなんじゃないかと思う。
父親が、町を元に戻そうとしている自分と比べて、陽菜は未来に生きているんだと評したのが印象深かった。
大人と子供、それぞれの事情というのもしっかり落とし込まれていたと思う。
最後はスケートリンク上の陽菜を描いてなかなか良いエンディングを迎えるのだが、そこで初めて3DCGが出てきたので少し驚いた。
そこまで手描きで可愛いらしい女の子を書いてたんだけど、動き回るシーンではやはり3Dモデルを動かした方が簡単なのだろうか?
まあ、クレジットと被っていたのでよくチェックもできないシーンだったのだが…。
できればNHKから予算ぶんどってでも手描きでやってほしかったなぁー…なんて分かってない素人が言ったらダメですかね…。
福島ガイナックスの新作「政宗ダテニクル」もすっげえ気になります!!!!!
想いのかけら
(2016年/日本)
【監督】
佐伯昭志
【キャスト】
安野希世乃
荒川美穂
佐々木李子
星野充昭
中根久美子
福沙奈恵
伊藤はるか
小野寺瑠奈
矢野正明
木内太郎
- カテゴリ カテゴリ:
- 2015年度アニメ