アニメファンの間で度々名前が出てくるこの作品をついに見てみたが、わかる、名前挙げたくなる気持ちわかる。
アイドルから女優へと華麗に転身したはずのヒロインが、キツい仕事やファンからの嫌がらせで精神に不調をきたしてしまってからは、虚実混交、どこまでが現実でどこからが幻想なのか見る者にもまったく分からない。
中盤あたりの夢オチ→夢オチ→夢オチ→夢オチなどはもう呆れてしまうほどで、ヒロインと一緒になって幻に囚われた感覚を味わった。
終盤には衝撃の真実、ラストのセリフも一考の余地があって面白い。
犯人の正体が分かると序盤で気づきそうな気もするのだが、その論理的帰結をぐちゃぐちゃの妄想と錯乱でもってどこかへやってしまう内容が凄いと思う。
アイドルも女優も虚構であり、ファンは本人の人格ではなく「イメージ」を崇拝している、という事実を気持ち悪さ全開で描いているので、いま好きな声優アイドルがいる私としては少しだけ居心地が悪い。
アイドルに愛を捧げる一方で、彼女たちを凌辱したいという生物的欲求を誰しも根っこの部分で持ってるはず。(持ってるよね?…私だけ?)(理性と道徳と法で何重にも蓋をしているから安心してくださいね)
テレビドラマのレイプシーン撮影という形で、ファン心理の暗い淀んだ奥底を私に突きつけてくる。「「みーまりーん!!」」とエールを贈るファンの怖さ。
作品の過激さについては、アンダーヘアを晒してるくらいなのでアダルトコーナーに置いててもおかしくないと思う。
でも、もちろんエロ目的の作品ではなく、必然としてそうなっただけですよね。
※以下、ネタバレにつき未見の方は閲覧注意です。
事件が解決して最後に主人公が微笑むラストシーン、最初はすべてが終わったのだとホッとしていたが、よく考えたら全然安心できない終わり方じゃないかこれ…。
車に乗り込んで「私はホンモノよっ♪」と微笑むヒロイン・未麻。
しかしそれは車のルームミラーに映った未麻が微笑んでいるにすぎない。
未麻は何度もアイドルとしての未麻の幻影を見たのだし、鏡の前と中で映る物が違うという演出は直前のシーンでもあった。
そして、物語で起こった事件は犯人の心の闇が生み出したものであったが、未麻自身も夢と現実の区別がつかなくなるなど精神を病んでしまった。
未麻の心についてはまだ完全な平穏は訪れていないのである。
とすれば、あの鏡越しの未麻が、アイドル未麻の幻覚だということは充分にありえる話で、そんな怖い結末を示唆するラストシーンだったのではないだろうか。
ありのままの未麻と、アイドルとしての未麻。
この作品ではアイドルとしての未麻の幻を見る二人の人間が登場し、その幻に悩まされ、操られることになる。
しかし、未麻自身もその幻に悩まされ、幻から否定され続ける。
未麻の問題についてはまったく解決していないことが明らかになる、怖いラストだったと思う。
PERFECT BLUE パーフェクトブルー
(1997年/日本)
【監督】
今敏
【キャスト】
岩男潤子
松本梨香
辻親八
大倉正章
塩屋翼
篠原恵美
江原正士
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