妻の絵を夫が自分で描いたと偽って売っていると知った時に、妻は嫌悪感は示しつつもグッと我慢して胸の奥にしまってしまう。
初期の段階ではまだ夫に怯えたりはしていない。
それでも声を上げて対等にやりあうことを彼女はしなかった。
そこにアメリカ人女性らしからぬ内向性を感じたんだけど(偏見)、これはこの人の性格なのか、それとも時代がそうだったのか。
おそらく性格がどうのという前に、今よりもシングルマザーが生きづらい世の中だったはずだし、絶対に社会的な抑圧はあったと思う。
絵を描くことしかできない自分が一人で娘を育てていけるのか、というプレッシャーが彼女を縛りつける。
それを見越してなのかは知らないけど、結果的に妻の弱い立場につけ込む夫のなんとゲスなことか。ゲスの極み絵描きだ。
この男の滑稽すぎる生き様が本当に面白くて、被害にあった彼女には悪いけど少し笑える。
時間を追うごとにだんだんとボロが出てきて、最後にはどこから突っ込めばいいかわからなくなる。
憎たらしい男だが彼が物語の推進力になっていたのも事実。
陽気な恋人で始まり、暴君、そしてピエロまで演じたクリストフ・ヴァルツ、良い「悪役」だった。
ビッグ・アイズ
(2014年/アメリカ)
【監督】
ティム・バートン
【キャスト】
エイミー・アダムス
クリストフ・ヴァルツ
ダニー・ヒューストン
クリステン・リッター
ジェイソン・シュワルツマン
テレンス・スタンプ
- カテゴリ カテゴリ:
- 実話・伝記映画