コロニー編の後半部分の感想。
いつものようにネタバレありで思ったことを書いてますので、未見の方はご注意を。

第16話のタイトルは「フミタン・アドモス」。
各話タイトルがキャラクターの名前のみという場合、私の経験上(何様)、そのキャラクターの最大最後の見せ場が描かれるということが多い。
その回がそのキャラクターを語る上で最も重要な回になるからこそ、名前をそのまま各話タイトルにできるのだと思う。

そして、前回ノブリスからの密命が明かされたこのタイミングで考えられる、フミタンにとって最大最後の見せ場といえば、もうアレしかない。
さらに、経験上、この手のキャラは主人公やヒロインの純真さに情が移ってしまうものなので、フミタンの退場の仕方についても、もう分かりすぎるくらい分かってしまっていた。
次回予告の時点で分かってた気がする…。

そんなわけで、シナリオ的にはとても王道な感じ、誰しもが予想していた形で途中退場となったフミタンなわけだが、いろいろと小道具含めた演出があって考察しがいのある最期になっていたと思う。


ギリギリの所でノブリスの魔手からクーデリアの命を救ったフミタンは、その代わりに凶弾に倒れる。

「あなたのことが嫌いでした」
「濁ってしまえばいいと…」

現実を知らないその無知さゆえに純粋な眼差しで世界を見るクーデリアを、厳しい現実と向き合ってきたフミタンはこれまで苦々しい思いで見てきたのだろう。
それは偽善だ…、そんな甘いことでは生き抜けない…、しょせん富裕層の気まぐれだ…、そんな風に思っていたのかもしれない。
そんな不満を最後の最後に吐露する。

フミタンにとって現実とは、険しく、汚れていて、容赦のないものだったのだろう。
彼女自身、スラム出身であることをほのめかす台詞もあった。
だから、無知で幼稚な正義感から貧困層に施そうとした幼いクーデリアに、意地悪をしたくなった。
(怖い思いをしたクーデリアはフミタンに泣きつくが、この動作は以前、鉄華団の年少が夜寝れなくて「フミタンがいいー!」と泣きついたのとリンクしそうな気がする)

ところが、クーデリアにとってそれは成長へのステップ(あるいはきっかけ)になった。
彼女はその正義感を濁らせるどころか、構造問題への実際的な取り組みを始め、それは火星独立運動という形で芽吹いた。
フミタンとクーデリアの違いはただ一つ。クーデリアは厳しい現実を目の当たりにしても、そこに希望を見出すことができたのだ。

フミタンはおそらく厳しい現実を生き残る過程で希望を心の奥底に封印したのだろう。何も期待せず、堅実に生き抜くために。
しかし、封印したはずの希望が、ふとした瞬間に涙となって溢れ出す。
クーデリアに見せられた本の挿絵。革命の乙女の姿に、フミタンは忘れかけていた希望を見出す。

その革命の乙女の絵は、暴徒虐殺の現場に居合わせたクーデリアの姿とリンクしている。
フミタンは、クーデリアこそが護るべき希望だったことを知り、彼女の下へ駆けつける。
逆に、革命の乙女の絵を見て思わず出た涙は、数年後のフミタン自身の最期の日のために流れたと考えても面白いかもしれない。


小道具のペンダントも、フミタンがそれをどのように扱ったかを考えると面白い。
ある日、クーデリアから贈られた揃いの真珠のペンダント。
フミタンを姉と慕うクーデリアからの親愛の証だ。

しかし、クーデリアを欺いていたフミタンは、そのペンダントを身に付けることはなかった。
常にポケットの中に入れて持ち歩いていても、首から下げることは最後までできなかった。

それは逆に、クーデリアに対して正直でいたいという心理の表れではないだろうか?
クーデリアの思いがこもった品だからこそ、彼女を欺いている自分には身に付けることができない。
もし身に付ければ、その時こそ本当にクーデリアを裏切ることになる…。

ついぞ身に付けなかったペンダントを、フミタンはどのような思いでクーデリアに返したのだろう。
自分はあなたの姉には相応しくない、という思い、または欺いていたことへの罪悪感…。
革命の乙女であるクーデリアへ希望(ペンダント)を託した、そんな風にいろんな思いが込められていたと思う。

そのペンダントの真珠に落ちる涙。
使い古された演出だけど、「月の涙」「涙の象徴」と呼ばれる真珠に涙を落とすラストは意味深いものだと思う。
調べたら「困難を克服する」という意味も真珠にはあるらしく、知ってか知らずかこれを選んだクーデリアといい、それをクーデリアに託したフミタンといい、ああ物語だなあ…という感じ。


そして17話では、決意のクーデリアがペンダントを二つ首から下げる。
もう散々クドクド語ったのでお分かりと思うが、私はその演出をありふれた描写と一蹴することはできない。
二つ重なり合った真珠のペンダントに込められた、二人の女性の思い、彼女たちが歩んだそれぞれの歴史。
そして困難が待ち受けるだろう未来を乗り越える力を秘めるパールという宝石。

ありふれた、使い古された、そんな言葉で一蹴するにはもったいないほどの意味が、このエピソードにはあったように思う。



ほとんど16話の話になってしまったが、17話はクーデリアがついに覚悟を決める回で、これも面白かった。
無知、偽善、そんな危うさが見え隠れしていたクーデリアの独立運動だが、デモ隊に巻き込まれ、下層市民とギャラルホルンの関係を目の当たりにすることで、自分の掲げる理念が火星解放だけにとどまるものでないことを知る。

広い世界を見て、本当の現実を知った。
テレビカメラの前に姿を現したクーデリアが何を語るのか、それは次回のお楽しみだが、その姿はまさにフミタンがクーデリアに重ねた革命の乙女。
ガンダムシリーズを遡れば、市民へ革命を訴えたガンダムWのリリーナ・ピースクラフトと私は重ねてしまう。(クーデリアは戦闘の中止を労働者側に訴えるつもりかもしれないが)

また、裏ではノブリスとマクマードが手を結ぶ。
己の利益のためにクーデリアの死を演出しようとしていたノブリスに、マクマードはより大きなビジネスを持ちかける。
あの少女はもっと大きな火種になる…。

裏組織が得をする火種、それは戦争の火種だ。
クーデリアの支援者を装っていたノブリス、タービンズの親会社であるテイワズのマクマード。
クーデリアはもちろん、名瀬やオルガたちの知らないところで、鉄華団の立場は少しずつ変わり始めている。


ガンダムについてまったく書いてなかったが、17話は久しぶりのMS戦でアツかった。
キマリス、グシオン・リベイク、流星号と、新MSが3体もお披露目。
三日月&昭弘VSガエリオ、シノVSアインで、新たな関係も生まれた。
アインにまつわる因縁が流星号登場で更新されたこと、復讐者であるアインが上官を護ったことなど、今後に期待できる要素もあった。

ちょっとあまりに字数に差があるが、MS戦もとても面白いし楽しみなのである。ホントに(笑)




機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
第16話 フミタン・アドモス
第17話 クーデリアの決意