あの花

2011年4月から6月までノイタミナ枠で全11話が放送された青春アニメ「あの花」。
その後2013年夏には劇場版が公開され大ヒットアニメとなった。わりと最近スペシャルドラマとして実写化もされたようだ。

今回は、劇場版の公開に合わせて放送されたスペシャルオンエア版(オープニング曲が劇場版主題歌に差し替え)を鑑賞。
2013年夏に録画していたものを週一で見ていったが、なるほどたしかに面白かった。
「あの花スタッフ」という肩書がブランド化するのも頷ける内容だった。



小学生の仲良し6人は、「超平和バスターズ」という名前のグループを結成し、廃屋を秘密基地として毎日野山を駆け回っていた。
しかしある時、メンバーの一人・本間芽衣子(通称:めんま)が遊んでる最中に事故で亡くなってしまう。

残された5人は高校生になったが、彼らの間には大きな溝ができてしまっていた。
かつては皆のリーダー的存在だった宿海仁太(通称:じんたん)は、めんまの死に負い目を感じ、さらに母親の死や高校受験の失敗が重なって引きこもりになってしまっていた。

そんな夏のある日、じんたんの前に死んだはずのめんまが現れる。
自分以外の人間には見ることも触れることもできないめんまを自分の不安定な精神が生み出した幻覚と考えたじんたんは、めんまの叶えてほしい「願い」を探っていく。
それをきっかけに、それぞれ別の生活を送っていた超平和バスターズは再び集まり始めるのだが…。



戻らない過去への憧憬と多感な少年少女たちの心の機微を切り取った青春アニメで、ある意味普遍的なテーマを扱っている。
やっぱり、SFとか魔法とか過剰な美少女よりかは、こういう人間ドラマのみで勝負したアニメの方が幅広い層に支持されるよね。

じんたんにしか見えないめんまをなんとか成仏させてやりたいと奮闘する物語で、その中で少年少女たちの心の叫びや過去の清算なんかが描かれる。
みんなが大好きだっためんま、その死と、後悔・未練・負い目・罪悪感…。
それぞれ負の感情を心の奥底にしまい込んで、生きてきた数年間。

それが、突然めんまが見えると言い出したじんたんによって、さらけ出される。
じんたんのせいで、清らかなだけじゃない、封印されるべき感情があふれだす。
(めんまの母親のエピソードが一番黒い。母親に対する他の家族の立ち位置とかも含めて面白い)

あなる(無垢な子供たちがつけたあだ名で他意はない)がじんたんに当時から片思いということは早々に分かるし、ゆきあつがじんたんにライバル心を抱いていたことも分かりやすい。
でも、その感情を隠したまま彼らは大人になろうとしていた。めんまの死という悲劇と一緒に本心を封印してしまった。
そんな彼らのエピソードをひとつひとつ丁寧に紐解いていった、そんな印象のシリーズだった。

じんたん自身も相反する感情を抱えている。
めんまを成仏させてやりたいという思いと、ずっとめんまと一緒にいたいという願望。
終盤はそんな自分への自問も描かれた。



最後の最後にめんまの願い事が明かされるが、けっこう拍子抜けかもしれない。
なんだそんなことだったのか、とある意味で安心もするけど。
ありきたりと言えばありきたりな答えだったが、物語はそこまで充分に超平和バスターズのそれぞれの心情を描いてきているので、まあそれでいいんだと思う。
最終回でドーンと泣かされるというよりは、各話ごとの演出で目頭を熱くさせられた印象だ個人的に。

あと、めんまの可愛さか。
成長した姿で現れたといっても、まだまだ華奢であなるやつること比べても小さいし、言動や動きが幼いこともあって高校生と同い年には見えなかった。
そこはあれか、死んだ人間ゆえに毒が抜けているのか…。

めんまの可愛さと、作画の良さ、そしてストーリーの面白さと、ハイクオリティにまとまったアニメだと思う。
長井龍雪監督を始めとするあの花スタッフは、昨年2015年には今作と同じく秩父を舞台にした青春アニメ「心が叫びたがってるんだ。」を制作・公開。
現在は、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」が長井龍雪監督で放送中だ。
やはりどちらも人間の心の機微を丁寧に描いている印象がある。
今後とも注目のアニメ監督であることは間違いないだろう。



あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
【監督】
長井龍雪
【キャスト】
入野自由
茅野愛衣
戸松遥
櫻井孝宏
早見沙織
近藤孝行