仙台を拠点に活動するアイドルグループ「Wake Up, Girls!」(WUG)の活躍を描くシリーズ最新作。
続・劇場版と銘打たれた今回は、前編「青春の影」、後編「Beyond the Bottom」からなる二部構成。昨年9月の前編公開に続いて、12月には後編が公開された。
東京での挫折を経験し、いちからアイドルの祭典に向けて奮闘する少女たちの姿が描かれる。

前編は映画館に4回も観に行ってしまったくらい好きで、後編も結局なんだかんだで年をまたいで4回観に行った。
もちろんシアター限定版のBlu-rayも抑えてあるのでいつでも家で見られるのだが、やっぱり映画館で観るのが一番だなーと思う。
映画館で観ていると若いカップルや中年くらいの夫婦で来ている人たちも見受けられ、着実にWUGが浸透してきたなあと感じて勝手に嬉しくなる。



東京進出で現実の厳しさを再び味わったWUGちゃんたちが反撃の狼煙を上げるまでが、前編「青春の影」で描かれた内容だった。
そこからの後編「Beyond the Bottom」は、また仙台に戻り、年末に開催されるアイドルの祭典へ向けてイチからのスタートとなる。

後編もいろいろと問題が浮上する。
参加曲の制作者の問題や、メンバーの進退問題、地方行脚も金銭的にはギリギリだったはずだ。
しかし、前編のような迷いはなく、ただ一つの目標に向かって進み続ける希望に満ちた内容だった。

Beyond the Bottom=どん底を越えて…。
では、後編における「どん底」とはなんだったのか?
いろいろ考えたのだが、このタイトルは前編のことを言ってるんじゃないかと思う。

後編でどん底を味わうのではなく、前編で、あるいはこれまでのシリーズで味わった苦しみを越えて歩き出したのが後編なのではないか。
つまりBeyond the Bottomとはシリーズを総括する言葉でもあるのではないだろうか。アニメ「Wake Up, Girls!」は、少女たちがどん底を越えていく物語だと言える。

もちろん、WUG最大の危機として、メンバーの離脱エピソードも描かれたりする。
だが、問題自体よりもむしろ彼女たちが問題にどう向き合ったのか…の方が遥かに重要なんだと思った。旧劇場版やTVシリーズから大きく成長したことが伺える。
だからどっちに転んでも「どん底」ではない。どう転んでも彼女たちの前に未来は広がっているし、だから前に進むのだ、彼女たちは。


後編ではI-1 clubの前センター・岩崎志保にもスポットが当たる。
トップアイドルグループのセンター争いに敗れた彼女が、真夢と同じようにアイドルをやることの意味を思い出す。
真夢と志保、二人の関係に変化が訪れたのも良かった。

また、スピンオフコミックの主人公だった高科里佳がアニメの方に初登場した。
志保のアンダー(代役)だった里佳が、私はI-1で一番好きかもしれない。(スピンオフの方も読みたくなった)
憧れの存在であった志保がI-1を離れたことで、里佳は目標とする人がI-1の外にいることになる。里佳は永遠にチャレンジャーであり、だからずっと輝き続けるかもしれないと、そんなことを思った。

この高科里佳の参戦や、I-1のセンターを勝ち取った鈴木萌歌の心情を挟み込むことで、作品が一気に広がった気がする。
WUG以外のアイドルの出番を増やすことで、アイドル一人ひとりがこのアイドル戦国時代の主人公なのだという気がしてくる。
ネクストストーム、I-1、WUGがそれぞれの想いを懸けて集うクライマックスは、まさに「アイドルの祭典」と呼ぶに相応しい場所だった。

ネクストストームの曲が流れる中で円陣を組むI-1 club。
I-1 clubが歌っている最中に戻ってきた志保たちと笑顔を交わす真夢と佳乃。もはや真夢と志保の一対一の関係ではない所に嬉しさがある。
そして「Beyond the Bottom」のイントロと共にステージに浮かび上がるWUGの白い輝き。なぜ架空のアイドルたちにこれほどまでに惹かれるのだろう。

さらに、伏線の回収もひとつ素晴らしいのがあった。
詳細は伏せるけど、それも新登場のキャラクターに関するエピソード。
でも実は過去作にほんの少しだけ登場(?)していて、なんと旧劇場版まで遡って回収したのが驚き。何年越しの伏線回収なのか!
そもそもその話はもう終わったとみんな思ってたからね!?忘れようとさえしてたからね!?それをぶり返して良い思い出に変えてしまうとか凄すぎるわ!このアニメ追いかけててよかったわ!!(公開前に呟いた予想ツイートがドンピシャで少し焦ったわ!)



でもやっぱり劇場アニメとして見ると、所々怪しい作画と53分という短い尺が気になってしまったりもした。
作画については前編が神作画だったので余計に落差が気になる。もちろんTVシリーズのオンエア版と比べたら充分過ぎる出来だけど…。
そもそも続劇では過去作よりも線がとりにくいキャラデザになってるって何かのインタビュー記事で読んだ気がする。
ただ、終盤のアイドルの祭典は瞬き出来ないカットの連続だった。

尺の短さはもうある意味でそれが快感になりつつもあるんだけど(笑)
でもやはりメンバー離脱エピソードでは時間足りない感じがあった。(どう足りなかったのかは書けない)
彼女の出番を削ってでも、序盤で事件を起こしてクライマックスの手前で回収すべきだったと思う。
クライマックス手前での「グリーン・リーヴス、なめんじゃないわよー!」はもう完全にノリと勢いだったし(笑)

あと個人的な想いだけど、白木・早坂・松田の出番が少なかったのが気になった。
だからこそアイドル自身がよく見えてきて、アイドル戦国時代と呼べるような作品になったんだと思うが…。
でも前編でイイキャラを披露したカルロスも出番少なかったのはやっぱ残念かな…。
やっぱ脇役輝かせるならTVシリーズなのかな…。(まあそれでも白木GMの若い頃とか見れるので最高ですけどね)


エンドロール後の結末については、当初はどう受け止めればいいのか分からなくて動揺した。
最初の劇場版「七人のアイドル」から2年。テレビシリーズ、続劇場版と続いてきたこのシリーズに、ついに一つのピリオドが打たれた、最初はそう思い戸惑った。
WUGの物語はここで終わってしまうんだ、と。
主題歌もエンディングにふさわしすぎて、感動と不安が同時に押し寄せてきた。

でもその不安は公開後すぐに意外な形で払拭された。
監督のコメントや新プロジェクトの話題に触れ、後編のラストは通過点だと、まだWUGを応援させてもらえるんだと、安心した。

夢はでっかく紅白出場よぉー!
最初に丹下社長が掲げた目標を彼女たちが成し遂げるまで、物語は続いていくのだろう、というか続け!

そしてそれを成し遂げるためには、我々ファンの努力が必要不可欠だということを、続劇で大田たちが教えてくれたような気がする。
ウオオオオオオオ!!
いまこそ!数あまたの野伏に立ち向かう七人の侍の如くッ!!!
我々もWUGちゃんとッ、思いをひとつにしっよおッッッッッ!!!!!!





Wake Up, Girls! Beyond the Bottom
(2015年/日本)
【監督】
山本寛
【キャスト】
吉岡茉祐
永野愛理
田中美海
青山吉能
山下七海
奥野香耶
高木美佑
大坪由佳
日高のり子
浅沼晋太郎