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ヴィジット
(2015年/アメリカ)
【監督】
M・ナイト・シャマラン
【キャスト】
オリビア・デヨング
エド・オクセンボールド
ディアナ・デュナガン
ピーター・マクロビー
キャスリン・ハーン

*感想

M・ナイト・シャマラン監督の新作は久しぶりのスリラー映画。
ある姉弟が初めて訪れた祖父母の家で体験した恐怖を描く。



主人公は姉ベッカと弟タイラー。
シングルマザーの母親が新恋人とクルーズに行く間、二人は母方の祖父母の家に一週間滞在することに。
母親は若い頃、家を飛び出したきり両親とは和解できておらず、姉弟が祖父母に会うのは初めてのことだった。

ベッカはこの旅を記録映画にすることを決め、弟と二人、2台のカメラを回して一部始終を撮ることにした。
この映画は全編に渡って、ベッカとタイラーによって撮影された映像という体裁、いわゆるPOV(主観ショット)という手法をとっている。

このPOVという手法が功を奏し、またシャマラン監督の巧みな脚本の妙もあって、非常に面白いホラー映画になっている。
面白い、というのは文字通りで、この映画、ホラーなのにところどころ凄く笑えてしまう。

笑いというのは緊張からの緩和で起こると言われるけれど、そのお手本のような脚本で、しっかりと恐がらせた後にクスッと笑えるようなユーモアがけっこう用意されている。
恐怖そのものにもシュールな面白さがあって、見てる最中は次にどうなるか分からないと怖がっていたが、一度結末まで見たなら2度目の鑑賞は全シーン笑えるんじゃないだろうか。
それくらい恐怖と笑いがバランス良く含まれていた。

さらにあんなエンドロール見せられたら支持するしかない。
ちゃんと怖いけど、観終わった後はみんなほっこり笑顔になるような(感動作でもないのにだ)、そんな作品だった。





*以下、ネタバレを含むので閲覧注意!!





全編POVという演出が物語へ観客を引き込むのに非常に効いていた。
物語も終盤になっていよいよ姉弟に身の危険が迫るようになると、「果たしてこのビデオは誰が編集したのか?」という疑問が頭をもたげてくる。

冷静に考えればそれは当然姉弟自身の手によるものだということになり、つまり姉弟は生き残ったのだと予想がつく。
ただ、その時点においても、実は犯人あるいは第三者の手によって編集されたのではないか…とか、そもそもが祖父母を巻き込んだフェイクドキュメンタリー風の自主制作映画だったのではないか…とか、あくまで可能性の話としては残る。

特に後者の方を考えだすとさらに訳がわからなくなってしまう。
作品内では事実でも、映像として見ているものは全部劇中劇であるというフィルターを通しているわけだ。
ベッカが観客に対してどこかで嘘をついていてもおかしくない。

これはベッカがこの映像を見るだろう人たちに仕掛けたフェイクなのか、シャマラン監督が観客に仕掛けたフェイクなのか。(どちらにしても同じことだけど)
そもそもこの映像を撮ったのはベッカとタイラーだから、シャマラン監督は関係ないんじゃないかとか…ああ混乱してきた。



ただひとつだけ言いたいのは、ベッカとタイラーの行動が今時の若者を考察する上で非常に参考になるということだ。

ベッカとタイラーは祖父母の家で身の毛もよだつような体験をし、命の危険まで感じたわけだが、その体験を後日編集して1本の映画にしてしまう。
それがこの「ヴィジット」という映画でもあり、最後のユーモラスな一文「弟が是非にと言うので…」から察するに、YouTubeなどの動画サイトで公開したのではないだろうか。タイラーが自身のラップを公開して再生回数を自慢していたことからも、そういうコンテンツを利用していたことが分かる。(ちなみに再生数は3桁で多くはない)

もしそうなら、この動画は姉弟が経験した中で桁違いに最高の再生回数を記録したはずだし、この姉弟は一躍有名人になっただろう。
この映画のエンドロールには、そんなちょっと楽しそうな未来も期待させられるのだ。

普通ならトラウマとなって長い間苦しむような悲惨な体験を、「ネタ」として不特定多数に向けて公開し、あまつさえ笑い飛ばしてしまうメンタリティ。
再生回数や「いいね」を求める承認欲求が、個人の負の感情を飛び越えていく。
私もツイッターで自虐ネタを呟くことがあるが、それと同じだ。

この映画は、今時の若者たちが、「祖父母の家に行ったら殺されかけたwwwww」みたいなノリで自虐を披露する、そんな裏の意味を持ってるんじゃないだろうか。
つまりシャマラン監督は、ユーモラスなホラー映画を撮っただけではなく、その裏に最近の若者像を描いているのだ。
これが、狙ってやったことならば、うん、たしかにこれはシャマラン復活作と言えるのかもしれない。



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