物語の最初と最後はいらない
石川智晶
MATERIAL WORLD, 2015
1. 物語の最初と最後はいらない
2. 兄妹~aniimouto~
3. 水のないプール
4. 数字
5. landscape
6. 物語の最初と最後はいらない~左目~
7. ヘブンリーブルー
8. 逆光2015~許されざる者ここにあり~
9. 落涙2015~奪われし背中~
10. 涙腺2015~蒲公英情歌~
*感想
9月にリリースされた石川智晶のアルバム。
フルアルバムとしては2012年4月の「この世界を誰にも語らせないように」以来、3年半ぶり。
まあその間にTVアニメの主題歌やミニアルバムの発表はあったわけだけど。
さすがに3年前の作品と比較すると少し印象が変わったかな。
アニメのタイアップが豊富だった頃と違って、今作は「戦国BASARA」関係に限られているし、曲数とかボリュームの面で見ても今作は小ぶりな印象。
その分、一曲一曲がぎゅっと凝縮されてる。毎回言ってるけど今回も「濃い」です。
今回も例の意味なしコーラスで開幕。
表題曲でもある1曲目「物語の最初と最後はいらない」から安定して飛ばしてる感じ。
物語の始まりも終わりも必要なく、ただ移ろいゆく「今」だけを生きているという歌。
相変わらずの哲学と世界観。
2曲目「兄妹 〜aniimouto〜」は珍しく意味のあるコーラスアクションが印象的。
なんだかセンセーショナルな感じがする曲だし、「手入れをし過ぎた花壇/完璧な土の上/思い描いた色にもう咲かないだろう」という歌詞が好きだ。
3曲目「水のないプール」は、タイトルと裏腹に水の底にいるような音楽。
「水のないプール」というのは、主人公の空虚な心情を表しているんだろうけど、それは水底に沈められたような気持ちでもあるのかもしれない。
4曲目「数字」は、このアルバムで一番明るくてポップな曲。
イントロからイェイイェイ言ってるし、ギターストロークがジャカスカ鳴ってるし、Aメロもとてもリズミカルで気持ちいい。
5曲目「landscape」は、エレキギターの唸り声が印象的なスローナンバー。
スローな曲って個人的にあまり好みではないんだけど、これは一聴して大丈夫だった。
6曲目「物語の最初と最後はいらない 〜左目〜」。
インタビュー記事によると1曲目は右目で見た世界、6曲目は左目で見た世界、つまり別の視点から見た別バージョンということらしい。
リミックスとか別アレンジとかではなく、あくまでも別の曲。アーバンなアレンジがオシャレだ。
7曲目「ヘブンリーブルー」。
同じ日にリリースされたKalafinaのアルバムにも「heavenly blue」という曲が収録されていて、偶然の一致が気になっていたのだが、こちらは朝顔の洋名から取ったということだ。
ゲーム「戦国BASARA4 皇」のエンディングテーマで、同作に登場する千利休を題材にとったそうだ。
秀吉を茶会に招いた利休が朝顔を一輪だけ差してもてなしたという話がモチーフになっている。
8曲目から10曲目は、過去に発表した曲のセルフカバーとなっている。
「逆光」「涙腺」は前作「この世界を誰にも語らせないように」から、「落涙」は前々作「誰も教えてくれなかったこと」からのリアレンジ。
これらも「戦国BASARA」絡みの曲であり、そもそもゲームメーカー側からゲーム10周年ということで再リリースを要望されたのだとか。
いずれもドラマチックな演出で再構成されている。
楽器構成から尺からコーラスアクションから何から何まで変わってるので、まったく違う印象に仕上がっている。
原曲との聴きくらべも楽しい。
歌詞世界が相変わらず独特で今作も難解。思わず歌詞の解釈を探してしまいそうになる。
インタビュー記事によると、暴力的に言葉を投げつけた歌詞らしく、そこまで厳密なストーリーは設定されてないのかもしれない。
とにかく、独創的なフレーズが確かな歌唱力で歌い上げられていて、石川智晶ここにあり、という感じだ。

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