図書館戦争LM01

図書館戦争 THE LAST MISSION
(2015年/日本)
【監督】
佐藤信介
【キャスト】
岡田准一
榮倉奈々
田中圭
福士蒼汰
栗山千明
西田尚美
橋本じゅん
松坂桃李
相島一之
石坂浩二

*感想

検閲の名のもとに本や言葉が狩られていく世界。
本を読む自由を守る組織・図書隊で日々厳しい訓練と図書館業務をこなす笠原郁は、かつて自分を良化隊から守ってくれた憧れの「王子様」が、やたらと厳しい上官・堂上なのではないかと疑念を抱いていた。

そんなある日、図書特殊部隊は、この世に1冊しかない「図書館法規要覧」の警護を命じられる。
図書隊の存在の根拠であり、自由の象徴でもある図書館法規要覧が、茨城で行われる芸術の祭典に特別に出展することになったのだ。
郁や堂上たちは警護の任務に就くが、それは図書特殊部隊を陥れようとする何者かの仕組んだ罠だった…。



実写版「図書館戦争」の続編「THE LAST MISSION」。
映画としては2作目だが、実写版としては2013年の映画第1作と、TVスペシャルドラマ「ブック・オブ・メモリーズ」(2015年)に続く3作目。
LASTと付いてるから最終作のつもりなんだと思う。

「ブック・オブ~」を見ていなくても大体は意味が分かると思うけど、前作で登場した新キャラクターが今作でも出たりするので、「THE LAST MISSION」を観る前に一応見ておくことをオススメしたい。
何より「ブック・オブ~」はそれ自体が面白い。

では、この「THE LAST MISSION」はどうだったかというと、最終作に相応しい仰々しさはあったものの、イマイチ乗り切れない映画だった。
全体的に暗く重苦しい雰囲気があって、ドキドキハラハラというよりはひたすら苦しい内容。
その苦しさが最後に報われれば良かったのだが、残念ながらカタルシスはなかった。

原作の第2巻「図書館内乱」から郁が蔵書の不正廃棄を疑われ査問を受ける終盤のエピソードと、第3巻「図書館危機」の終盤から茨城県展をめぐる良化隊との激しい攻防のエピソードが使われている。
…といってもかなり脚色されており、特に映画の後半は実写版オリジナルの展開になっていくと言ってもいいだろう。

個人的にはこのオリジナルの要素があまりよろしくなかったと思う。
原作を再構成して見せること自体は良いと思うのだが、なんとなく原作との相違に気が行きがちになってしまった。
「そこはそうじゃないんだよなー」と思いながら観てしまった。

例えば、玄田隊長の勇ましさの表現ひとつをとっても、原作と映画では真逆と言ってもいい描写。
例えば、映画版では郁の俊足については語られていなかったはずで、終盤の展開があまり活きてない。
例えば、話して分かる相手なら、そもそも検閲と表現の自由をめぐっての武力抗争なんて起こってないのでは?

最終作に期待していた戦闘も、中盤で戦闘が始まった後はダラダラと戦闘状態が続く中でクライマックスまで行ってしまう。
圧倒的な戦力を投入してきた良化隊にどんどん追い詰められていく図書隊の姿は、まさにジリ貧といった感じで、観ていてとても苦しかった。
終わりの見えない戦闘シーンというのはツライんだなと思った。

それと並行して、関東図書基地に残っている柴崎や仁科司令の努力も描かれるが、正直現場の苛烈な戦闘に比べてしまうとなんということもない話だ。
現場ではどうしようもないからトップ同士で話を付けて戦闘終わりました…という感じ。なんだかな~…。

戦闘シーンは中盤のは中盤で一度終わらせておくべきだったと思う。
中盤の戦闘で地方の図書基地の問題点を浮き彫りにさせ、その後のドラマパートを経て終盤の戦闘、という流れで良かったと思うのだが。
この映画に限らず、アクションシーンが3つに満たない作品ってなんだかノレないのだ。

図書館戦争LM

良かった所もある。水戸基地の女性防衛員が可愛かった。
まあそれは半分冗談で、図書特殊部隊に迫る良化隊の描写がとても怖いものがあった。

黒い戦闘服に黒いヘルメット、黒い盾、黒尽くめの男たちが圧倒的な物量で襲ってくる恐怖。
とりわけ、階段状の地形を隊列を崩さぬまま一段ずつ降りてくる様子は、ほんのワンカットだが一見の価値がある。
検閲という権力が迫ってくることの意味を映像で表わしているんだと思う。ディストピアって感じがした。
あの整然とした圧力が検閲社会の実態なのかもしれない。

その他、これはシリーズ通してなのだが、良化隊の人間も描写されるのが映画独自だ。
相島一之が演じる実行部隊の指揮官。伝達以外のセリフを喋らない人物だったが。

原作では、良化特務機関側の人物描写は皆無であり、これは映画独自の良かった点だと思う。
ただ、この設定をまったく活かせてないのが残念だ。
ただいるだけの人で、自分の主義主張などはついに語られなかった。
本を守る側も人間なら、奪う側も人間。お互いの掲げる正義がぶつかり合う描写などがあれば、もっとこの作品にも深みが出たと思うのだが。

結局は、堂上・郁の恋愛パートを岡田・榮倉で楽しむための映画だったのかもしれない。
原作に通奏してあったテーマ、自由であるべき表現への様々な圧力については、テレビ局製作の映画ということであまり深く切り込めなかったのかもしれない。

ちなみに原作の本編ラスト「図書館革命」では表現の自由をめぐる物語がたっぷりと描かれているので、「THE LAST MISSION」のような戦闘シーンはないけれど、ドラマスペシャルなどでやっていただければ、シリーズとして有終の美を飾れるのではないだろうか…。