図書館革命 図書館戦争シリーズ④
有川浩
角川書店 角川文庫

*感想

図書館戦争シリーズ第4弾にして、本編の完結編。
シリーズ自体は別冊の1、2と続くんですが、とりあえず本編はここで結末を迎えます。
物語も珍しくプロローグで始まりエピローグで終わるという章構成。
今回は1冊がまるごとひとつの大きな事件を語る内容になっていた。

ある日突然起こった国際テロリスト集団による原発襲撃事件。
テロの手口が著作の内容と酷似していたため良化隊に追われることになった人気作家・当麻蔵人。
表現の自由を奪われかけている彼が駆け込んだのは、郁が所属する関東図書基地だった。
そのため、郁と堂上の初デートは中断されてしまう。

当麻蔵人の執筆活動の規制を特例として認めさせることで検閲権の強化を企むメディア良化委員会と、その前例によって訪れる検閲が蔓延る未来を断固拒否する図書隊。
図書隊内部の裏切り、未来企画との協力…。あらゆる手を用いて当麻を守ろうとする図書隊の運命は…。



読み終えた後は正直けっこう戸惑った作品。思ってたのと違う、違う…と思いながら読み進めた。
もちろん結末に相応しい内容・スケールだったし、本編最終巻として風呂敷をたたむ役割も分かるけど、何か、図書館戦争ではない本を読んでいるような気がした。

1~3巻までは読みながら感情の起伏がすごかったんだけど、今作は感情の振り幅が思ったよりもない。
つらく苦しい描写が続くせいだろうか。笑えるシーンが少ないからだろうか。
前作まではシリアスとギャグのバランスがよく取れていたと思う。今作は圧倒的にシリアス寄りだ。

「革命」のタイトルどおり、図書隊をめぐる情勢が変革する姿を描いている。
それが一抹の寂しさを煽るのかもしれない。もはや楽しかったあの頃には戻れない的な。
エピローグを読んで、感動というよりも寂しさを感じてしまった自分がいる。

もうこれは個人的な感じ方なのかもしれない。
「青春」を扱っている映画やアニメなどを見ると、その青春が終わってしまうということに無性に寂しくなってしまうことがある。
彼らの、彼女らの、青春が、日常が、永遠に続けばいいのにと思ってしまうのだ。

それと同じようなことを「図書館革命」にも感じた。
物語はピンチをチャンスに変え力強く前進し、未来は明るい希望に満ちあふれている。
ヒロイン郁が望んでいた世界に近づいている。
だが、私は心のどこかで、いつまでも変わらない図書館戦争の世界を望んでいたのだ。

それは武器を取り血を流して本を守るという狂った世界だ。
そうしなければもっと世の中が狂ってしまうという残酷な世界だ。
その残酷な世界の中で生きるヒロインをもっと見ていたいなんて、私は矛盾しているかもしれない。



作品としてはとても面白いと思う。(個人的には寂しくなってしまうけど)
大規模戦闘はないものの、東京―大阪間を舞台にしたミッションが描かれる。
このミッションがまたなんとも心細い…。

図書隊と良化メディア委員会、未来企画の関係にも、決着とまではいかないが、変革をもたらすことで変わりゆく未来を示唆している。
第1作「図書館戦争」から描き続けている現代社会に通ずる問題点を、ちゃんと終わらせているという点でやっぱり最終作だと思った。

個人的には、玄田隊長に大暴れしてほしかったし、柴崎と手塚の急接近も(最終作とはいえ)なんだかな~という感じ。手塚はずっと柴崎にからかわれていてほしかった。
結局それも、「青春」と「日常」をずっと見ていたいという私の願望なのだが。
別冊を読めよ、という話ですね。