アイアンマン3
(2013年/アメリカ)
【監督】
シェーン・ブラック
【キャスト】
ロバート・ダウニー・Jr
グウィネス・パルトロー
ドン・チードル
ガイ・ピアース
レベッカ・ホール
ジェームズ・バッジ・デール
ジョン・ファヴロー
ベン・キングズレー
ウィリアム・サドラー
ミゲル・ファーラー
ポール・ベタニー

*感想

実写映画「アイアンマン」シリーズの3作目にして今のところの完結作。
ただし、2作目との間に「アベンジャーズ」を挟んでおり、それを踏まえた物語になっている。
MCUシリーズとしては7作目となり、この後のアベンジャーズ2作目ではアイアンマンももちろん登場したし、今後は他のヒーローの作品へも出張する予定らしい。

物語は、「アベンジャーズ」でトニー・スタークらヒーローたちが宇宙から来た悪の軍団を撃退してから1年後。
その戦いがトラウマとなり、不眠症やパニック障害に悩まされるトニーは、恐怖心を和らげるために次々とアーマーを開発しアーマー依存症に陥っていた。

そんなある日、会社を任されたポッツの元に研究所A.I.M.のキリアンが訪れる。
かつてトニーに煮え湯を飲まされた経験のあるキリアンは、人間の能力を上げる危険な研究を成功させていたが…。


自宅を破壊され、アーマーは電池切れ、遠く離れた土地でやさぐれてみたり、パニック障害を起こしてみたり。
今までのトニー・スタークとは思えない一人の脆く情けない人間がそこにいた。
(酒に溺れるのとは少し違う落ち込み方だ)

彼をそうしてしまったのは、1年前のチタウリ軍団の攻撃がきっかけだ。(「アベンジャーズ」の話)
遥か宇宙の彼方からワームホールを通って送り込まれてきた異形の侵略者たち。
ヒーローたちは果敢に戦ったが、その物量の前にはなす術がなかった。

宇宙には悪意を持った敵がいる、そしてその悪意は今や地球に向けられている。
トニーはそのことを身を以て知った。それは体…いや心に刻み込まれ、彼から安眠を奪ってしまった。
あの時は防げたが次は防げないかもしれない…。

トニーはなぜ、そんなにも深刻な病を患っているのだろうか。
昔の彼…、兵器産業のトップとして自由奔放に振る舞い、自社の兵器がまさか自国に敵対するテロ組織に渡っているなんて思いもしなかった彼が、なぜ本当に来るかも分からない侵略者の存在を恐れるのか。
(まあパニック障害ってそういうものなのかもしれないが)

一つには、彼が元来、真面目な男であるということが言えるかもしれない。トニーは不謹慎であっても怠惰ではない。
もう一つは、「アベンジャーズ」で他のヒーローと共に世界の危機を回避したことが、逆にトニーに強い責任感を生じさせたのではないか。
一度世界を救ったことで、世界を救うことの難しさを思い知ったのかもしれない。


そんな彼が、孤独な旅で少年と触れ合い、メカニックとしての自信を取り戻していく展開はとても良いと思った。
どん底から這い上がっていく主人公。
手作りの武器を持って敵のアジトへ乗り込んでいくのも面白いし、遠く離れた所から主を目指して飛んでくるアーマーなんてとても健気だ。

個人的な見所は飛行機から投げ出された人々をアイアンマンが救助するシーン。
人間たちが生身で宙に舞うのを見て、なんてエグい殺戮シーンだと思ったが、その後ちゃんと助けに行く。高度があるので間に合う(笑)

アイアンマンがパニックを起こした人々(当然だ)に一人ひとり声をかけ、励まし、行動を促す姿は、まさにヒーローの名に相応しかったと思う。
こういう描写って1作目2作目ではあっただろうか?
実際にスカイダイビングをして撮影したという逸話も面白いが、それ以上に「人々を救う」という意味で重要なシーンになっていると思う。

そしてクライマックスの港湾での盛大な花火が、やはりこの作品のテーマとシリーズの締めを担っていると思う。
アーマー依存症で心の弱さをさらけ出した主人公が、その依存症の副産物である数十体のアーマー軍団を惜しげも無く戦いに投入する。
弱点を逆に武器にしてしまうのだ。それは「弱さの克服」とは少し違う意味を持つように思う。己の弱さを受け入れるということなのかもしれない。

そんなわけで、3作目に相応しい密度の濃い物語が展開していると思う。
しかし、2回見てもそれほど感動しなかったのは、エンタメとしての機能も充分に果たしていてそっちに目が奪われるからか。
ドン・チードルがポロシャツ着てるだけで面白かったりしてちょっと困る(笑)