図書館内乱 図書館戦争シリーズ②
有川浩
角川書店 角川文庫
*感想
図書館戦争シリーズ第2弾。
新キャラやゲストキャラが多数登場し、ヒロイン郁を始めとする主要キャラクターたちの家族関係、人間関係、恋愛事情なんかも描かれる。
今回も各章(話)の解説と所感…みたいな感じでまとめていこう。
第1話!武蔵野第一図書館に郁の両親襲来!
以前から親の職場見学を心底嫌がっていた郁だが、ついにその時は来た…。
だいじな娘が戦闘職種に就いてることを知らされていない両親と、堂上班を巻き込んで事実を隠蔽する娘…。
お父さんへのレファレンス(利用者のニーズにあった最適な本を紹介するサービス)は笑った。
郁と親との確執、とりわけ母親・寿子との噛み合わなさが少し辛そうだったが、こういうのはどこの親子でも多かれ少なかれあるのかもしれない。
親って子供の心を分かった気でものを言うからね…。
逆に、父・克宏の方は厳格なイメージだけど、こちらの方は郁の気持ちを慮っていたと思う。
というか、お父さん気づいてるよね…。そして堂上も認められてしまったね…w
第2話は小牧のコイバナ!
小牧と10も歳の離れた幼馴染み毬江ちゃんが登場!犯罪です!
2人の仲睦まじい様子を見ていろいろウワサする郁と柴崎。こういうところは郁もやはり女子なんだな。
差別とは何か、ということも少し描かれたけど、元々は良化特務機関の無茶な難癖に端を発しているので、目から鱗というほどでもないか。
クリティカルヒットというよりは、雑魚キャラを鮮やかに倒した感じ。
物語の中で登場した「レインツリーの国」という本は、著者・有川浩によって実際に出版され、さらに映画化もされ公開が迫ってきてるようですね。
第3話は柴崎の回。
なんと柴崎に言い寄ってくる男性利用者が登場。キサマ〜〜ッ!
その謎の男・朝比奈と、週刊誌「新世相」が出した過激な報道に対する図書館側の対応、さらに図書館内部の勢力図の書き換えなどが描かれる。
美人で事情通で誰とでもうまく関係を築ける柴崎の、黒い内面にザックザック切り込んでいく章でもあり、美女の仮面の下を覗き込むという意味でとても読み応えがあった。
誰しも心に黒い部分は持っていると思うが、柴崎の場合、情報に精通しすぎて知らないままでいられないつらさもあるのかな、と思った。
第4話。表現の自由とはなんぞや?という話と、手塚と兄・慧(さとし)の確執が語られる。
新しい図書館長の思惑や、図書隊内部の原則派・行政派の主導権争い、第5話にかけて、ある意味戦闘よりもキツイ、郁の闘いの日々が描かれる。
今作はアクションは少なめ。図書隊と良化特務機関が撃ち合うといった描写はない。
しかし、「図書館内乱」のタイトルの通り、図書館界の内部事情についてたっぷりと語られ、けして一枚岩ではない、むしろ敵対すらしかねない派閥の姿が描かれる。
ややこしい大人の事情に晒されながらも、バカなりに清廉な気持ちで行動する郁が眩しい。
郁の両親、小牧の年下の恋人、手塚の兄、柴崎の内面、各主要キャラのパーソナルな部分を描くと同時に、図書隊・図書館界の事情を俯瞰して描いた本作。
前作の世界観に深みと広がりを持たせ、作品への愛着をより強固なものとすることに成功している。
そして、最後には(郁にとって)衝撃の真実が明かされる…!
周囲も読者もとっくに知ってたけどね…。
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