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ターミネーター:新起動/ジェニシス
(2015年/アメリカ)

【監督】
アラン・テイラー
【キャスト】
アーノルド・シュワルツェネッガー
ジェイソン・クラーク
エミリア・クラーク
ジェイ・コートニー
イ・ビョンホン
J・K・シモンズ
マット・スミス

*感想

「ターミネーター」シリーズの最新作で、映画としてはこれで5作目。
前作「ターミネーター4」のように、今回も更なる続編・新三部作を見越したリブート作品。
「新起動」という邦題はまさにそこを意識したものだろう。(ファン的には「再々起動」という感じだろうけど…)

アーノルド・シュワルツェネッガーとしては「ターミネーター3」以来12年ぶりのシリーズへの出演となる。
「T4」では若い頃の顔だけがCG合成されてちょっとだけ登場していたが、今作は序盤からラストまで主要な登場人物として活躍してくれる。
御年68歳(!)のシュワちゃんだが、今作はその「老い」すらも活かした人物造形になっている。

ジョン・コナーを演じたジェイソン・クラークは「猿の惑星:新世紀(ライジング)」でも重要な役だった。「新世紀」「新起動」となかなか忙しそうである(笑)
カイル・リースを演じたジェイ・コートニーは「ダイ・ハード/ラスト・デイ」でジョン・マクレーンの息子を演じた俳優。
T-1000を演じたイ・ビョンホンはアメリカ映画では「G.I.ジョー」のストームシャドーだし、そう考えると超豪華なキャストが揃ってる気がする。

加えて「セッション」の鬼教官を演じたJ・K・シモンズの毒気の抜けた演技を見せられたらもう…(笑)
「強いサラ・コナー」を演じた新鋭エミリア・クラークは強い眼差しとあどけなさの残る表情が印象的。
どこか「お隣のおねえちゃん」という感じの親近感湧く美人だった。





*以下、結末についての重大なネタバレを含むので、未見の人は閲覧注意!






まあなんだかんだ今作「T5」も興収的に奮わなかったようで、新三部作の話はT4の時と同じくなかったことになりそうな予感。(ところどころ続編の存在を匂わす演出だったのにね…)
内容の評価についても賛否両論な感じ。本当なら映画ファンがもっと盛り上がってもおかしくないシリーズの最新作なんだが…。
(吹き替えキャストに芸能人を使わなかったことは好評を得たようだ)

ただ、つまらない映画ではけしてない。(シュワちゃんのヘタな笑顔が不気味w) 
どこかノリきれなかった感じもあるにはあるんだが、それは私の理解が追いついていなかったのではないかと思う。
T5はシリーズ中で一番「難解」だった。


 
映画は2029年、スカイネットに人類が決戦を挑む所から始まる。
人類を率いるジョン・コナーの傍らにはカイル・リース。
このあたりはT4の再現みたいな雰囲気もなくはない。

人類は勝利するがスカイネットは最後の手段としてT-800をタイムマシンで1984年に送り込み、ジョンを産む前の母親サラ・コナーを抹殺しようとする。初代「ターミネーター」の物語のきっかけとなる出来事だ。
ジョンは、スカイネットの計画を阻止するため、志願したカイルをタイムマシンで1984年へ向かわせる。

84年にやってきたT-800。真っ裸の人型殺戮機械はチンピラから服を奪おうとする。
ここまではT1をなぞる形になっていて、観客は一度見たストーリーを改めて鑑賞することになる。
懐かしさとか、既知のものを見る感覚だ。「そうそう、ここでこうなってね…うんうん」

しかし、そんな感じで余裕かまして半ば上から目線で見ていると、その直後にとんでもない目に遭う。

なんと、T-800の目の前にシュワちゃんが現れるのだ!(ファッ!?)

これはいったいどういうこと?と誰しもがなるはず。
シュワちゃんの若い頃の顔をCG合成した青年T-800と、中年のT-800?がいきなりバトルを始めちゃうのだ!
この中年のT-800?は何なの?どこから送り込まれてきたの?何年からやってきたの?
わけのわからぬまま戦闘の成り行きを見守るしかない。もう既にこのとき私はT5の複雑なタイムラインに巻き込まれていたのだ。

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さらに登場する「最初から強いサラ・コナー」。
彼女に「おじさん」と呼ばれる白髪のターミネーターは、1984年よりもさらに過去、サラが幼少の時に彼女を襲ったT-1000から守った「守護者」だ。

この時の経緯も回想で語られるのだが、すべてが明かされるわけではない。
何故、スカイネットはT-1000を幼少サラに差し向けたのか。そしてその計画を知り、守護者を送り込んだのは誰なのか?
守護者を送り込んだ者の正体は都合の良いことにメモリーの破損で最後まで分からない。
結局、ここの謎は今作では明かされなかった。

一方、カイルの方もたどり着いた先でT-1000と遭遇するのだが、これも今までの展開ならばT-1000がやってくるのは「ターミネーター2」の舞台1995年で、84年にT-1000がいるのは意外な展開と言える。
スカイネットがT-800の失敗を見越してT-1000を好きな時代に送り込む「後出しジャンケン」みたいなことをやっているとしたら、ターミネーターがいつどこに現れても確かにおかしくない。
(スカイネットは奪われたタイムマシンを取り返すことに成功しているのだから)

さらに「別の時間軸の記憶」なんてものまで出てきてしまう(笑)
サラとカイルはそれに従い、スカイネットの元となったシステム「ジェニシス」が誕生する2017年へとタイムトラベルする。

思えば「ターミネーター」シリーズは常に「別の可能性」「理想の世界線」を模索する物語だ。
スカイネットはジョン・コナーのいない世界、サラがジョンを産まない世界、ジョンが大人にならない世界を望んでターミネーターを送り込む。
人間側は、ジョンが生まれ英雄となる世界、スカイネットが生まれない世界を求めて戦う。
しかし、その理想の世界線を観客が見ることはない。それはあくまで別の時間軸の記憶なのだ。



さらに今作はもう本当に驚きなのだが、ジョン・コナーが最強のターミネーターになってしまう。
もはや本末転倒というか、まさに新起動というか、話が180度変わってくる事態。
しかも「これは進化だ」なんて哲学的な話もちょっとチラつかせつつである(笑)
(個人的に悪役のジェイソン・クラークはハマってるというか違和感なかった)

ここまでくると、もはやジョン・コナーは敵であり、サラは息子を生まない方が良いということになってくる。
ジョンを生まなければ人類を救う英雄は誕生しないが、人類を救った後に人類をターミネーターに改造してしまうような指導者も現れない。(←悪いのはスカイネットだが…)

そして、とても面白いことに今作ではサラとカイルは結ばれずに物語は終わるのである。
お互いに好意を持っている描写はあるものの、物語は続く…といった感じの結末で、今後の2人の関係がどうなるかはわからない。
これはある意味、過去作のストーリーでは物語は終わらないと言ってるようなものである。

円環の物語を描いた映画「プリデスティネーション」でもそうなのだが、未来から来た人間と子供を作ってしまうとろくなことにならない。
生まれた子供は特定の世界線でしか存在できなくなるからだ。
未来人が過去に来なければ子供は存在しないことになり、未来人が過去に遡る理由のある未来がこなければならないとなった時点で、そこで時間の輪が閉じてしまう。

スカイネットはこの時間の輪の「スカイネットの脅威となるジョン・コナー」の部分を改変しようと毎回頑張っているわけだが、ターミネーターを過去に送ることでジョンの抵抗に遭い、その抵抗がジョンの誕生の理由となってしまう。
理想の世界線を探し求め、お互いに干渉しながら複雑に絡み合って閉じた時の輪を作り出している。
ジョンの父が未来から送り込まれたカイルならば、スカイネットはそもそも過去にターミネーターを送らねば良いような気もする?(もうわけわからん)

少なくとも今作は、この円環のフラグのひとつを回収せずに終わっている。
だから過去作とはまったく違った未来へと進む可能性がある。
それはジョン・コナーを生まない世界線。まったく見たこともない別の時間軸へ飛び込んでいくのだろうか。
(もちろん「この後めちゃくちゃ回収した」ということも考えられる)

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非常に楽しみなところだが、残念ながら続編の制作は期待できそうにない。
T6以降で語られるはずだった要素がけっこうそのまま放置されている格好になり、もどかしさもあるが、そこがこのシリーズの時間SFとしての不思議な魅力になっているのかもしれない。

そして、新三部作の序章と見せかけて結局続きを見れないこの状況は、歴史を変えようとして結局変えられないスカイネットと完全にリンクしていると思うのだ。
リブートして新たな「ターミネーター」の歴史を作る…。しかし興収奮わず続編作れない…。
これはそのまま、劇中の物語と一致しており、ある意味でメタ構造になっているのかもしれない。

いや、もちろん続編はできれば見たいのだが…!!

 
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