乱歩奇譚 Game of Laplace
#3「影男」
#4「怪人二十面相」

*感想

第1話と2話で描かれた「人間椅子」のエピソードで、この作品がかなり倒錯した世界観だということは分かったつもりだったが、本当の意味では理解していなかったかもしれない。
コバヤシ君とハシバ君のBL要素を違和感なく受け入れてしまったなどとよくも言えたものだ2週間前の私め…。
違和感ありありじゃないかこれ。





*以下、ネタバレ含むので未見の方は閲覧注意。





主人公であるコバヤシ少年は、華奢な身体に大きな目、笑顔がカワイイ、一見すると女の子のようである。
しかし、その実態は男の子で、同級生のハシバ君はそのコバヤシ少年の美貌にいつもドキドキしている。

コバヤシ少年は無自覚にハシバ君を翻弄する。
第3話では捜査のために女装し、自分の着替えをハシバ君に見せつける。
第4話ではハシバ君に肩車をさせ股間を押し付けたり、可愛いお尻を振ってみたりする。あくまで無自覚に。
親友のふしだらな行為にハシバ君はタジタジである。

まともな女性ヒロインがいないアニメなので、コバヤシ少年にはおそらく「ヒロイン」としての役割が与えられている。
キャラクターデザインは何も説明がなければショートカットの女の子と思ってしまうし、担当声優も女性の声優だ。
第3話で女装し「男の娘」となったが、あの時の姿こそが、アニメ作品で本来彼に求められる姿なのかもしれない。


しかし、この作品は江戸川乱歩の作品を原案にしたアニメであるし、BLという市民権を得つつある要素を盛り込むことでより倒錯した世界観を演出することに挑戦するのは当然とも言える。
このBL設定は最初のエピソード「人間椅子」でも見ていたものだ。
むしろコバヤシ少年を女性的に描くことで、違和感を軽減しようとしてるのかもしれない。

しかし、それにしてもけっこうやりすぎな印象ではある…。
こういった要素は匂わせる程度で充分だと思う。(それでもファンは食いつくと思うが)
3話・4話のハシバ君の慌てぶりを見ていると、この描写で今後何を伝えたいのか疑問に思ってしまう。
最終的にコバヤシ少年とハシバ君が結ばれるような結末が待っているような気がしてならないのだが、その時私はこの作品にどうジャッジを下せばいいのか分からなくて不安だ(笑)


やりすぎと言えば、4話の黒蜥蜴の登場はあれはやりすぎだった。
新宿プリズンに収監されている特殊犯罪者の1人・黒蜥蜴は、牢の中で女王の如く振る舞い、何故か奴隷を従えている。
それはもう新宿プリズンという名のSMクラブと違いないのだが、この女、何故かアケチ探偵にだけはドMの本性を曝け出し、コバヤシ少年たちの居る前でアケチの責めで失禁までしてしまうという…これはさすがにやりすぎだった…。

いくら深夜アニメとはいえ、ノイタミナでこれをやって喜ぶ人いるんですか?(笑)
このインパクトというかやってしまった感が大きすぎて、そもそも黒蜥蜴から何の情報を引き出したとか、アケチと黒蜥蜴の過去に何があったとか、そういう所まで頭が回らないし…。
倒錯してるんだけど、あくまでギャグとして描かれてるのも、乱歩とは少し違うような気もするわけで…。(といっても乱歩読んだことはまだない)

検死官の解体ショーもムダなギャグのような気がするし…。


第3話は、変装上手の影男が登場。
少女を愛するがゆえに少女に手を出すことはご法度と考える紙袋被った影男は、少女の気持ちなど無視して監禁するロリコン男に立ち向かう。
「いらない少女などいない!」「すべての少女に幸せになる権利がある!」
言うことはかっこいいがよく考えればどちらもロリコンである。

影男は少女を傷つけたり怖がらせたりするようなことは絶対しないが、それで欲求は満たされるのだろうか?
影男がロリコン誘拐男と違う点は、巧みな変装で少女に近づくことができるということだ。
つまり影男は少女が怖がらない姿でいつでも会いに行けて話をすることができる。

一方、犯人の誘拐男は大きな図体でまず小さい子に怖がられる。
変装もできないので、世間体を考えなければならない。
当然、日中少女に声をかけて歩くことなどできず、彼の欲求を満たすには自宅倉庫に少女を閉じ込めるしかないのだ。

そう考えると、影男を紳士たらしめているのは、彼の人柄ではなくて、変装のスキルがあるという優位性なのかもしれない。
もし、影男に変装のスキルがなかったならば、彼は誘拐男と同じような犯罪者になっていたかもしれない。
彼が最後に流した涙が純粋なものだとしても、純粋さが犯罪に結びつかないという保証はない。


第4話では怪人二十面相が登場。
法で裁けない犯罪者を殺して回り、その予告と結果報告をネットにアップする謎の怪人。
3年前に初めて現れた時には模倣犯も続出したという。
果たして今回現れたのは本物か、模倣犯か…。

あの誘拐男も登場しつつの衝撃の結末だった。
舞台風の演出が功を奏していて、前後の描写が多少抜けていても違和感がない。
なので、1話完結も無理なくできていると思う。

犯人は意外な人物だった。
というか、主要キャラから犯人が出るのが第4話という早さも意外だ。
何故彼が怪人二十面相を名乗り凶行に及んだか、それはほとんど説明されずとも受け入れられた。(たぶんデスノートとかのおかげだw)

この展開はこれで終わりではなく、次回第5話ではこの結末を受けてさらなる進展があるようだ。
影男や黒蜥蜴も出番がこれで終わりということはないだろう。
江戸川乱歩が残した作品たちをどのように一本の糸に紡いでいくのか、なかなか興味深いところだ。(だがまだ乱歩の本は読んでいない)

しかし、やりすぎな性描写はどう受け止めればいいのか…。