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百日紅 ~Miss HOKUSAI~
(2015年/日本)

【監督】
原恵一
【キャスト】
松重豊
濱田岳
高良健吾
美保純
清水詩音
筒井道隆
麻生久美子
立川談春

感想(2015年5月12日、フォーラム仙台にて鑑賞)

漫画家であり江戸風俗研究家でもある杉浦日向子原作漫画を、劇場版クレヨンしんちゃんなどの監督として知られる原恵一の手で映画化。
葛飾北斎の娘・お栄(葛飾応為)を主人公に、自由に生きる江戸の人々を描く浮世エンターテインメント。

私は原作未読で鑑賞したんだが、正直うーん…という感じだった。
特に大きな事件は起こらない話だと事前に聞いてはいたんだけど、本当に大きな流れがなかったのでなんだかつかみどころがない。
何の話だったかと問われると、「お栄と江戸の人々の悲喜こもごも」としか言いようがない。

おそらく原作は各話完結型で、映画はその中からピックアップしたエピソードをそのまま並べたんだろう。
エピソードひとつひとつは面白い話なのだが、それらが独立したまま配置されてる感じが最後までノリきれなかった。
江戸の四季を描いた物語でもあるので、エピソードが飛ぶのは当たり前なんだけど、すべてのエピソードに通奏して流れるテーマが見えてこなかったのでぶつ切り感があった。いっそのことエピソードごとに暗転して「第1話」とかやってくれた方がしっくりきたんでは…。

なので、テレビアニメシリーズだったら逆に良かったんじゃないかとか思ってしまう。
おそらく余韻で魅せるような話も原作にはあるんだろうけど、それが映画という媒体ではうまく機能しなかったのかもしれない。

いや、でも、本当はその余韻を映画で再現しなくちゃウソなんだと思う。テンポを遅くするなりして。
映画にするのならば、原作のエピソードを再構成してでも物語のテーマや主人公の成長を浮き彫りにしなければならないんじゃないの?…と、原作も知らないくせにちょっと思った。
原作ファンにはどう映ったか分からないが、それ以外の層に原作の良さを伝えられたかというとそれはちょっと怪しい出来だった。

あと、どうしても言っておきたいのは、クオリティの問題。
全体的にクオリティ高いんだが、終盤で走るお栄の背後で過ぎ去る背景の描き込みが明らかに足りなかったと思う。
それこそテレビアニメのレベルで、仮にも劇場用アニメなんだから終盤で拙さが気になってしまうのはナシだと思った。