マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
(2011年、イギリス)

【監督】
フィリダ・ロイド
【出演】
メリル・ストリープ
ジム・ブロードベント
アレクサンドラ・ローチ
オリヴィア・コールマン
ロジャー・アラム
ハリー・ロイド
スーザン・ブラウン
ニック・ダニング
ニコラス・ファレル
イアン・グレン
リチャード・E・グラント
アンソニー・ヘッド

感想(2015年1月4日、TV録画にて鑑賞)

英国初の女性首相・マーガレット・サッチャー。
政界引退後、認知症を患っているマーガレットの傍らには、死んだはずの夫デニスの幻が寄り添っていた。
デニスの問いかけによって、マーガレットは「鉄の女」と呼ばれたかつての自分の記憶を呼び起こす。

初めての下院議員選挙に落選してしまったマーガレットに、心優しい事業家デニス・サッチャーがプロポーズする。
2人の子供に恵まれ、幸せな家庭を築いたマーガレット。
しかし、政治家としての野心を隠さない彼女は、失墜した英国を建て直すため、家族との時間を犠牲にして孤独な闘いに身を投じるのだった。



「鉄の女」と呼ばれた元イギリス首相・マーガレット・サッチャーの伝記映画。
彼女の功績とかよく知らずに鑑賞しましたが、やはり知らないよりは知ってた方がよかったでしょうね……。
彼女と同じ時代を生きた人の方がいろいろと感慨深いものがあるかもしれません。

サッチャーは晩年、認知症だったらしく、そのことは娘の回顧録で明かされたそうです。
この映画の製作陣にとってそれは衝撃の事実だったのかもしれません。「鉄の女」も老いればボケるんだと……。
その後3年経って公開されたこの映画は、認知症を患う老婆の現在と過去の闘いの日々を交互に映し出す作品になりました。

男ばかりの政界に入って奮闘する姿、強硬に政策を推し進めていく姿、時に犠牲をも厭わない姿勢、そして掴む栄光。
それはひとつのサクセスストーリーでもあり、サッチャーがイメージ戦略顧問たちにレクチャーを受け、首相に相応しい人物として変化していくのは素直に面白かったです。

ただ、全編に渡って夫デニスの幻が出てきては、サッチャーをからかう(?)んですよね。
それは、もしデニスが幻覚でなければ老夫婦の他愛もないやりとりに見えるんですが、この映画では、どこかサッチャー自身が自分の過去を否定しているようにも見えるんですね。(私の勝手な想像ですけど)

「食器を洗って一生を終えるつもりはない」と言ってデニスと結婚した彼女。
しかし、そのことで夫には苦労をかけることになった。
その後悔の念、あるいは罪悪感が、デニスの幻を生み出したのでは。

自分の信念を貫き通した人生だったけれど、サッチャーもやはり一人の女。
納得して選択した人生を送っても、それでもなお別の生き方もあった、と思ってしまうのが人間なんじゃないでしょうか?
……なんてことを思ったんですけど、まるで見当違いかもしれません(笑)