そして父になる
(2013年/日本)

【監督】
是枝裕和
【出演】
福山雅治
尾野真千子
真木よう子
リリー・フランキー

*感想(2015年2月8日、TV録画にて鑑賞)

思っていた通りでもあり、思っていたのと違っていた面もあり。
思っていた通りというのは、是枝裕和監督の作る自然体の雰囲気。
なさそうでけっこうある赤ん坊の取り違え問題を、けしてサスペンスフルにはせずに描き切ったのが是枝監督らしいんじゃないでしょうか。


途中、福山雅治とリリー・フランキーが喧嘩になってしまう(といっても、福山の失言にリリーが思わず頭を叩いて終わりですけど)そんなシーンがありますが、そこから特に険悪になるでもなく、殴り合いや殺し合いや騙し合いに発展するわけでもなく。 
この「嫌な出来事があっても特に解決も乗り越えることもせず、ただ忘れて毎日を過ごしていく」というスタンスがとてもリアルだなーと。 

思っていたのと違ったのは、二つの家族の父親・母親、合計4人にクローズアップしていくかと思いきや、福山雅治があくまで主人公であり、他の親についてはそこまで深く描写してなかったんですよね。 
仕事バリバリの合理主義で、6歳の息子に対して最初ちょっと冷たい主人公が、少しずつ父親らしさ/人間らしさを獲得していく物語でした。 

ただ、「獲得していく」といっても、出来事Aによって結果Bが待っている、みたいな単純な物語にはなっていませんが。 
主人公の性格は彼の父親への反発からだった……ということが明かされても、それは性格の裏付けであって、物語がそれによって進むわけではないですしね。 
でも、日常の光景の中にそんな「理由」が隠されている映画なんですよね。 

まあそんなわけで、感情を抑えた物語と役者の自然体の演技が光る作品でした。 

でも個人的に残念だったのは、主人公たちの性格付けがやや単純な気もしたこと。 
金持ちだが人の気持ちの分からない主人公というのがテレビドラマや漫画アニメで散々見てきた人物造形ですよね。 
そしてそれに対するもう一人の父親が、貧乏でセコくても優しさと愛に溢れた人格者、みたいな描写がされていて、この対立がテンプレートすぎる気はちょっとしました(笑)