百円の恋(2014年、日本)

【監督】
武正晴
【キャスト】
安藤サクラ
新井浩文
根岸季衣
稲川実代子
早織
宇野祥平
坂田聡
沖田裕樹
吉村界人
松浦慎一郎
伊藤洋三郎
重松収

感想(2015年3月4日、フォーラム仙台にて鑑賞)

いっしょうけんめい汚いのでとても美しい。



30過ぎのニート女性が、家出をきっかけに一人暮らしを始め、ある中年ボクサーと出会い自分もボクシングにのめり込んでいく物語。
主演は安藤サクラ。中年ボクサー役に新井浩文。

基本的に主人公も含めてダメ人間というか欠陥を抱えた人間しか出てこない。
離婚して出戻ってきた妹はイライラしているし、なんか自信のない父親は家庭内で邪魔な存在になっている。
主人公自身が一番ヤバイのだが、30過ぎて仕事も家事もせずにゲームして過ごす毎日。
既に女も捨ててしまった感じで、正直「ヒロイン」という感じはしない。

彼女・一子がバイトすることになったコンビニの人間たちも最悪だ。
さらには、彼女が恋する中年ボクサーですら、無愛想でチンピラ然とした男だ。
要するにこの映画は(言葉は悪いが)クズで溢れかえっている。

しかしそんな教養もモラルもない人間たちをこの映画は特に否定も糾弾もしない。
多分、これが今の世の中の縮図だからだろう。
誰も彼も余裕がなくて、利己的で他人への愛情に欠ける。
底辺で生きる者たちは底辺に相応しい低俗な人間になっていく。

そんな末期的な社会を打ち砕くもの。
それが、ボクシングに魅了される主人公の姿を通して描かれる。
周りはクズばかりのクソみたいな毎日を、一子のパンチが打ち破るかもしれない、そんな期待感に溢れていた。

とにかく一子のモニョモニョした喋りと、トレーニングでのキレのある動きのギャップが面白い。
音楽の力もあいまって、練習風景はかなり盛り上がった。
泥臭い映画なのに、爽やかな感動がある映画だと思う。