博士と彼女のセオリー(2014年/イギリス)

【監督】
ジェームズ・マーシュ
【キャスト】
エディ・レッドメイン
フェリシティ・ジョーンズ
チャーリー・コックス
エミリー・ワトソン
サイモン・マクバーニー
デヴィッド・シューリス

感想(2015年3月18日、フォーラム仙台にて鑑賞)

高名な物理学者スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた伝記映画。
他の学問の博士だったらスルーしてたけど、宇宙物理学ということで鑑賞。
まあ、純粋に予告編が上手く出来ていたということかも。

タイトルにある通り、ホーキング博士とその最初の妻ジェーンの関係を描いた物語。
原題の「The Theory of Everything」よりも「博士と彼女の~」の方が的確だと思う。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、歩くことや話すことすらままならなくなっていくホーキングを、妻ジェーンが献身的に支えていく姿が描かれる。

しかし、時間が進むと物語は不穏な空気を帯び始める。
ジェーンが教会で知り合ったジョナサンは、ホーキング一家の友として親密な時間を送るが、その奇妙な家族の姿はやがて歪みを生じさせる。
父親代わりとしてなら善意だが、夫の代わりとなると話は違ってくる…。

そんなスキャンダラスな時期も乗り越えた夫妻だが、別れは意外にあっさりとやってくる。
それは敗北すると分かっている闘いに長年身を投じ続けたジェーンへの救済でもあった。
なにも一人でホーキングのすべてを愛し抜く必要はない。先発投手として仕事はキッチリと果たした、後はリリーフに任せてマウンドを降りても構わないのだ。

そして、ラストシーンの2人の様子を見ると、そこには紛れもない愛がある。
ホーキングとジェーンをイコールで結ぶ方程式は途中で崩れ去ったが、成り立たなかった式からも「解」は生まれ落ちた。
命という名のその「解」が、逆に2人の方程式の正しさを証明するのかもしれない。

ただ、映画全体はなんとなくジェーンの気持ちで進んでいく気がした。
この伝記映画の脚本は、ジェーンの回顧録を元にして書かれているらしい。
ジョナサンとのこと、ホーキングの下を去ったこと、それらをジェーンの立場から弁解しているようにも見える。

一方で、ホーキング博士の提唱した革新的な理論には、ほとんど触れられていない。
まあ、説明された所で私なんかにはよく分からないのだけど(笑)
なので、やはりこの映画はホーキングよりもジェーンのものなのだと思う。
そういう意味でも「博士と彼女のセオリー」という邦題はピッタリだと思った。