ピンポン
松本大洋
小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル 

*あらすじ

幼い頃から卓球で数々の大会を制覇してきた高校1年生・星野裕、通称<ペコ>と、ペコの幼馴染で優れた卓球の才能を隠し持っている月本誠、通称<スマイル>。共に片瀬高校卓球部に在籍する2人だが、ペコは己れの才能に自惚れろくに練習にもこず、笑わないことで有名なスマイルはそのクールな態度で先輩たちからの反感を買っていた。そんなある日、2人は中国人留学生を迎えたという辻堂学園卓球部へと偵察に出かけ、留学生の<チャイナ>と対峙する。一方、片瀬高校には、スマイルの卓球を見るために全国NO.1の実力者・風間竜一<ドラゴン>が現れる。インターハイ県予選に向けて、それぞれの選手が動き出していた……。 

*感想

只今アニメが絶賛放送中の「ピンポン」。 
その原作漫画。1996年~1997年の作品で、全5巻。 
この漫画が実写映画化された際に、思い切って買ってみました。それから10年以上になりますか……。 

やはり良いものは何度見ても色褪せることがないですね。 
松本大洋の独特でいてのびのびとした筆致が、大判の紙の上にダイナミックに描かれています。 

人物の卓球シーンでの動きが面白いですね。 
ちょっとかっこ悪い方向へ腕が曲がってたりするんですけど、実際の人間の動作もそんなものなのかなって思います。 

また、テンポも独特です。 
卓球にかける青春を描いたスポ根作品ですが、とても詩的に、センチメンタルに描かれてたりします。 
試合中の台詞もリズミカルで、ページをめくる手を加速させますね。 



物語は、ペコとスマイルの友情を軸に、ドラゴン、チャイナ、アクマ、5人の卓球選手のドラマが展開されます。 
幼いころのスマイルにとって卓球の申し子と言うべきペコは<ヒーロー>でした。そのヒーローの堕落、不在、再起を描いています。 
そして、ヒーローに救われるのはスマイルだけではないのです……。 

アニメの方の話になりますが、松本大洋が連載時にできなかったことを、アニメ版では盛り込んでいるそうです。 
確かに、アニメオリジナルのキャラや描写を入れることでとても深みが出ています。 
個人的には、アニメ版こそ完成版ではないだろうかと思うのですが、そうじゃない人も、アニメの良い仕事ぶりを知るためにも原作を読んでいいのでは、と思います。