グッバイ、レーニン!
(2003年/ドイツ)

【監督】
ヴォルフガング・ベッカー
【出演】
ダニエル・ブリュール
チュルパン・ハマートヴァ
カトリーン・ザース
マリア・シモン
フロリアン・ルーカス
アレクサンダー・ベイヤー
ブルクハルト・クラウスナー
ミヒャエル・グビスデク

*感想(2014年7月20日、TV録画にて鑑賞)

ちょっと有名なドイツ映画。
主演のダニエル・ブリュールは、今年公開された「ラッシュ プライドと友情」に出演してましたね。



舞台は1989年、ベルリンの壁が壊され東西ドイツが統一される直前の東ドイツ首都・東ベルリン。
主人公アレックスの母クリスティアーネは、夫が西ドイツへ亡命してから熱烈な社会主義活動家として生きてきた。
ある夜、反体制デモに参加しているアレックスを偶然に目撃したクリスティアーネは、ショックのあまり心臓発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。

母が昏睡状態の間に、アレックスを取り巻く環境は激変した。
ベルリンの壁が崩壊して、母が愛した社会主義は消え去り、西側の文化が流入してきた。

そんな中、8ヶ月の眠りから母クリスティアーネが目覚める。
医師から「再び大きなショックを与えれば母親の命の保障はない」と宣告されたアレックスは、母にとって東西統一のニュースが何よりも大きなショックだと考える。
アレックスは周囲の協力を得ながら、8ヶ月前の暮らしを再現しようと試みるが…。



ウソから始まる物語というのは、面白い作品の一つのパターンですよね。
誰かを騙し通すために奔走する主人公、あるいは騙されてる側のトボけた面白さ。

この手の物語の展開には二通りあると思うんです。
ウソが途中でバレてしまうのか、最後まで騙し通すのか…。
個人的には、ウソがバレて主人公が咎められ、そこから反省をし、成長するというパターンが王道だと思ってます。

じゃあこの映画はどうか。
まあ、バレそうでハラハラするのも重要な面白味の一つですから、ここでネタバレはしないでおきましょう。

ただ、ラストの解釈についてだけ書いておきます。
やはり、これは「母の愛」だと思うんですね。
息子からの思いやりに対する、母なりの答え。
だからウソをついてしまったためにドタバタするだけの映画ではなくて、とても深い内容でした。

そもそも、ウソの内容も東西ドイツ統一に絡めてあるわけで。
ある意味、東ドイツがベルリンの壁崩壊でどのように変貌したのかを描いた歴史映画でもあるんですよね。
社会主義に資本主義が取って代わるとはどういうことなのか、体制が変わると人々の暮らしは、考え方はどう変わるのか、そんなものが全編に渡って滲み出てていて、非常に勉強になる映画でした。
世界史の授業に取り入れてもいいくらいですよ。(学校の授業でベルリンの壁崩壊に2時間も費やすのかどうかはともかく…)

そして、ウソが破綻しそうになるにつれて、むしろ物語が別の様相を呈してくるのが秀逸だったと思います。
旧東ドイツの再現ではウソが保たなくなり、主人公は独自のストーリーをでっち上げ始めます。

それは、実は主人公が心の底で望んでいる「理想の社会・世界」なんですね。
母の愛した東ドイツが、いつの間にか主人公自身も気づかないうちに自分の理想の世界にすり替わっていく…。
そんな、童心あふれる主人公。
ある意味、子どものままちっとも成長しない息子を、優しく見守る母の目は、資本主義だとか社会主義だとか関係なく、万国共通のものでした。