2f0dc0e4.jpg



PSYCHO-PASS 0 名前のない怪物

高羽彩
マッグガーデン(2013)

感想

西暦2109年。人間の精神を数値化し、最大多数の最大幸福が実現できるようになった未来。
システムの導き出した<犯罪係数>をもとに、犯罪者とその予備軍<潜在犯>を取り締まる厚生省公安局刑事課は、後に<標本事件>と呼ばれることになる連続猟奇殺人事件に総力をもって当たっていた。

ある夜、刑事課一係所属の<監視官>狡噛慎也は、潜在犯でありながら犯罪捜査の実働を担う<執行官>の一人、佐々山光留と共に、廃棄区画で発生した騒ぎの鎮静に向かう。
そこで彼らは、私立女子の名門<桜霜学園>の生徒・桐野瞳子を保護するが……。



TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のスピンオフ・ノベル。
主人公・狡噛慎也が監視官から執行官に「堕ちる」きっかけとなった3年前の未解決事件、通称<標本事件>を描いた内容。
TVシリーズ本編では名前くらいしか出てこなかった執行官・佐々山光留が活躍する物語です。

執筆はTVシリーズ第12話(六合塚の過去話の回ね)の脚本を手がけた劇作家でもある高羽彩(たかは あや)。
最初、文章がけっこう淡白に感じられて読みづらかったんですが、次第に入り込めました。
PSYCHO-PASSの世界観は見事に表現されており、特に残酷描写とかが容赦なくて恐かったです。
「眼球破裂」とか出てきますのでそれなりに覚悟して読んだほうがいいかと。

連続猟奇殺人事件の犯人を追う中で、刑事課内部の軋轢、猟犬・佐々山とお嬢様学校の生徒・瞳子の出会い、事件の首謀者・藤間幸三郎とそれに協力する槙島聖護の存在……などが描かれます。
メインとなるのは、監視官としてまだ頭ガチガチの狡噛と、潜在犯である佐々山が、どのようにして信頼関係を築いていったか、ということでしょうか。
この2人の友情物語(と呼ぶような薄っぺらいものではないけど)にけっこうページを割いていた印象です。

事件自体は未解決のまま終了したのが残念ですが、よく考えればアニメ本編でも未解決事件となっている標本事件の話なんだからそりゃあ未解決ですよね(笑)
佐々山光留という男について、狡噛の成長・変化について、あくまでもアニメ本編を補完する立場の作品です。

補完ということでいえば、最近、新たなシーンを追加して放送された「新編集版」を見る上でこの本が一助となるのは間違いないですね。
本放送当時は「藤間幸三郎ダレソレ?」状態だったのが、槇島と禾生局長の難解な会話も分かりやすくなったり、モブでしかなかった二係の監視官・青柳の存在感が増したり。
逆に、新編集版で追加された青柳と神月の対峙シーンは、このスピンオフ・ノベルを受けてのものかもしれないですね。

そんなわけで、アニメ本編を見てない人にはわけの分からない内容だと思いますが、本編を楽しんだ人は一応読んでおけば新編集版の助けになるはず。
あと、執行官たちが集まって麻雀したりとか、「日常」が描かれてるのも貴重ですね。