PSYCHO-PASS サイコパス 新編集版

【総監督】
本広克行
【監督】
塩谷直義
【ストーリー原案・脚本】
虚淵玄
【アニメーション制作】
Production I.G.
タツノコプロ(新編集版のみ)
【声の出演】
関智一
花澤香菜
野島健児
有本欽隆
石田彰
伊藤静
沢城みゆき
増谷康紀
長克巳
榊原良子
山路和弘
日高のり子
櫻井孝宏

あらすじ

人の心を計測し数値化する<シビュラシステム>――。人間のあらゆる感情や心理は<サイコパス>と呼ばれる数値で表され、人々は有害なストレスから解放された「理想的な人生」を送るため、その数値を指標としていた。その中でも、犯罪に関する数値は<犯罪係数>として計測され、規定値を超える者はたとえ罪を犯していなくとも<潜在犯>として裁かれる。潜在犯を裁くのは、同じく高い犯罪係数を持つ<執行官>と、彼ら猟犬を束ねる<監視官>たちだった。公安局刑事課一係に配属された新人監視官の常守朱は、執行官の狡噛慎也らと共に次々と起こる凄惨な事件を解決していく。しかしその裏で糸を引く槙島聖護の存在を知った時、物語は新たな展開を迎える……。

感想

ノイタミナ枠で2012年10月から2013年3月にかけて放送されたアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」。
この秋から始まる第2期「PSYCHO-PASS 2」、そして年明けに控える劇場版に先駆けて、この夏、TV第1期の新編集版が放送されました。

2年前のTV1期当時は毎週見ていて、当ブログでも毎話レビューをしていました。
懐かしさもあり、そして当然期待するTV2期及び劇場版への助走ということで、見てみました。


■「執行モード、新編集版」

TV1期では30分枠で全22話だったものが、新編集版では1時間枠で11回編成になってます。
1回の放送でTV1期の2話分ずつ放送されるという内容。
ダイジェスト版にした「総集編」ではなく、あくまでも「本編+α」の「新編集版」です。

「+α」とは、新編集版のために新たに書き起こされた新規シーンのこと。
各回の冒頭や前後半の区切り部分に挿入されてました。
内容はさまざま。個人的には槙島のモノローグが印象的でした。
新事実を描くというよりは、キャラクターの内面や彼らを取り巻く状況を補完する意味合いが強かったと思います。

というわけで、ほとんどの点で新編集版の方が優れている、またはお得だと思います。
ですが、2話分を一つにまとめているため、どうしても少し違和感を感じる部分はありましたね。
例えば、1話完結で描かれた六合塚の過去回は、他の回と繋げて放送しても明らかに前半と後半に繋がりがなかったりしました。
あと、各話サブタイトルが省略されたり、OPとEDが1回ずつ回数減ったり……。

まあ構成上の些細な違和感なので、物語の進行には何の影響もなかったんですけどね。
かつて楽しんだエピソード、鳥肌が立ったカット、朱ちゃんの成長っぷりをもう一度楽しむには何の不自由もありませんでした。
でも、Blu-ray BOXにはTV1期verも新編集版verも収録されるそうなので、新編集版が完全版というわけではやはりないようです。
両方ともそれぞれに良いところがあるということですね。


■「対象の脅威判定が更新されました」

1時間枠全11回で放送された新編集版ですが、実は私、最初の録画予約をミスりまして、第1回の後半(TV1期第2話部分)を見れてません。
録画予約する時に番組が30分ずつに区切られており、気付かずに最初の30分だけ予約したというケアレスミス。途中から1時間の区切りになってましたが……。
まあ、普通ならかなり残念なところですが、そもそも過去に一度見ていて内容だいたい覚えているし、話も第1話の後始末的な会話中心の内容だったはずなのでまあいいんですけどね。

それよりも驚いたのは、第4回(TV版の第7話・第8話)を再生してみたら、第5回が録画されていたこと。
前の週に桜霜学園編が始まったと思ったらいきなり事件が解決していたので、自分が何か1週間勘違いしたのかなと思ったんですが、実はそうではなく……。
同時期に起きた「佐世保女子高生殺害事件」の影響で、事件を想起させる恐れがあるという配慮で放送中止になり、翌週のはずだった第5回がなんの説明もなく流れたんですね。


佐世保の事件の方は詳しくは分かりませんが、桜霜学園のエピソードは、才色兼備で女子校の憧れの的だった生徒が、自分に心酔する女子生徒を殺害し、解体・加工してオブジェとして晒す、という猟奇殺人を描いており、まあそんな内容だから事件があってもなくてももともと規制されそうではありました。
まあ、これも私は過去に一度見ているのでダメージは少なかったんですが、第4回にも追加されてるはずの新規シーンは見れなかったわけで、それはBlu-ray買わないと見られないのかもしれません。
まあとにかく、現実のサイコパスによってアニメPSYCHO-PASSが影響を受けたというひとつの事件でした。

放送中止については一応塩谷監督が自己の責任と言ってツイッターで謝罪するまでになってますね。
謝罪するほどのものではない、と監督を擁護する意見も確かにそうなんですが、監督のツイートの感じだと、もの作りにたずさわる者として残酷なエンタメを選択した責任は自分にあるんだ、みたいな感じでした。

これからエンタメ方面で活動していく、またはしたいと思っている人にはひとつ考えてもらいたい問題ですね。
規制スレスレの衝撃的な内容で作って、何か現実で起きた時にその余波を受ける立場に回るのか、それとも最初から規制されない(されにくい)ような作風でいくのか……。
その「自分が世に出したいのは何か」という最初の選択の責任は、やはり作者にあり、その作品について起こったことはやはり最終的には作者に帰属すると思います。
かといって、危ない橋は渡らない……みたいなことに皆がなったら、それは「表現の自由の死」なんですが……。

■「慎重に照準を定め対象を……」

実はTV1期を見終わった直後は、続編の展開に懐疑的でした。
作品はキレイに終わっていたと思うし、逆に続編で何をやるの?と想像ができなかったんですよ。

縢も征陸のとっつぁんもいないし、狡噛さんもフラフラどっか行ってしまって、かつての刑事課一係にはもう戻りようもない。
そのうえ宜野座さんなんて眼鏡外しちゃいましたからね最終回で。
ギノから眼鏡を引いたらアイデンティティの崩壊じゃないですか。ああこれは2期をやるつもりはないんだな、と勝手に確信してましたよ。


しかし、続編やるという前提のもとでシリーズ通して見ると、めちゃくちゃ楽しみになってしまう内容なんですよね。
特に最終回の朱ちゃんとシビュラの会話なんて、続編の存在を匂わしているとしか思えないですね。


ここで一度整理を……。
数々の事件の裏で糸を引いていた槙島聖護は、殺人を犯そうとする心理状態にあっても犯罪係数が上昇しない<免罪体質者>だった。
潜在犯として犯行前に確保することはできず、また現行犯であってもドミネーターによる執行の対象とならない免罪体質者は、シビュラの目から逸脱した、システムの不完全さを示す存在だった。
このことにより、執行官・狡噛慎也は槙島を自らの手で殺すため、公安局から逃亡し行方をくらます。

しかし、シビュラシステムはそのイレギュラーをシステムに取り込むことで問題を解消し、システムを拡張しようとする。
監視官・常守朱は、シビュラシステムの真の姿と、それが描き出す将来像に嫌悪感を覚えるが、同時にシビュラが社会秩序の根幹を担っていることも否定できない。
槙島の事件の後、朱はシビュラへの不信を胸に秘めたまま監視官としての職務を遂行していくが……。


というわけで、メインのストーリーは槙島と狡噛さんの2人の男の対決を描いていましたが、最後には、朱ちゃんとシビュラの対立もしっかりと描いて終わっていたんですよね。
シビュラは朱を民衆のサンプルとして認識し、彼女を懐柔することができれば民衆に真の姿を開示することもできると考えている。
一方、朱はそんな未来はこないと断言。人間を裁くことは人間に委ねられるべきだと考えているが、今は社会の秩序を壊してまでそれをすべきではないと……。


つまり朱ちゃん、システムの駒として動きつつも、体制に対する反乱分子でもあるわけですよね。
そんな対立構図だけでも面白いのに、2期PVの解禁でますます面白そうなことに。
そこには、体制に不満を持つテロリストの姿や、朱を否定する後輩監視官の姿が……。

これどうなっちゃうんでしょうね、しかもこの第1弾PVは狡噛さん映ってないですからね。
それでこれだけ期待させるって……狡噛さん出てきたらどうなるんだろ?
第2期だけではなく、劇場版も控えてますし、ねえ?(笑)
これは慎重に照準を定め注視していかなければ……。



そんなわけで、期待大の「PSYCHO-PASS 2」なわけですが……。(あっ、これもう新編集版の感想じゃねえな……)
ただひとつ心配なのが、ちゃんと放送してくれるのかってこと(笑)

現実の凶悪事件を想起させちゃうような、ギリギリの描写してる内容であることは第4回の件で証明されちゃいましたし。
2期PVでは爆破テロが起こるみたいですが、その放送中に現実に爆破事件起こらないことだけ祈ってます。