角川書店 角川文庫
*あらすじ
2019年(正化31年)――、公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」が成立して30年。行き過ぎた検閲から本を守るために作られた組織「図書隊」に入隊した一人の女の子、笠原郁。高校時代に出会った図書隊員を名乗る"王子様"を追い求め、不器用ながらも愚直に頑張る郁だったが……!?
*感想
有川浩の小説「図書館戦争シリーズ」の一冊目、「図書館戦争」です。
このシリーズのヒットにより、これを原作としたTVアニメや劇場版アニメが作られ、この春には実写化映画も公開されます。
実写版映画公開の話が気になったので、どんなもんじゃいと思って原作本を読んでみましたが……。
ヤバいw図書館戦争面白いwww
以前、妹にTVアニメ版を勧められた時はスルーしたんですが、激しく後悔。
検閲の名の下に規制図書を没収していく「良化特務機関」。
その武力に対抗するために設立された「図書隊」。
二つの武力組織の対立は時に銃撃戦にまで発展し、死者を出すことも。
そんな抗争が合法化されているもう一つの日本が舞台です。
こう書くと、とても恐ろしいディストピアに思えるけれど、作風自体はそんなに殺伐としてないんです。
ミリタリーものにラブコメをぶっこんだような小説で、図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)に配属された新人・笠原郁の視点から描かれます。
もう、とにかくね、キャラクターがいい!
憧れの王子様を探して図書隊に入隊した主人公・郁と、彼女をシゴキ倒す鬼教官・堂上を中心に、郁のルームメイトで美人の柴崎、郁を敵視する同期でエリートの手塚、笑い上戸が止まらない優男(たぶん)の小牧、豪快でわかりやすい玄田隊長などなど、どのキャラクターも魅力的な人物ばかり。
こんな人たちに囲まれながら仕事したい!とつい思ってしまいました…(笑)
郁と堂上の関係が、犬と飼い主みたいな感じなのが面白い。
そうでありながら、台詞のやりとりの中でキュンとするポイントがたくさん用意されてるのは、作者の技でしょうね。
てか、人の言葉が郁の胸に刺さる刺さる…w
正論を言うんだけど、正論を押し付けることさえも卑怯と捉えてしまうような、どこまでも清廉な若者たちの姿がありました。(この辺は、軍隊を舞台にした本作ならではだと思います)
たぶん郁の「王子様」は堂上なんだろうなあ…と、ベタな展開を簡単に予想させておきながら、終盤の堂上視点からの「解答」はなかなか泣けるものがありました。
いやもう、堂上教官大好きです。
あと、柴崎も一刻も早くアニメなり映画なりをチェックしたくなるほどの美人っぷり。
立ち回りも上手いし、顔もよくてモテるけど、本当に好きな男には振り向いてもらえないタイプの女性だなー、柴崎は。
もうその兆候が描かれてたので、たぶん次巻以降で柴崎の内面について深く書かれるのでしょうね。郁との不仲とかもあるでしょう、ベタだから。
嫌味なエリート手塚については、謎の行動によって「バカ」ということが分かってからは逆に良い奴に思えてくるという変わり身が見事。
チャンスがあったら再び手塚の暴走によって郁と堂上を振り回してほしい気も(笑)
あと、いつもニコニコニヤニヤしてるくせにたまに正論でやってくる小牧、彼もその柔らかい物腰が女性に人気ありそうだけども、じつは裏の顔がありそう。
さすがに何も弱みがないというのはないでしょう。彼にも今後、本気になるというか、余裕のなくなる切羽詰まった状況が待っていそう。
あと「気分」で動く豪快な玄田隊長も面白いけど、彼と対象的に穏やかな老紳士・稲嶺司令も胸に熱い想いを抱いた戦士っぽくて良かったです。
組織の一番トップがめちゃくちゃ人格者っていうのがベタベタのベタ、ですね~(笑)
稲嶺司令についてはこの本でけっこう描かれたので、次巻以降では微笑みながら郁を見守ってくれることでしょう。
しかし、ここまで予想してしまうと次もモーレツに読みたくなってしまうなあ…。
でも男がこのシリーズ買い込む姿は見られたくないなあ(笑)
基本的には痛快ラブコメなんですが、ミリタリー的な魅力もあるし、何よりキャラクターたちが素敵。
僕の中の乙女の部分をキュンキュンさせながら、あっという間に読みました。
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