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ターミネーター4
(2009年/アメリカ)

【監督】
マックG
【キャスト】
クリスチャン・ベール
サム・ワーシントン
アントン・イェルチン
ムーン・ブラッドグッド
ブライス・ダラス・ハワード
ヘレナ・ボナム=カーター
ジェーン・アレクサンダー

*感想(2013年3月25日、TV録画にて鑑賞)

<ターミネーター>シリーズの4作目。
厳密には「ターミネーター3」と「4」の間に「サラ・コナー・クロニクルズ」なるTVドラマも制作されていますが、映画の続編とはちょっと違う内容らしいですね。海外ドラマというもの自体になかなか手が出なくて……。
「ターミネーター4」(T4)はそれまでのシリーズ作品と大きく違います。
前3作では未来の出来事として描かれていた機械と人間の戦争が、ついに現実のものとなった時代が舞台になっています。
いわば、「ターミネーター未来戦争編」が始まったわけです。

なので、それまでの「平和な日常に突然未来から殺人ロボットがやってきて命を狙われる」という展開は既に過去のもの。
荒廃した世界で人間たちはターミネーターに狩られており、抵抗軍がわずかな兵力で生き残りをかけて戦っています。
「これは<ターミネーター>ではない」という意見ももっともですね。

しかし、この「未来戦争編」、個人的にはとてもワクワクします。
今までの作品では未来の戦争は、ひとつの結果という位置づけでした。その最悪の結末を回避するために主人公たちが奮闘するという物語でした。
でも、T4ではその結末の先を描き始めています。
未来のジョン・コナーが過去の自分や母親サラを守るために戦士や改造したロボットを送るということ自体には、戦争を終わらせる意味はありません。ただ、歴史改変によって人間側が劣勢になるのを防いでいるだけなんですよね。
つまり、この戦争の結末はまだ誰も語っていないんですよ。まだ誰も知らない未来のその先へと<ターミネーター>シリーズが突入した作品なんですね。

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監督は「チャーリーズ・エンジェル」のMcG(マックジー)。

主演はノーラン版<バットマン>シリーズや「ザ・ファイター」のクリスチャン・ベイルがジョン・コナーを演じます。
しかし、まだ序盤の時点ではジョンは抵抗軍の一部隊長に過ぎないんですね。
前3作ではさんざん救世主扱いされてきたけれど、現実は非正規の兵士にいきなりすべて委ねるほど甘くないということですね。ジョン・コナーがいかにして抵抗軍の英雄となるかも注目です。

で、この映画は2人の主役がいるような感じで、もう一人の主役が「アバター」「タイタンの戦い」のサム・ワーシントン演じる謎の男マーカス・ライト。
荒野で目覚めた記憶喪失の男マーカスの視点で描かれる前半は、機械による人間狩りの恐ろしさや荒廃した世界をたっぷり味わえます。

他にも、後にサラを守るため(そしてジョン・コナーの父となるため)過去へ送られることになるカイル(アントン・イェルチン)や、ジョンの妻で医療担当でもあるケイト・コナー(ブライス・ダラス・ハワード)、過去作で登場した仲間が新しい印象を持って再登場してるのも良かったです。
抵抗軍の兵士でマーカスに救われ行動を共にすることになる女戦士ブレア(ムーン・ブラッドグッド)など、新登場のキャラクターもそれなりに魅力的でした。

あと、忘れちゃいけないのがヘレナ・ボナム=カーター演じる科学者セレーナ・コーガン。
今回の黒幕なんですけど、個人的に「アリス・イン・ワンダーランド」で赤の女王を見た後だったので余計に憎たらしかった(笑)
意思を持ったスカイネットの広報みたいな役割だったけど、ああいう人工知能と人間の会話は好きですね。SFって感じで。

舞台は完全に未来だし、キャストもまったく一新されているので、すっかり忘れていたけども、終盤ではシュワちゃんも登場。
と言っても、顔だけCG合成で出演みたいです。俳優の若かった頃の顔を再現しちゃうアレ。

ひとつ面白いのは、ジョン・コナーとか人間役の俳優はキャスト毎回代わるのに、ロボット役の顔にはこだわりを持ってることですよね。
ニック・スタールからクリスチャン・ベイルに代わるなら、T-800の顔も別に変わってもいいような気もするけど、そこだけはわざわざCG用いてまでシュワちゃんの顔を使ってくる。
やっぱり人間の顔は生き物だから少しづつ変化するけど、機械はモノだから変化しないってことなんでしょうね。

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物語は謎の男マーカスの放浪と、ジョン・コナーの戦いが交互に描かれていく感じです。
マーカスは過去に犯した罪を悔やみやり直すチャンスを探し求めている感じ。
それを踏まえて見るとラストの決断は自然だったように思えます。

一方、ジョンは自分が救世主となる理想と、今はまだ一兵士にすぎない現実のギャップに苦悩しています。
彼が人々に呼びかける言葉はちょっと胸アツですね。
ジョン・コナーの父親となる存在カイルが機械軍に連れ去られ、ジョンはスカイネットセントラルへと向かいます。
一方、マーカスもスカイネットセントラルで自分の秘密を知らされるのでした……。



SFが好きな人はだいたい好きだと思うけど、今作は機械軍の魅力にあふれた作品だと思います。
人型の戦闘ロボットはもちろん、人々を追い立てる巨大ロボットや、輸送機型のマシン、オートバイの形をしたモトターミネーターとか、意思を持って独自の進化をし始めた機械たちの姿を見るだけでもけっこう面白いです。

加えてジョンや仲間たちはレジスタンスという軍属なわけで、ミリタリーものとしての面白さもあると思います。
あと全編の青く暗めの色彩とかもマッチしていて良かったです。

T2が傑作だったのでどうしてもそれと比べて違和感覚えることになるんでしょうけど、この<ターミネーター>シリーズが長大なサーガを形成していて、そのサーガが新たな局面に入ったのだと捉えれば非常に興味の湧く内容でした。
あと、クリスチャン・ベイルとサム・ワーシントンのツーショットはなかなか見応えがあります。