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MEMORIES (1995年、日本)

【ジャンル】
オムニバス・アニメーション/SF/コメディ/ファンタジー
【総監督・原作】
大友克洋
【監督】
森本晃司 (1. 彼女の想いで MAGNETIC ROSE)
岡村天斎 (2. 最臭兵器 STINK BOMB)
大友克洋 (3. 大砲の街 CANNON FODDER)
【声の出演】
<1. 彼女の想いで MAGNETIC ROSE>
磯部勉(ハインツ)
山寺宏一(ミゲル)
高島雅羅(エヴァ)
飯塚昭三(イワノフ)
千葉繁(青島)
<2. 最臭兵器 STINK BOMB>
堀秀行(田中信男)
羽佐間道夫(韮崎)
本部長(大塚周夫)
<3. 大砲の街 CANNON FODDER>
林勇(少年)
キートン山田(父親)
山本圭子(母親)

感想 (2013年1月15日、DVDにて鑑賞)

今年1月ふいに訪れた大友克洋月間(笑)の中で見た作品。
「AKIRA」から7年後の1995年に大友克洋監督が中心となって作られた、3つの短編アニメーションから成るオムニバス映画「MEMORIES」(メモリーズ)。
これはけっこう面白いアニメ映画でした。好きな人は好きだと思います。



<1. 彼女の想いで MAGNETIC ROSE>


まず最初の短編は宇宙SFホラーと言うべきか叙情SFと言うべきか……。
人類が遠い宇宙に進出する時代、宇宙の墓場とも呼ぶべき場所に迷い込んだデブリ回収屋の男たちを、貴婦人の亡霊が幻惑し帰らぬ人とする……みたいな物語。

どっかで聞いたようなストーリーなんだけど、どこで読んだのか見たのか思い出せないのがもどかしい(笑)
ハードSFに合ってる硬派なキャラクターデザイン、主人公たちを館に迷い込ませ虜にしようとする「奥様」の肉感的な美貌、菅野よう子の劇半が生み出す雰囲気などが好感持てる作品になってます。

ラストがハッキリしないのも短編らしくてよい(笑)



<2. 最臭兵器 STINK BOMB>


「最終」ではなく「最臭」。
開発中の試薬を誤って飲んでしまった主人公が、身体から毒ガスを撒き散らしていることなど知らずに、東京へ向かってくるというパニック・コメディ。

一人のサラリーマンを自衛隊が全力で阻止しようします。戦闘機、戦車、ミサイル等々…(笑)
しかし、男の周囲では計器が狂い、防護服も意味を成さない!
ついに米国の最新装備まで引っ張り出す!

最後まで事情が分かってない主人公と、それに振り回される政府や軍……。
ミリタリー関係の作画に力が入っていてやりすぎな所が面白いけど、正直これは映画館に行ってまで見る内容ではないなあ……。
DVDレンタルだから許せるけど……。



<3. 大砲の街 CANNON FODDER>


最後の短編。3つの作品の中で一番好きです。
大砲を撃つためだけに作られた街に暮らす少年の一日をレトロなタッチで描いたファンタジー。

面白いのは、暗転などの編集が一切なく、すべてがワンシーンワンカットでシームレスに描かれていること。
少年が朝ベッドで目覚めて、夜またベッドで眠るまで、背景を縦横にスクロールさせたりズームイン/アウトを繰り返したりしながら、途切れることなく続くワンシーンにとにかくドキドキしっ放し!
大砲の街なので蒸気や煙がプシューと画面に満ちたかと思うと、場面が替わっている……そんな感じ。

さらに、隣の街と巨大な大砲を毎日撃ち合い、学校では軌道計算を教え、大人たちは毎朝電車に乗って砲台に出勤する、という世界観も面白かったですね。
父親は砲身に弾を込める装填手の仕事をしているんだけど、その子供の夢は大砲の発射を担当する砲撃手だったり。
大砲が発射されるまでのシークエンスを丁寧に描いているんですが、本当ワクワクしましたね。

そして、そのワクワクが収まらないまま、石野卓球作曲のクールなエンディング曲が流れてくるので、もうこれはしてやられた!という感じです。
この「大砲の街」は、その手法がとても面白いので、いっぺん見てみることをオススメします。







さて、そんなわけで、3つの短編についての感想を書きました。
実は作品に共通するテーマとかも無いようだし、趣味の作品ということでも評価は間違ってないと思います。
ただ、僕にとっては最後の「大砲の街」がとても印象良かったので、全体の印象も良いオムニバス映画です。

来月には再び大友克洋監督によるオムニバス・アニメ映画「SHORT PEACE」が公開されるみたいですね。
この「MEMORIES」からだと18年ぶりの短編企画。
今度はどんな映像表現が見られるのか、楽しみです。