アヒルと鴨のコインロッカー
(2007年/日本)
感想 (2013年2月18日、DVDにて鑑賞)

伊坂幸太郎の原作小説を、中村義洋監督が実写化した映画。
主演は濱田岳と瑛太。
共演には関めぐみ、松田龍平、大塚寧々など。
仙台を舞台に、宮城県内でロケが行われた作品でもあります。

物語は、仙台の大学に通うために引っ越してきた主人公・椎名(濱田岳)の視点から描かれます。
引越しの片付けをしていると、アパートの隣人の男に声をかけられる椎名。
ミステリアスな雰囲気を持つ男・河崎から「本屋を襲わないか」と持ちかけられた椎名は、首を傾げながらも本屋襲撃に加担してしまいます。

しかし実は河崎には重大な秘密があり、2年前から続くある因縁を椎名も知ることになります……。


前半は、濱田岳と瑛太の奇妙な関係が気になり、興味津々で見られますがそれも中盤まで。
後半は解答編って感じで主人公・椎名の知る由もない過去話を延々とやっちゃうんですよね。
まあそれがこの映画のどんでん返しであり、「切ない」と評される理由でもあるんですが……。
なんか個人的には、2時間サスペンスの犯人の動機語る場面を1時間くらい見せられた感じがして、あまり好きな構成ではないですね。

主人公・椎名が受け身になってる印象なのも残念。後半は完全に「聞いた話」ですからね。
これだったら、まだ「重力ピエロ」の方が自分で謎を解いてる感じはしますね。

結末にあたる部分でも、やっぱり椎名が存在感を示せてないのでモヤモヤ。
濱田岳が好きな俳優だけに、目立った活躍しないのがちょっと不満なのかも。
やっぱり瑛太や、回想で出てきた松田龍平に持っていかれてしまってますよね。

で、ある男がとんでもない犯罪を犯していたことが分かるんですけど、「重力ピエロ」と同じく、やっぱりきちんと罪を償った描写がないんですよね。
伊坂映画は「自首しろよ」って言いたくなる確率高いと思うのは僕だけ?


原作小説は読んだことないんですけど、椎名の現在の物語と、琴美という女性の2年前の物語が交互に描かれるカットバック方式で書かれているようです。
映画の内容から推察するに、小説という文字媒体の特性をうまく利用して、「河崎」を名乗る二人の男を同一人物だと読者に思わせるトリックを使ってるんではないでしょうかね。
椎名の出会った河崎と、琴美の付き合ってる河崎を、当然同じ野郎だと思って読み進めていったら実は違った、みたいな。

で、察するに、映画だとそのトリックがまったく使い物にならないんですよね。顔が映りますので。あっ瑛太じゃん、と。
なのでカットバックで構成できずに、前半は何も知らない椎名の視点、後半は2年前の3人の物語という構成になったのかな、と。
残念なのは、その映画独自の構成がうまく機能してないんですよね。
少なくとも僕にとっては、ちょっと感傷に浸りすぎな映画に思えました。

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役者陣については文句なし。
構成については、映画化が難しい作品というのも分かりますが、あともう少しって感じでした。