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くちづけ (2013年、日本)

【ジャンル】
ヒューマンドラマ
【監督】
堤幸彦
【出演】
貫地谷しほり (マコ)
竹中直人 (愛情いっぽん)
宅間孝行 (うーやん)
田畑智子
橋本愛
岡本麗
嶋田久作
麻生祐未
平田満
宮根誠司

あらすじ

元人気漫画家・愛情いっぽんの娘で知的障害を抱える女性マコが死んだ。数ヶ月前、父親いっぽんとマコは、知的障害者の自立支援グループホーム「ひまわり荘」へとやってきた。無邪気で陽気な住人たちに囲まれ、のびのびと日々を送っていたマコは、そこで出会った男性うーやんにも心を開いていく。ホームのスタッフとして住み込みで働きながら、漫画家としての復帰も見えてきたいっぽんだったが、ひまわり荘の一同に厳しい運命が振りかかり……。

感想 (2013年6月23日、フォーラム仙台にて鑑賞)

笑いあり、涙ありの感動作。
2012年に解散した劇団・東京セレソンデラックスが2010年に公演した「舞台史上一番泣ける」という舞台を、「20世紀少年」3部作や「はやぶさ/HAYABUSA」の堤幸彦監督が映画化。
脚本はセレソンデラックスの主宰・宅間孝行。自身の舞台脚本を映画化し、自ら重要なキャストで出ています。


主演は、貫地谷しほり。知的障害をもつ女性・阿波野マコを演じます。
健常者の男性に酷い目に遭わされた経験があり、心に深い傷を負っています。

マコの父親・愛情いっぽん(本名:阿波野幸助)に竹中直人。
障害を持つ娘を一人で育てて来ましたが、ある日マコをひまわり荘へと入居させ、自分もスタッフとして働きながら、娘の自立を願います。
実は、誰にも話していない秘密があり、それが彼に切迫した問題をもたらします。

ひまわり荘の入居者で、繊細で難しい男性うーやんを宅間孝行。
うーやんの世話を焼く妹・智子に田畑智子。
ひまわり荘を経営する小児科医とその妻と娘に、平田満、麻生祐未、橋本愛。

その他にもひまわり荘の愉快な仲間たちや、いっぽんを慕う編集者や、お巡りさんなどが出てきます。


僕の父親が「くちづけって映画、このへんでやってるのか?」と聞いてきたので、気になりだして調べた所、橋本愛が出てることに気づいて「じゃあ、見てみよっか」となった映画。
貫地谷しほり目当ての父と、橋本愛目当ての僕と、一人で留守番したくない母の三人で観てきました。

結果、僕と親父は、真理子ママを演じた麻生祐未さんに魅了されて帰ってくることに(笑)
いや、貫地谷さんは素晴らしかったし、橋本愛ちゃんは可愛かったし、田畑智子は安定だし、みなさん良かったですけど、真理子ママがなんかいいのよね、なんかね!


物語は、ひまわり荘にやってきた愛情いっぽんと娘マコの、住人たちとの交流って感じです。
知的障害をもつ人たちの無邪気な会話や、それに激しいツッコミを入れる橋本愛のやりとりが面白かったり、元が舞台ということもあって、どいつもこいつも天然ボケかましてますよね。

その一方で、何か秘密を抱えているいっぽんの深刻そうな顔や、住人が巻き起こすトラブルも描かれたり。
笑いの中で、知的障害者とその周囲が直面する現実をうまく盛り込ませていると思いました。

後半は一気にシリアスになっていき、ある悲劇へと物語が突き進んでいきます。
途中から察しの良い人には分かるかも。でもそれだけはやめてほしい、という結末へ向かっていきます。

いわゆる「泣ける映画」であることは間違いないんですけど、「泣けた」の一言で済ませてしまえない、「現実」も描かれていました。
知的障害が原因で浮浪者になったり、犯罪者になったりするケースも多いそうです。
愛する我が子をそんな風にしたくない、でも俺には時間がない。いっぽんの苦悩はそこにあります。

そしてそんな「現実」を冷静に語るお巡りさんに対して感情をぶつけてしまいます。そうならない社会を作らなきゃダメなんだよ、と。
僕の周りには知的障害者はいません。でも、「だから関係ない」というのは間違いだったんだと気付かされました。
この社会に生きる一員として、この社会を形作る一人として、彼らが生きづらい社会を作っている責任は僕にもあるんです。
そんな示唆も含まれた映画でした。

クライマックスではやはりジーンときました。
といっても心が何かで満たされる充足感からくる感動ではなく、無力感というかやりきれなさからくる涙。
この作品はフィクションなんですけど、ある新聞記事を元に膨らました物語だそうで。
そんな現実に僕らはもう生きているんですよね。


全体的には、いかにも舞台を映画化したって感じです。
ひまわり荘の外は描かれないですし、俳優陣のテンションも(笑えるけど)舞台っぽい。
自分のセリフがない時にスッと立ち位置を移動したりする様子も舞台っぽい。
元が舞台なのは分かるけど、もう少し映画的な演出も欲しかったですかね。

例えば、ひまわり荘の外のシーンもオリジナルで付け足して、知的障害者と社会の関係をより分かりやすくするとか。
舞台を映画化する時に、舞台では制限されていた場所と時間が自由になるわけじゃないですか。
なので、もっといろんな場所を映して欲しかったですね。
映画である必要性が薄かったかな、と。まあ、もう見れない舞台を映像化するという意味はあったわけですが。

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最後、ちょっと文句っぽくなりましたが、とても良い映画でした。
そして、「良い映画」という感想で忘れてしまってはいけない映画でした。
堤幸彦監督は「20世紀少年」のイメージが強かったんですが、今作で少し見直しました。(←上からw)